三井不動産がアルパーク手放す MICEも絡む?商工センターの未来

広島市西部の商業施設を取り巻く環境が変わります。
西区草津新町、JR新井口駅に直結した大型複合商業施設の「アルパーク」について、
運営者の三井不動産グループが西棟と東棟の土地と建物を売却することが明らかになりました。

当初は、東館のみ売却先非公表で報じられていたものですが、28日の各社報道により、
大和ハウス工業に東棟と西棟も合わせて売却されることが分かりました。

大和ハウス工業は、当面、現在の営業体制をそのまま引き継ぐこととしています。

1990年にオープンした広島の代表的な商業施設の一つが大きな転換点を迎えています。

そんな「アルパーク」を、今回改めて写真に収めてきました。

中国新聞】:アルパーク売却計画 大和ハウス、東・西棟取得へ


(2018年5月28日付 中国新聞朝刊紙面より)

アルパークが開業した1990年時点では、こうした大型ショッピングモールはまだ珍しい、
というか郊外でこうした専門店やアミューズメントを集めた施設は広島で初めてだったでしょうから、
インパクトはかなり大きかったでしょう。

新井口駅とペデストリアンデッキで直結され、クルマを持たない人でも容易にアクセスできます。
山口県からも大いに集客していたのでしょうね。

時代は変わり、広島都市圏の西側だけでも、
・ゆめタウン廿日市
・LECT
・THE OUTLETS HIROSHIMA

といった大型SCの進出が相次ぎました。
東部や北部まで含めると、デルタの市街地を取り囲むように「これでもか」というほど乱立しています。
中心部の客離れも著しく、過剰供給であることは明らかです。

そのアオリを食ったのが、今回のアルパークというわけですが、
三井不動産から西棟と東棟を引き継いだ大和ハウス工業は、当面現在の営業を続けることを明らかにしています。

が、全く楽観視はできないですね。
1~2年、大和ハウスのノウハウを投入してみて、それでも売上が回復しなかったら、
規模縮小や一部取り壊して住宅等への用途転換も十分ありえます。

 

今回、そのような大きな岐路に立たされたアルパークを改めて見てきました。
個人的にもかなり久々に訪れたアルパークです。

 

 

JR新井口駅・広電商工センター入口駅からスタート。
鈴が峰団地へアクセスする市道の跨線橋と一体となった橋上のJR駅と広電の跨線橋が一つになった駅です。

 

ここから海側に南下した場所にあるのが、西棟・東棟ですが、
駅のすぐ東側に2009年に「北棟」がオープンしています。

シネマコンプレックス「109シネマズ広島」を備える商業施設です。
こちらは施設売却対象にはなりませんでした。従来どおり三井不動産が所有する施設です。

 

駅から西棟・東棟方面へ、ペデストリアンデッキから近づきます。

「アルパーク」といえばこれですね。
動く歩道「ムービングウォーク」を備えた大規模なペデストリアンデッキが整備されています。
ここから実に500~600m離れた「広島サンプラザ」まで2階レベルの通路が続いています。
歩車分離、JR駅直結という、多くの人を捌くのにとても優れた施設であることが分かります。

 

デッキが西棟に接続する手前、市道の上空から見るアルパークです。

 

こちらが東棟です。専門店街、レストラン街などが集まっています。
開業時はアミューズメントにも力を入れていたのが特徴です。
水族館もありましたし、建物の中と外をぐるりと回る汽車のアトラクションもありました。懐かしい。

 

西棟です。

こちらには百貨店の天満屋が核テナントとして入居しています。

 

東棟と西棟をつなぐデッキ部分から、東棟の内部へ進んでいきます。

 

 

建物の中央部分を東西にメインストリートが貫きます。吹き抜けで自然光も降り注ぐ開放的な空間は見事です。

 

終端部。

ここの階段でイベントも可能です。

 

西棟方面を振り返りました。

上部に見える柵のある部分が、かつて汽車が走っていた場所です。

 

2階レベルから。

数年前にリニューアルを受け、床や店舗の壁が非常に美しくなりました。

 

大きな特徴のもう一つが、1階にバスターミナルを備えていた事でしょう。

これがハブとなり、JR沿線だけでなく、北側の住宅団地からも集客しました。
ただ、皮肉なことに、LECT行きのシャトルバスの発着地にもなっており、「アルパークを素通りしてバスでレクトへ」という人も多くなっていると思われます。

 

以上、久々に訪れたアルパークの現在のレポートでした。今後の動向については、見守るしかないですね。

今回ここを訪れた目的は実はもう一つありました。
「広島サンプラザ」です。

これの一つ前の記事でご紹介したように、広島県が広島西飛行場跡地へのMICE機能の設置可能性の検討を始めました。
これについては、大量輸送という面でアクセスに大きく難があり、不用意な都市機能の分散につながるため、
考え直すべきであると書きました。

広島県は、展示面積が10haを超える大規模展示場を備えるMICE施設(国際的な会議・展示会など)の整備を検討する公募型プロポーザル「MICE施設検討事業(大規模展示場実現可能性検討

 

その一方で、2017年に商工センターを地盤とする地元組合が、
広島市に対し、アルパークが隣接する「広島サンプラザ」一帯を大規模展示場やホテルを備えたMICE施設に再整備する提案書を提出しています。

胸が高鳴るニュースです。 広島市西区の商工センター地区の卸業者らでつくる「広島総合卸センター」が、 多目的ホール、結婚式場・宿泊施設などを備える「広島サンプラザ」を 大き

 

今回、西飛行場に対してこのような動きがあったこともあり、改めて「広島サンプラザ」一帯を見てきました。
天満屋が核テナントとなっている西棟横のデッキを南に進みます。

 

アルパーク横からまだ南へデッキが続いています。右手に「広島サンプラザ」が見えてきました。

 

広島サンプラザ

 

 

 

【公式】:広島サンプラザホール

現在は広島市の財団が所有しています。

アルパーク西棟に面する北側は、結婚式や会議が開けるホテル、
その南側に隣接するのが、固定席約3,000席、可動席約3,000席の「広島サンプラザホール」です。

サンプラザホールは広島市の成人式の会場として長らく使われていますし、
近年熱を帯びているプロバスケット「Bリーグ」の広島ドラゴンフライズの本拠地にもなっています。

会議、展示、宿泊、宴会ができる元祖MICE施設です。しかもこれらがJRと広電の駅からペデストリアンデッキで直結されているのです。

 

サンプラザホールから、立体交差となっている広島南道路の交差点を挟み、
南東側に「広島市中小企業会館」が立地しています。

 

 

総合展示館の展示面積は、約2,600平方メートル。ちなみにサンプラザホールのアリーナ面積も約2,400平方メートルとほぼ同じ規模だそうです。

 

広島市中小企業会館が1979年に開業、
広島サンプラザが1985年に開業と、どちらも老朽化が目立つ時期に来ており、
これらをまとめて西日本最大級の展示施設に生まれ変わらせようというのが、商工センターの地元組合が提案した内容です。

胸が高鳴るニュースです。 広島市西区の商工センター地区の卸業者らでつくる「広島総合卸センター」が、 多目的ホール、結婚式場・宿泊施設などを備える「広島サンプラザ」を 大き

JRと広電の駅が直接デッキで繋がり、スムーズに大量の人を捌くことができ
この点だけでも西飛行場跡地への整備に比べ遥かに有利に立っています。

いずれ必要になるこの施設の更新を考えても、時代に即したMICE施設へのアップデートを兼ねて行うことができ、
西飛行場跡地に新しく作るより管理対象施設を増やさずに済みますし、アルパークの再生にも繋がります。

なぜ西飛行場跡地なのか、いくら考えても理解しがたい…。

 

と、ここまで書いておきながらではありますが、
個人的には、市内中心部の施設及び遊休地の有効活用も同じくらい重要であると考えており、平和公園と園周辺一帯となる、
・国際会議場
・広島市文化交流会館(広島文化学園HBGホール)
・JMSアステールプラザ

を一体的に活用し国際会議等を戦略的に誘致していくのが、
現実的かつ活性化につながるとも思っています。

将来的に、サッカースタジアムが建設される中央公園から旧広島市民球場跡地、平和公園、加古町を結んだベルト一帯を広島市の中心的なMICEエリアとして活用するのが理想です。
宿泊施設は周辺に多数存在してますし、ニーズが高まれば更に民間による進出が進む事も考えられます。

 

商工センターの両施設も今後更新が必要になるのは事実。
両立させるにはどのような手法があるのか、こういったことにこそお金を使って検討していくべきだと思います。

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