広島市は、市中心部の紙屋町・八丁堀地区を、国が定める「都市再生緊急整備地域」に申請する方針であることが分かりました。
「都市再生緊急整備地域」に指定されれば、複合商業施設やホテルの建設で容積率の緩和や税制面で優遇を受けられ、再開発の後押しとなります。
広島県、広島市、商工会議所は、この制度を活用し
現在中区基町の旧広島市民球場跡地に隣接する現在の「広島商工会議所ビル」を
紙屋町・八丁堀地区に建て替え・移転をさせる方針も明らかにしました。
広島都心部の紙屋町・八丁堀のまちづくりは新たな局面に入るのでしょうか。
【日本経済新聞】:「広島都心 再開発促す」
広島県の湯崎英彦知事と広島市の松井一実市長は6日、広島市役所で会談し、市内中心部の紙屋町と八丁堀地区の再開発の機運を高めることを確認した。複合商業施設やホテル、タワーマンションの建設で容積率の緩和や税制優遇を受ける制度「都市再生緊急整備地域」を広島駅前で活用した実績を生かし、早期に両地区での指定を目指す。
(一部引用)
【日本経済新聞】:紙屋町・八丁堀が都市再生整備の候補に 広島市が見通し
広島市中心部の紙屋町と八丁堀地区の再開発を巡り、同市は23日、複合商業施設やホテルの建設で容積率緩和や税制優遇を受ける制度「都市再生緊急整備地域」の候補地に2月中に選ばれるとの見通しを示した。3月末までに官民で準備協議会(仮称)を設け、詳細な整備方針を固める。地区内にある広島商工会議所の移転建て替えも協議する。
(一部引用)
「都市再生緊急整備地域」は、広島市では2003年に下記の広島駅周辺地区が指定されました。
(広島市)
行政や経済界の方針が一致したこともあり、この指定を受けた後、
2009年に貨物ヤード跡地にカープの新球場に始まり、若草町市街地再開発事業、
二葉の里地区土地区画整理事業、広島駅南口Bブロック地区市街地再開発事業、広島駅南口Cブロック地区市街地再開発事業などが行われ、
広島駅周辺は急速に都市開発が進行しました。
必ずしも地域に指定されれば何事もスムーズに…というものではありませんが、指定される事により再開発・老朽化した建物のスクラップアンドビルドが行いやすくなるのは事実です。
その緊急整備地域指定に向けて、候補地になるよう申請を行うことには歓迎です。
この制度を活用し、ビルの建て替えを表明した広島商工会議所。
【中国新聞】:紙屋町・八丁堀軸に新ビル検討
移転する商工会議所ビルについては、
”建設費の観点から単独で土地を取得しビルを建てる可能性は低い。市、県、民間と協力するのが望ましい”
として、民間と共同で行う事業を想定しているようです。
先週の中国新聞の記事には、市営基町駐車場・駐輪場や、旧広島市民球場跡地、そして現在地も候補のひとつになると報じられています。
【中国新聞】:紙屋町・八丁堀軸に新ビル検討
現在の市営基町駐車場です。
確かにかなり老朽化しているのを感じます。
この時点で名前が挙がっているということは、緊急整備地域に指定されれば再開発計画がそう遠くない内に動き出す可能性もありますね。
「都市再生緊急整備地域」。これを紙屋町・八丁堀地区に適用し、再開発を促す動き自体はいいと思います。
しかし何らかの再開発が行われるとして、どのような施設にするのか、という点も非常に重要です。
今の情勢を考えると、どれも広島駅前のようなタワーマンションと抱き合わさる再開発になる予感しかありません。
市全体で明確なプランを持って進めなければ、紙屋町・八丁堀が高層マンション街になる可能性もあると思います。
どうしても開発コストを考えると、収益性が高く確実に”売れる”マンションが採用されやすいです。
公共交通機関に多少の難があっても都心のタワマンを買うような人は電車ではなくマイカーを使う割合の方が確実に多いでしょうからね。
都心部のタワーマンション自体を否定するわけではありませんが、
増えすぎるのも中心部の賑わいの低下ひいては求心力低下に繋がるため、慎重に考えなくてはなりません。
今、広島市中心部に必要なのは、圧倒的に不足しているハイグレードオフィスビルです。
民間調査会社CBREによると広島市のオフィス空室率は2.8%。(2017年第4四半期)非常に空きが少ない状態です。
八丁堀に完成した「スタートラム広島」は、高額な賃料ながら市内の拠点統合や郊外からの立地改善のニーズを受けほぼ満室となりました。
空室が極めて限られる中、移転による大幅な賃料アップを許容するテナントも現れているとのことです。
【CBRE】:各都市の動向-2017年第4四半期
オフィスビルを整備しやすい環境づくり(税制面等)と、きちんと業務活動ができるレベルへの公共交通機関の改善も合わせて行わなければ、「紙屋町・八丁堀の未来は明るい」とは言えません。