可部線 “復活”区間新駅のイメージ公開 線路跡を歩いて感じた事など

広島市とJR西日本は2017年春の開業を目指し、廃止された可部線の一部、約1.6kmの電化延伸事業を進めています。

今年の初めに安佐南区の土砂災害被災地を歩いた同じ日、その延伸区間の状況も確認してきました。
土砂災害から半年 被災地を歩く

かなり遅くなってしまいましたが、今回はその報告をしていきます。

【広島市】:JR可部線の電化延伸区間について、鉄道事業の申請が許可されました!

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今月6日、市とJRは駅舎の設計が完了したとして、改良される可部駅と新設される2つの駅の駅舎のイメージパースを公開しました。
【JR西日本】:可部線電化延伸区間の新駅について

今回はこのイメージパースも合わせて紹介していきましょう。

まずは現在の可部線の終点である可部駅です。
文章の構成上、改札の中である可部駅のプラットホーム内から紹介していきます。
現在の可部駅のホームは上の概略図中の「改良前」のように”コの字型”になっており、
1番線・2番線が行き止まり、3番線が廃止区間へ続く構造となっています。

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可部駅の3番のりばから西側のバスターミナルや改札の方を撮影しています。
隣の2番線には広島行きの電車が停車しています。現在ほとんどの電車は2番線に停まり広島方面へ折り返しているようです。

可部線の電化延伸を期に終点駅でなくなる可部駅は、西側の保線スペースにホームを増設した相対式ホームに改良されます。
上の画像でいえば、撮影しているホームが上り広島方面のホームに変わるということですね。

行き止まりになっている1・2番線です。

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改良後は完全に無くなってしまうのでしょうか。

このホームの突き当りとなる改札口です。

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西口へは現在列車は通ることのない線路を横断して行き来するようになっています。
開業後は見えている2本の線路がそれぞれ上り・下り線になりますが、市やJRは構内を横断する跨線橋を建設する計画があるそうです。
跨線橋は駅の東西を結ぶ自由通路として機能します。

線路を横断して西口広場へ移動しました。

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正面が現在の改札口です。ホームは画像右側に伸びています。
公開されたイメージパースがほぼ同じ角度だったので並べてみました。
自由通路の階段もイメージには描かれています。
“自由通路”とは言っても上りと下りで別々の相対式ホームになるので、天神川駅や今春開業する新白島駅のように方面別で改札口は別々の構造になりそうです。(橋上駅とは違います。)
イメージ図をよく見ると、案内板には跨線橋を渡らず右に進めば「JR線」と描いてあります。(終点方面)

可部駅西口全体です。

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国道54号線「可部街道」が面しバスターミナルが整備されています。
可部は横川との間で日本で始めての乗合バスが運行されたという歴史があり、
駅前広場の上屋もその横川駅(画像)と通じるものがあるデザインになっています。

ここから、電化延伸区間に向けて進んでいきます。
54号線可部街道は可部駅を過ぎるとすぐに廃止された可部線の軌道を跨ぎ北進する構造になります。
西側から線路跡と可部街道が交差するポイントを振り返りました。

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この時点では終点駅付近まで柵で囲まれているだけですが、今月13日から新しいレールを引くための土台工事が始まっているようです。
【中国新聞】:可部線延伸区間の土台工事始まる

最初に載せた概略図にもあるように、しばらく進むと県道267号線の南側に沿って西へ向かうルートになります。

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奥に見える高架橋は国道54号線「可部バイパス」です。

少し路地に入り線路跡を見てみます。

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今回の可部線電化延伸事業では、新たに3箇所に踏切が設置されます。
画像はその内の一つ(最も可部駅側)です。
国交省は原則として踏切の新設を認めていませんが、住民からの要望が強かったことや廃止区間の復活であることを受け許可が降りたようです。

可部バイパスの高架下まで移動しました。

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延伸工事を手がける広成建設の事務所や掲示板が設けられています。
工事が始まっていることを実感しますね。

ここから200m足らず進んだ付近に中間駅が新設されます。

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県道を挟んだ北側にはホームセンターや食品スーパー、ドラッグストアが立地しています。

工事車両の出入口になっている所が、中間駅の駅舎になりそうな感じです。

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中間駅の南側には、某宗教法人の巨大な施設が建っていました・・・・・

近くには広島北税務署が面する割と大きな交差点があります。

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ここも新設踏切の一つです。

この交差点を過ぎると、これまで進んできた道路(県道267号線)の状況が一変します。

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道路の拡幅が完了しておらず、終点駅付近では歩道はおろか中央線も無くなり、大型車同士ではすれ違うのが難しいほどの細さになってしまいます。
所々で用地買収されている箇所もありましたが、終点駅まで拡幅しようと思えばまだまだ時間が掛かりそうな状況でした。

中間駅から700m弱、終点駅付近に到着しました。

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終点駅イメージパースに見られる屋根の曲線は、古くから地域を流れる太田川をイメージしているそうです。

周辺の様子ですが、これより北側の山にまとまった住宅団地(亀山地区)があるとはいえ、終点駅付近はかなり閑散としています。
個人的な予想を超える”何も無さ”でした。

終点駅予定地付近から、南側の県営荒下住宅跡地を眺めます。

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かつては数十棟の長屋建ての住宅が立ち並んでいた場所です。
ご存知の通り現在では、老朽化した安佐市民病院(安佐北区可部南)の移転候補地に挙げられています。
昨年2月には病院の移転新築に関連する補正予算案に関し、移転に賛成派と反対派で議会が真っ二つに割れ、議長の判断で否決になるという事態も起きました。

私の率直な印象では、市民病院を移転でもしなければ延伸区間の採算が取れないのではないかと心配になりました。
一戸建ての住宅が並び近くに安佐北区役所や店舗も立地する”中間駅”までなら納得できるのですが…。

ただ、県営荒下住宅跡地の環境にも着目しなければなりません。
地図で見ても分かる通り、跡地は蛇行する太田川の北側に広がります。
一般的に蛇行する河川では外側程流速が早くなりますし、堤防もほとんどの区間で未整備です。
(いずれ整備はされると思いますが)
いくら区画整理をして堤防整備や嵩上げを行ってもリスクがゼロではないのは、昨年の大規模土砂災害を見れば明らかです。
川の南側にそびえる山の土砂が崩れて麓の川を塞いでしまえば、外側の荒下地区に川の水が流れこんで来る可能性もあります。
どこに住んでいようが何らかの災害のリスクは付き物だということは理解していますが、あえてここに地域の基幹病院を新築するのはやめておいた方がいいのではないかと思うようになりました。
可部線以外のアクセスにおいても、たとえ県道の拡幅が実施されても劇的にアクセス性が良くなるわけではありません。

かと言って対案を示すのも難しいのは事実です。
現在地で建て替えをするには敷地の狭さから7年もの期間が必要になります。
費用も移転新築に比べ高くなるのは確実でしょう。

本来、まず県営荒下住宅跡地の活用策を決定させるべきではなかったかとも感じますが、延伸事業はすでにスタートしています
4月には広島市長選も控えており、安佐市民病院の問題は争点の一つになりそうです。
延伸の進捗状況とともに今後も注目していきたいです。

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【若林新三 WEBSITE】:JR可部線各駅のイメージ
【朝日新聞】:広島)安佐市民病院建て替え問題、本会議も移転否決

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