アストラム”都心部延伸”で、空洞化食い止めを。

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ちょうど一週間前、勾配検討という動きのあったアストラムラインの西風新都線延伸について書きました。
アストラム延伸検討状況― 「急勾配がネック」らしい
 
たくさんのコメントを頂きましたので、今回はその返信も兼ねて再度私の持論を書いてみようと思います。
 
頂いた全ての案件に対して返信するのは難しいですが、
まず私が軸として置いている考えを挙げるとすると如何にして広島市中心部の空洞化を食い止めるかということです。
 
 
頂いたコメントでは平野の少ない広島において市域の拡大を唱えるご意見もありますが、
その狭い平地の中区や西区、南区ですら地価が下がり続けている(よくて横ばい)のが現状です。
中心部が開発の飽和状態になっているのであれば大いに推進すべきですが、
今のような状態で市域を広げても成長するどころか郊外型の(そこだけで完結してしまう)街づくりを助長させ、中心部は衰退し空洞化が進むばかりです。
その結果他都市との競争力も低下してしまいます。
事実、市街地の周辺にはイオンモール(府中・祇園・石内(15年度))、ゆめタウン(広島・廿日市(14年度))、アルパーク(井口)、フジ(緑井)とあり得ない数の巨大SCで取り囲まれ、
現在進行形でその事態が進んでいるからより深刻なのです。
 
しかしそんな中でもここ数年で中心部・駅周辺への有名ブランドショップや集客性のあるお店の出店が加速、
さらに増税が予想されることもありますが高層マンションの建設もプチラッシュ状態を迎えています。
このような動きを最大限活かすためにも中心部の延伸は非常に意味があると思います。
 
西風新都線延伸に賛成の方のご意見も非常によく分かります。
私はJUNさんのご意見に賛成で採算性のある中心部を延伸させ、ある程度力を付けてから西風新都線に取り組むべきではないかと思いますね。
(”飽和”の兆候が出始めてから)
 
 
26の安佐南区民さんの、セントラルシティばかりではなく安川流域の住民にも目を向けるべきだというご意見がありますが、
確かに私の考察もセントラルシティばかりで、もう少し東側の団地はあまり目に入っていませんでした。
このことはお詫びいたします。
しかし「こちらを立てればあちらが・・・」という言葉のように、
おそらく毘沙門台や安東のあたりから本通側の利用客でしたら、西(井口・五日市)へ行くにも白島新駅を使ったほうが早く安くなり、西風新都線の恩恵にはあずからないことと思います。
 
一つの例としてですが本日、大きなマンションが立ち並ぶ安佐南区の西原へ出かけてきましたので紹介します。
 
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それから環状線にこだわるご意見もおありですが、
首都圏や大阪での環状線というものは非常に混雑する都心を回避しその都心から放射状に流れ込む客を円滑に周辺の副都心あるいは郊外に運ぶためのものであり、
広島の場合は“環状線のようなもの”にはなりますが、本来の環状線とは少し違います。
環状線はあくまでそういった手段であり、目的にしてしまっては本当に必要なものまでお金が回らなくなってしまいます。
 
 
さて、建設費の問題です。
広島に親戚が多い仙台市民さんが詳しくまとめてくださっておりますが、
提示していただいたデータによると「西風新都線」はキロあたりの建設費としては他都市の地下鉄と比較しても割安、ということになるようです。
(もちろん詳細な調査と計画をしてどうなるかは誰にもわかりませんが)
それでも、700億円±数百億円という巨額な歳出であることには変わりないんですよね。
それならば可能な限り先ほど書いた考えの元、中心部の延伸に使うべきです。
 
デルタ地帯への地下鉄建設は多額の費用がかかる、というご意見もありますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
現在広島市ではデルタ中心部の洪水対策として何本ものシールドトンネルを建設中です。
よく知られているのが白島通りの地下を通る白島シールドトンネルですね。
(正式名称は「白島地区下水道築造20-1号工事」。)
【広島市広報紙 市民と市政】:私たちの街の下水道 地下から、守る。
 
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白島シールドトンネル(画像は上記広島市ホームページより)
 
東白島の白島交差点付近から平和大通り(三川町)に至るまで、白島通り・中央通りの地下をシールドマシンによって掘削されました。
【広島市】:白島地区下水道築造20-1号工事
【広島市】:二葉の里地区下水道築造23-13号工事
【広島市】:三篠地区下水道築造22-1号工事
【広島市】:松川地区下水道築造21-7号工事
 
デルタ地帯での工事といえばこのくらいあります。
この工事でトンネルがキロ当たりいくらかかったのかはさすがに分かりませんでしたが、
工事は至って順調に進んでいるようで、少なくともトンネルを造るだけなら確実に施工することができるようです。
これらの下水道もそうですが、私の主張する本通~広大跡地(~宇品)路線では河川を横断することが無いので、比較的浅い深度で掘ることが可能です。
 
余談ですが御存知の通り、現在の路線も一部はシールド工法で施工されています。県庁前~城北間です。
県庁前駅にはこのような展示もされています。
 
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「DOT工法」と呼ばれるメガネ型のシールドマシンを世界で初めて採用したのが、このアストラムラインだったようですね。
 
城北駅近くの歩道には、開通を記念してそのメガネ型シールドマシンによる掘削断面を再現したモニュメントがあります。
 
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解説文があった銅板も無くなって、かなり荒れていますが一応モニュメントです(笑)。
 
 
私はむしろルートが一部重複する広島電鉄とどのように協調できるか、ということが大きな課題であると思います。
シールドで掘るにしても、出発点と終点は立坑を開削しなければなりません。
地上には路面電車が走っていますから、工事期間中は運行できなくなる可能性も高いです。
そもそも広電がみすみすアストラムの開通を黙って見ているだろうか…。
 
以前も書いたことがありますが、広電と広島高速交通が対立しても市民に何のメリットもありません。
例えばアストラムの運行を広電に委託するとか、逆に路面電車を広島市営交通として営業させるか。
この辺のハードルがかなり高いのは承知ですが、もし実現すれば空洞化を食い止める大きな一手になるに違いありません。
 
 
広島市は平成11年のアストラム延伸計画立ち上げの当初から、「α型」のプランを軸に検討をしてきました。
【広島市】:アストラムライン延伸計画の現在の状況について
ところが現在になって高速4号線の開通、 白島新駅の開業(15年度)と、当時とはかなり背景も変わりました。
「α型プラン」一度白紙に戻して、どこを延伸するのが費用対効果が高いのか、そもそも延伸自体不可能とするのか検討し直すべきではないでしょうか。
 
もし私が市長ならば、中心部を選ぶでしょう。
具体的には、まず本通~旧広島大学本部跡地(周辺)間の約1.5km!
市役所など鯉城通りの主要なビジネス街をカバーできる上、広大跡地の再開発にも弾みが付きます。
その後西風新都線をやるのか、宇品まで延伸してしまうのか、広島駅とを結ぶのかは今は置いておきます。
 
西風新都や安川周辺の、西側(井口・五日市方面)へのアクセス改善策としては、
無難ではありますが都市計画道路の己斐中央線の先行整備ですね。
広島電鉄が運営するHD西広島「ボン・バス」も己斐中央線が出来れば非常にスムーズに運行できるでしょうし、新たなバス路線導入も考えられます。
 
 
以上、本当に長くなってしまいましたが改めて私の頭の中を整理してみました。
現在の広島市の姿勢には疑念を抱かざるを得ません。今後も注視して行きたいものです。


 

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