まもなく閉城する広島城 2049年見据える『木造復元』の課題と道のり

広島城天守は、2026年3月22日をもって内部の公開を終了します。

広島城は1589年(天正17年)に毛利輝元が築城し昭和には国宝にも指定されましたが原爆によって倒壊。
戦後、1958年に鉄筋コンクリート造で2代目として外観復元されて以来、68年にわたり多くの市民や観光客に親しまれてきましたが、老朽化と耐震性能の不足により、その役割を終えることになります。

現時点で今後の具体的な方針は未確定ですが、
市は有識者らとともに天守の復元に向けた具体的な議論を進めています。

将来の広島城はどうあるべきなのでしょうか。

 

広島城天守がまもなく閉城します。老朽化・耐震性能不足のため2026年3月22日を最後に内部に立ち入ることができなくなる予定です。 原爆で倒壊した天守に代わり、1958年に鉄筋コン

 

 

完成は最短2049年、費用195億円『木造復元』が最有力案へ

復元南立面図
(令和7年度第2回 (資料1)広島城天守の復元等に関する検討について(天守群の復元等に関する検討) (PDF 18.8MB)(https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/020/595/siryou1_1030.pdf)より)

 

復元に関する検討会議が2023年から有識者らを集め開かれています。

【広島市】:広島城天守の復元等に関する検討会議

 

上記ページでは未公開となっていますが、昨年12月の会議で令和7年度の中間状況が報告されました。
小天守などの周辺建物群を含めて「木造」で復元する方針が示されています。
木造再建にかかる期間や費用は下記の通りです。

▼広島城復元に関する中間報告概要

復元対象 天守閣、東と南の小天守およびそれらを結ぶ廊下などを含む建物群全体を、江戸時代末から明治初期の姿で一体的に再建
復元手法 木造復元が最有力案
本体工期 ※ 9年
完成時期 ※ 最短で2049年度
(解体、調査、設計に必要な期間を含む)
概算工事費 ※ 約195億円

※いずれも小天守を含めた木造復元の場合

【読売新聞オンライン】:広島城天守の木造での復元検討、江戸末期から明治初期の姿に…市「整備効果が一番高い」

 

 

コスト、期間、歴史文化継承―広島城再建の最適解は

今後の再建については非常に難しい問題です。
私自身も、どうすべきか正直なところ判断に迷う部分がありますが、結論から言えば、基本的には市の検討会が目指す「木造再建」の方針で進めるべきだと考えます。

 

木造で建て替える場合の完成は最短でも2049年度とされており、20年以上先になります。
国の史跡の復元にあたり、文化庁の厳しい審査や文化財である石垣の保護、膨大な量の良質な木材の調達、伝統的な工法を採用することなどが要因に挙げられます。
目先の観光資源という視点で考えれば、木造以外の工法を採用した方がずっと早く開城でき、再び活躍できる日が早まるのは間違いありません。

ただ、長期的(超長期的)な視点に立つと少し変わってきます。
一般的に、鉄筋コンクリート造などは初期費用を抑えられますが、数十年で寿命を迎えます。対して木造は、定期的な修復を重ねることで何百年もの維持が可能です。

さらに、広島城は戦前の姿を伝える資料が比較的残っている貴重な城です。それにもかかわらず、現代的な工法で「外観だけ」の復元を繰り返すこと純粋に「もったいない」です。
AR・VR技術が発展した現代だからこそ、本来の姿に近い木造で再建されることは、全国的にも極めて大きな意義と存在感を持つはずです。

「存在して当たり前」だった広島城が、閉城が近づくにつれてこれだけ注目が高まりました。
20年という空白期間への対策については、他所を参考に復元作業を見学可能にしたり、2~3年おきに段階的に公開していくなど、復元プロセスそのものをイベント化すれば、何とか関心も繋ぎ止められるのではないでしょうか。
広島城の指定管理者「広島城アソシエイツ」の代表企業であるRCCの協力も仰ぎたいです。

 

現在の「広島観光」といえば、広島市内の「平和公園」、廿日市市の「宮島」のセットが主流です。特にインバウンドの観光客はその傾向が強いですよね。
原爆の惨状を知り、平和について考えてもらうことは重要であり使命ですが、
「広島市」での体験がそれ”だけ”で満たされてしまうのは、都市としてのポテンシャルを活かしきれていないようにも思えます。
伝統的な工法でよみがえった広島城が観光ルートに加われば、体験の厚みも増し充実度はもう一段階引き上げられるはずです。

”原爆で失った天守の復元”という点でもこれらはリンクします。

 

とはいえ、195億円という事業費は重い。
他都市の例を見ても、現存する文化財の修復と異なり、新築して復元する事業に対しての大きな補助は見込めません。

今後の建設コストの上昇を考慮すれば、20年で200億円以上、ざっくり毎年10億円以上の費用が必要になり、市の建設予算の中でも決して小さくない額です。
個人的には観光はもとより経済的な都市間競争力の強化(インフラ整備、企業立地の促進施策)すべきという思いもあり…。

金額ありきではないですが、仮に7~8割に事業費を抑え復元範囲を割り切るような案(例えば小天守復元の可否・工法見直しなど)があってもよいのではないかと。

 

現実的なコスト意識を持ちつつ、広島の新しい象徴を造り上げていく。そんな議論が深まることを期待しています。
皆様はどうお考えでしょうか。

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