アストラムライン延伸、事業再検証へ―既存交通の発展活用を含めた賢明な判断を

広島市は、アストラムライン延伸計画(西風新都線)について、昨今の急激な物価高騰を踏まえ、整備効果を再検証する方針を固めました。
2026年度の当初予算に調査費5,000万円を盛り込みます。

2024年時点の概算事業費は760億円、費用便益比は1.1と算出されており、
費用の増大が採算ラインの「1.0」を割り込む可能性の指摘を踏まえたものです。
市は改めて経済効果や住民へのメリットを精査するとしており、整備への姿勢は変えていません。
現時点では2036年度の開業目標についても変更はないとしています。

巨額の建設費、維持管理費が必要となる事業です。
本市では利用者が実際の想定を下回ることも珍しくありません。
将来のまちづくりを左右する問題であり、極めて慎重な検討が求められます。

 

 

西風新都線計画の概要と再検証の背景

【中国新聞】:アストラム延伸、広島市が効果を再検証へ 採算性に懸念の声踏まえ、関連費5千万円を2026年度当初予算案に計上

計画されている事業区間は、安佐南区の広域公園前駅から西区のJR西広島駅を結ぶ約7.1kmです。概算事業費は2024年時点の試算で760億円とされていましたが、近年の資材価格や人件費の高騰により、さらに膨らむ可能性が高いと見られています。

市は2026年度当初予算案に関連費用5,000万円を盛り込み、外部委託や有識者の意見を交えて再検証を行います。

費用便益比(B/C)は2024年の算出で1.1とされていましたが、事業費の増大懸念や市議会からの採算性に対する指摘を受けたものです。
2026年度中に再算定を行い、2027年度以降に法的手続きを完了させることを目指しています。

事業概要
(広島市/新交通西風新都線(アストラムライン延伸)に係る計画案の説明会を開催しました。『説明会資料 (PDF 14.8MB)』(https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/009/236695.pdf)より)

 

不採算化の懸念と市内公共交通全体への影響

アストラムラインの西風新都線延伸については、下記の理由から私は否定的な立場です。

・郊外部への軌道系アクセスの整備は市にとってあまりに巨額であること(2024年の試算で760億円)
・現状でもバス路線によって一定の利便性は確保されていること
・デルタ内への同等の利便性を確保する場合は西広島~本通間の都心部延伸が必要になること
・そして市の財政に都心部延伸を行う余裕はないこと

ただ、市長の判断はすなわち民意であり、事業化され設計も始まっている以上、もはや認めざるを得ない状況にあります。
しかしその前提となる費用対効果が見合わなくなるのであれば話は別です。

近年の物価高騰は著しく計画が大幅見直しされることも珍しくありません。
従来の費用対効果(B/C)は1.1とギリギリのラインだったため、事業費の上振れによってB/Cが1を割り込む可能性は十分に考えられます。

 

記事では「定時性や沿線地価の向上、駅周辺の経済効果など、住民側のメリットも細やかに数値化する」としています。
しかし、極端な甘い予測による採算割れや、B/C計算上の数値を無理に1以上にするために過大なハード整備の追加による財政の圧迫に深い懸念しかありません…

本計画の「新交通西風新都線(第Ⅰ期事業化区間)」は西広島駅までの延伸です。
紙屋町をはじめとするデルタ内へ移動する場合は、バスか路面電車への乗り換えが生じます。
構想として残っている西広島~本通間の「新交通都心線(第Ⅱ期事業化区間)」まで実現すれば大きく利便性は向上しますが、西風新都線すら着工が見通せない現状において、それは途方もない時間がかかります。

全線高架または地下となる都心区間の整備には1,000億円規模の超巨額の費用も必要となり、人口増加局面ではともかく、今の時代から整備を始めるのは全く現実的ではないです

 

1999年当初延伸計画(事業費は2015年算定値、第Ⅲ期事業化区間は計画廃止済)
(広島市/アストラムライン延伸の事業化『アストラムライン延伸の事業化について (PDF 1.5MB)』(https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/011/24927.pdf)より)

 

なお「新交通都心線(第Ⅱ期事業化区間)」は、”西風新都線整備後に改めて事業化を判断する”としており、JR山陽本線を介した”環状化”を謳っています。市としても都心線(第Ⅱ期事業化区間)整備のハードルは高いと見ています。

アストラムラインの環状化
(広島市/新交通西風新都線(アストラムライン延伸)に係る計画案の説明会を開催しました。『説明会資料 (PDF 14.8MB)』(https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/009/236695.pdf)より)

 

私が一番危惧しているのが、その都心線の可能性が残ることによって、「二重投資」となる可能性を理由に、
路面電車の小網町付近のクランク解消や平和大通り線の整備に関する整備や議論そのものが停滞してしまうことです。

すなわち、西風新都線の延伸を始めるということは、赤字リスクのある路線を10年かけて整備(その間、毎年数十億円の建設予算がロック)することとなり、
その間、さらにその後の市内中心部の公共交通の高度化を停滞させ、次の世代に検討課題を引き継ぐことになりかねないのです。

もし市が”延伸ストップ”を決断するのであれば、私はそれは「英断」だと思いますがね…。

 

 

既存の交通機関の発展活用を

基本的な代替方針としては、現在のバス路線の維持・再編により、ブラッシュアップを続けるべきだと思います。
高速4号を経由する広電バスはかつて報道のあった「連節バス」導入により輸送向上を図り、
西風新都とデルタ間の交通の基幹的な役割を担ってほしいですし、
西広島駅から北に伸びる都市計画道路「己斐中央線」はアストラム無しで予定通り整備し、己斐地区の各団地から西広島駅までのアクセス強化を図りたいです。
また、改良中の「県道伴広島線」は中途半端な計画となっています。己斐中央線の起点まで改良区間を伸ばし、バス路線の設定ができれば、
石内東団地からも西広島駅へのアクセス性は大きく高まります。

 

西広島駅から都心部については既存のバス路線とのバランスを取りつつ、
先程書いた路面電車の小網町付近のクランク解消とそれに伴う平和大通り線の整備を早期に進めるべきです。
JR利用者も含めて、西方面からの都心へのアクセス向上に大きく寄与するため、
こちらを優先させた方が、恩恵を受ける利用者が多く皆が幸せになる選択肢と言えるのではないでしょうか。

 

アストラムライン西広島駅(仮称)
(広島市/新交通西風新都線(アストラムライン延伸)に係る計画案の説明会を開催しました。『説明会資料 (PDF 14.8MB)』(https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/009/236695.pdf)より)

JR線を越えて南口に駅が設けられる非常に大規模な構造のアストラムライン西広島駅。
現実的に事業を今から事業を止めるのは難しくても、北口で止めておくだけでも数十億円は削減できそう。

いずれにしても市には賢明な判断を求めます。

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