路面電車が広島港出島地区に延伸へ! 県の港湾計画と『千田車庫』再開発

元号が変わる10連休のゴールデンウィークに突入しました。
その矢先に、中国新聞に広電の路面電車に関する驚くべきニュースが報じられました。

広島県は、広島市南区出島の埋め立て地区について、路面電車の延伸を軸として
観光客らが景色を楽しみながら過ごせるような商業施設を誘致し賑わい創出を図る新たなまちづくりを計画している事が分かりました。
合わせて、延伸する路面電車の終点には車庫も建設される予定で、
広電の本社のある千田車庫の機能を集約する案を検討しているとのこと。
広電は千田町の本社を再開発する考えを表明しており、これから何らかの壮大なプロジェクトが始まりそうです。

【中国新聞】:広電、出島地区に延伸へ 「広島港」から1・2キロ、車庫新設も計画


(2019年4月27日付 中国新聞朝刊紙面より)

要約します。

  • 広電宇品線の終点「広島港」電停の先から、出島地区の広島特別支援学校の南側に広がる埋立地まで約1.2kmの軌道を新たに整備
  • 終点には約2ヘクタールの車庫を建設。高潮対策で2階建ての構造とし、延伸区間の一部も効果とする
  • 県は沿線の県有地に商業施設や飲食店などを呼び込み、国内外の観光客たちが海辺の景色を楽しみながら買い物や散策を楽しめるエリアづくりを目指す
  • 広島県が2019年3月に改訂した港湾計画に基づくもの
  • 計画では埋立地のの中の約2.7ヘクタールを「交通機能用地」として確保していた
  • 新たなまちづくりにより出島地区に立地する物流に影響を及ぼさないようにするため、物流車両を通す高架道路の整備も計画
  • 「交通機能用地」に建設する新たな車庫には、既存の広電の車庫のうち「千田車庫」の機能を集約する案が有力
  • 千田地区の再開発も探る
  • 港湾計画で、2024年度までに埋立造成を完了させることを見込んでおり、延伸工事はそれ以降の着工(2024年度以降着工)となる

 

 

これまであまり目立った動きのなかった広島港の先、「出島地区」の新たなまちづくりが浮上してきました。
広島県が今年3月に港湾計画を改定し公開しているので、それを見過ごしていたのは反省です。

報道内容を見ていく前に、この港湾計画についてご紹介しておきましょう。

 

広島港の今後を示す『広島港港湾計画』

広島県】:広島港港湾計画改訂(概要版)平成31年3月改訂(P.1~14) (PDFファイル)(5.57MB)


(上記広島県資料より)

上記キャプチャ画像は、「物流・産業」、「人流・にぎわい」、「安全・安心」の大きな3つの方針のうち、「人流・にぎわい」の説明で使用されていた図です。

広島港宇品旅客ターミナルやみなと公園のあるエリアから、埋立が進められている出島地区までのアクセス強化が矢印で示されるとともに、終点となる広島市特別支援学校の南側には「交通機能用地」が確保されているのが分かります。

そして、すでに店舗として開発が進んでいる、県の港湾施設を活用した商業施設(宇品デポルトピア)をはじめ、元宇品地区から今回の延伸区間沿線にかけて、「民間活力による賑わい空間を創出」するエリアとなっており、
今回の報道において”沿線、車庫用地北側に点在するの県有地に商業施設や飲食店を呼び込む”とされているのは、主にこのことを指すと思われます。

 

延伸区間の先に広電の車庫を整備

県の港湾計画に、「交通機能用地」としてあらかじめ明示されていることから、改訂の検討段階から車庫の建設を広電に打診、もしくは広島県側に広電から打診されていたことが予想されます。
報道によれば、この出島地区に整備する車庫は、
本社に隣接した中区千田町の機能を集約することを見込んでいるようです。

広島電鉄の本社の動きといえば、こちらですね。

広島電鉄は中区千田町の本社ビル周辺、約2万2000平方メートルを再開発する構想があることが分かりました。 車庫や賃貸ビル、駐車場として利用している一帯の有効活用を進め「にぎわい拠

広島電鉄が、本社周辺の車庫や駐車場として使用している約2.2ヘクタールを再開発し、
「にぎわい拠点」の創出を目指す構想です。
当時は、車庫の上空を使うなどして車庫ありきで再開発すると、漠然と思っておりました。
(交通科学館を併設した、長楽寺のアストラムライン車庫と同様です。)

ところが、報道によれば、千田町の車庫機能は出島に移すことを見込んでいるということで、
これら二つの開発が密接にリンクしていることが分かりましたね。面白いことになってきました。

 

出島地区の将来像は

以上のことから、路面電車の延伸は車庫用地を出島に確保すること、
また県としても延伸した路面電車を軸として「宇品デポルトピア」の延長のような開発を見込んでおり、
あくまでも「路面電車延伸で出島に大型観光施設・商業施設を」といった趣旨の計画ではないことが分かります。

最初に見出しを読んだ段階では、「今さら出島に延伸?」とか「速達化・高度化のために投資すべきでは?」と思いましたが、
老朽化した本社千田車庫を移転させ、民間開発を呼び込むため、必要に迫られた計画であるようです。

とはいえ、これまで出島地区は港湾関係者しか近づくことのないところで、
路面電車が延伸することで新たな人の動きは生まれそうです。
AKB48の姉妹グループ「STU48」が船上劇場を行うための発着場所として、出島の国際フェリーポートが使用されることにもなっているようですね。

瀬戸内海が目の前に広がり、ビュースポットとしては良いところと思います。
また住宅密集地からは離れているため、音を出したイベントも、造成中の埋立地東側の緑地等を使い開催しやすいかと思います。
こうした、ここでしかできない新たな魅力を見出すことのできる民間事業者に恵まれることを願いたいですね。

 

かつては、この出島地区は「広島ポートルネッサンス21」という名称で、県が大規模なメッセ・コンベンション施設を誘致する構想がありましたが、
その検討は中止され現在の港湾計画に至ります。

公共交通機関が限られる出島地区へのメセコン誘致は適切でなかったと考えています。
広島市内へのMICEに関する動きがこのところ出てきておりますが、それはまた機会を改めて。

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