激変する広島駅南口。課題を考える 【路面電車編】

広島市は2日、広島電鉄及びJR西日本と合意した、広島駅南口広場の改良に関わる基本方針を明らかにしました。
広島駅南口広場の基本方針!広電の高架と駅ビル建て替え、デッキ計画などまとまる

【広島市】:広島駅南口広場の再整備等に係る基本方針の決定について

路面電車の駅前大橋線移設と高架での広島駅乗り入れや、広島駅駅ビルの建て替え、歩行者空間の整備などがまとめられています。
昨日は駅ビルを中心にまとめました。今回は路面電車の駅前大橋線を中心に課題を考えていきます。
激変する広島駅南口。課題を考える 【駅ビル編】

本題に入る前にご報告ですが、実は今月3日の水曜日に「路面電車を考える会」の企画に参加させていただきました!
まず今年4月から運行をはじめた中国JRバスのオープントップバス「めいぷるスカイ」を貸し切って循環ルートの視察を行い、
その後食事をしながら皆様と懇親会を開き色々なお話をさせていただきました。
現場の方々からも直接お話を覗うことができとても貴重な一日となりました。
お招きいただきまして心より感謝しております。

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前日に広島市から基本方針の発表があったわけですが、会の開催のタイミングは本当に偶然だったそうです。
当然話の内容も駅前大橋線や環状ルートが中心となりました。

本題に入ります。
まず考えさせられたのが、高架となる広電広島駅の構造です。
基本方針の資料にはこのように書かれています。

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“各方面別に4系統分の乗り場・降り場を確保する”とのこと。
一見すると良さそうに思えますが、実は紙屋町や八丁堀まで行きたい人にとっては「結局どの電車に乗れば早く着けるのか」ということが重要であり、系統別に分かれていると混乱を生む可能性もあります。
整理しますと現在広島駅には4つの系統が乗り入れており、
例えば紙屋町までなら1・2・6系統、原爆ドーム前までなら2・6系統のどれかに乗ればたどり着く事ができるわけです。

さらに問題なのは頭端式となる広島駅のホームの手前で交差しなければならないポイントが生まれること。
これまでのホームですと、比治山線を除いて降り場と乗り場が別の場所となっており、お客が乗車中の時点では乗り場ホームに電車が移動しているので比較的スムーズに入れ替えができていました。
乗り場についても比治山線以外の1・2・6系統は同じホームで乗れるので意外と合理的です。
“降り場専用の入れ替え線が無いと思われる新しい広島駅のホームでは、広島駅に入ってくる電車と輻輳が起き、
駅前大橋線での短縮効果4分は意味が無くなってしまう。
運行を預かる広島電鉄の現場ではこのようなことが危惧されておりました。

これらを解消するにはどうすれば良いのでしょうか。
広島市の平面図を見ると分岐器やホームは道路上に一切無く、完全に駅前広場に入ってから始まっています。

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構造上または法律上の問題でしょうか。
もし道路上空を使用できるとするなら以前紹介させて頂いていた、めりみりさんの「プランC」のような形が良さそうです。
【*Hiroshima-Terminal*】:広電駅前大橋ルート(21) – 広島市案?を元に考えてみると…

ただその場合でも、トラスやアーチ構造を採用しなければ広い交差点をまたぐことは難しそうで、建設費の増大も考えられます。
それを逆手に取って、全国でも類を見ない独創的な高架橋にでもなればいいのですが。
オランダ・ハーグの美しいトラム専用橋

もう一点はやはり住民より提案された環状ルート
駅前線早期実現のためには妥協しなければならない部分もあるとは承知していますが、環状ルート(新しく路線を設定すること自体について)は本当に慎重に慎重を重ねて検討しなければならないと思います。
環状線運行により稲荷町交差点や本線の列車密度がさらに増加すれば、駅前大橋線の効果が相殺されてしまう可能性もあります。そうなれば事業の意味がありません。
採算がとれるほど利用者がいるのかという点についても疑問が残ります。

実は路面電車を考える会としてめいぷるスカイを貸しきって市内を走行した目的のひとつが、住民提案の環状ルートと考える会が提案された環状ルートを比較する。というものでした。
こちらです。
【路面電車とLRTを考える館】:広島市 「路面電車を考える会」が循環線案を提起

ただ、考える会もあくまで住民から提案されたルートの対案であるとのことで、同じく運行密度や需要について疑問はお持ちのようでした。

今回の件でもそうですが、一度設置したものを廃止・取りやめにする場合はかなりの困難が伴います。
ですから是非とも開業する前にいくつかの条項を決めておきたいです。
まずは江波線と直通する9号白島線と同様に、朝夕のラッシュ時間帯は運行しないこと。
そして利用状況などを分析し、開通後2~3年程度を目処にもう一度事業判断をすること。
利用者数や多系統への影響から存続が困難と判断された場合には、廃止や他の系統との統合も含めて改めて判断すべきだと思います。
ループで完結するのではなくて、大阪環状線のように半周周った後に横川や江波に向かうような路線を設定すれば、
全体の列車の総数を増やさずに環状路線も維持できるのではないでしょうか。

以上、広電にお勤めの方から伺ったお話も交えて課題を考えてみました。
幸か不幸か、まだ実際に電車が走り始めるまでには時間があります。
数年前から具体的な議論がなされていただけに、”まだ10年あるのか”と感じるのは正直なところですが、
時間がかかるからには駅前大橋線の整備効果を100%得られるような完璧な事業計画をもって、広島駅南口の夜明けを迎えたいものですね。

おまけに、めいぷるスカイから撮影した画像をいくつか。
通常のバスより高い視点とオープントップの天井。全てが新鮮に見えました。

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