あけましておめでとうございます
昨年は大変お世話になりました。
本年もよろしくお願い申し上げます。
前回の記事でまとめたように、2019年の広島は今年着工する広島駅南口(駅ビル)関連の計画が粛々と進められた他、
紙屋町・八丁堀地区では中~大規模オフィスビル建設の進行、
サッカースタジアム建設決定などがありました。
また、デルタ西の結節点である西広島駅の開発がスタートするなど、
比較的明るいニュースが多かったのではないかと思います。
今年も都市力を高める施策・事業の進行が予想されます。
最近のニュースから、展望をまとめてみたいと思います。
まずは昨年11月ごろのニュース。
内閣府は広島市からの申請を受け、2018年に紙屋町・八丁堀地区を「都市再生緊急整備地域」に指定しました。2003年には広島駅周辺地区が同地域に指定されています。
民間開発の規制緩和や手続きの簡略化、税制支援などを受けられる制度ですが、
広島市はさらなる規制緩和が可能な「”特定”都市再生緊急整備地域」への指定を目指し、国と協議を行うことを明らかにしました。
【中国新聞】:国と広島市、特定地域格上げ協議 紙屋町・八丁堀/広島駅周辺
広島市が、市中心部の紙屋町・八丁堀地区とJR広島駅周辺について、都市の国際競争力を高めるため民間の開発を促す「特定都市再生緊急整備地域」への指定を目指し、国と協議を進めていることが19日、分かった。国は既に両地区を税制や規制緩和で優遇する都市再生緊急整備地域に指定している。「特定」地域への格上げで、これまで以上に優遇措置を受けられる。指定されれば中四国地方では初めて。
対象エリアは、紙屋町・八丁堀(161ヘクタール)と広島駅周辺(73ヘクタール)の両地区から絞り込む。建物の容積率や日影規制が緩和されるほか、道路を挟んで建物を整備できるなど開発の自由度が高まる。指定を機に、民間開発の機運をさらに加速させる狙いがある。
(中略)
国が指定する都市再生緊急整備地域は現在、全国に55地域ある。このうち特定地域は三大都市圏と福岡、札幌の13地域にとどまる。内閣府によると、特定地域の指定は、交通の便が良く経済活動が盛んであること、国際競争を勝ち抜くポテンシャルがあることが要件。広島市が今後まとめる整備方針で、国際平和文化都市ならではの戦略をどう描くかがポイントとなる。
(上記中国新聞HPより一部使用)
- 現在「特定都市再生緊急整備地域」に指定されているのは、三大都市圏と札幌市、福岡市の計13地域
- 「特定」への格上げで、建物の容積率や日影規制が緩和されるほか、道路を挟んで建物を整備できるなど開発の自由度が高まる
- 特定地域の指定は、交通の便がよく経済活動が盛んであることや、国際競争を勝ち抜くポテンシャルがあることが要件
- 対象エリアは、紙屋町・八丁堀地区と広島駅周辺地区の両地区から絞り込む
広島市や商工会議所は、中区基町の市営駐車場・朝日会館跡地一帯の再開発を、
18年の緊急整備地域指定を受けた「リーディングプロジェクト」と位置づけ、今後の開発を目論んでいます。
当初から朝日会館との間の路地を挟んだ一帯開発を表明しており、制度をフル活用した開発になりそうです。
対象エリアは、紙屋町・八丁堀地区と広島駅周辺地区から絞り込むとのことです。
特に力を入れるエリアとなるので、広島駅に隣接したブロックから駅前通り~相生通りを軸とするエリアがいいでしょう。
もう一つは1月3日の中国新聞から。
【中国新聞】:広ガスや広電などが新組織を検討
広島ガス(広島市南区)や広島電鉄(中区)など広島県内の複数の企業が、広島市中心部のまちづくりを目的とする組織の設立を検討していることが3日、分かった。県や市、経済団体にも参加を呼び掛け、2020年中の発足を予定する。
18年10月に国が都市再生緊急整備地域に指定した、中区の紙屋町・八丁堀地区を中心に活動する。建物の外観に統一感を持たせたり、建て替えに合わせて敷地の一部を歩道や広場として使えるようにしたりして快適で人が集まる市街地を目指す。再開発に関連する相談窓口の設置も考える。
全国では札幌市や福岡市などに官民連携型のまちづくり組織がある。イベント開催や公共施設の指定管理、景観のコンサルティングなどを担っており、関係者によると広島の新組織も同様の幅広い活動を模索している。地元自治体は出資や会員としての参加で、事業を後押しするケースが多い。
広島ガスや広電、県市のまちづくりを担当する部局の担当者が19年夏から協議を続けている。既に開いた数回の会合で、広島銀行(中区)本店など民間ビルの建て替えや市営基町駐車場・駐輪場一帯の再開発計画が進む中での連動したまちづくりの組織が必要との認識でおおむね一致した。
今後、2社以外の企業や広島商工会議所などにも参加を求めていく。組織の形態は、会社として参加企業などから出資を募るか、NPO法人や任意団体などにするかを詰めている。(桑田勇樹)
(上記中国新聞HPより)
これは興味深い動きが出てきましたね。
現時点では具体的にどのような役割を担う存在になるか、イメージしづらい部分もあります。
地域振興という意味なら、近年は市民レベルで「エリアマネジメント」団体が発足され、地域の賑わい創出や統一感ある景観づくりなどが行われ始めています。
会議をする回数や意見者が増えて、開発のスピードが鈍っては元も子もないです。
広島の競争力・求心力の維持・向上を第一の目標としていただき、それらに寄与する団体となればいいと思います。
広島の『ビッグバン』を起こすには
2003年に広島駅周辺地区が、
2018年に紙屋町・八丁堀地区が「都市再生緊急整備地域」に指定されました。
広島駅周辺地区はカープの本拠地マツダスタジアムの移転を起爆剤に、陸の玄関という立地を活かし
大幅に都市の生まれ変わりが進行するようになりました。
ところが紙屋町・八丁堀地区については、
指定前から構想のあった紙屋町1丁目「サンモール」周辺一帯の再開発が一気に進展したわけでもなく、
老朽化したビルの建て替えが一気に進み出すわけでもなく、
どこか勢いの鈍さを感じてしまいます。
これだけ規制が緩和され、行政や商工会議所などの経済団体が前向きな姿勢を見せているからには、
福岡市の「天神ビッグバン」のようなスピード感や求心力向上のための開発を期待してしまうわけです。
現状の紙屋町・八丁堀地区がそこまで至っていないのは、
公共交通機関が貧弱であることが要因となっているからではないでしょうか。
【福岡市】:天神ビッグバン
福岡市のHPにある図です。
いくら開発を誘発する規制緩和を行っても、対象とするエリアまでのアクセスが大動脈(土台)として機能していなければ意味がないのは当然です。
広島市の都心部の基幹交通は、路面電車及びバスですが、
表定速度は低下し定時性も確保されていない状態が10年20年と続いています。
これを放置して”特定”に格上げしたからと言って、「ビッグバン」のように、もしくはマツダスタジアムが完成してからの広島駅周辺地区のような勢いをもって開発が進むとは思えません。
年始でもありますし、私の考えを改めてシンプルにリスト化してみます。
- 都市に見合う本当の基幹交通は、バスよりも専用の走行空間を与えられた路面電車
- ICカードの普及で乗降時間は以前に比べ短縮されていることが予想される中、所要時間短縮に最も効果的なのは「信号待ち時間の短縮」(下図参照)
- 現状の系統と運行本数を維持したまま、優先信号を拡大させるのは自動車への影響が大きく警察がまず許可しない。
- 実現のためには、系統の統廃合、大型車両の拡充が必要。
(国土交通省中国運輸局―路面電車のLRT化を中心とした公共交通体系の再構築の検討調査報告書[平成17年3月])
リストアップしたものは、都市の交通インフラのビジョンにも関わりますから、広島市が責任を持って実行していかなければなりません。交通事業者である広電だけでは限界があります。
駅前大橋線の整備がこれから始まりますが、これにとどまらず、都市に見合った基幹交通の構築を今から考えて行くべきだと思います。
長くなってしまいました。ここまで書くつもりはありませんでした…(笑)
課題は残りつつも、明るい1年になるのではないかと思っています。
今年もよろしくお願いいたします。
最後に、西区の竜王公園から初日の出のタイムラプスを撮ってみました。