2021年の年末に九州を旅行してきました。
今回は、先日紹介した熊本駅から市電に乗り10分程度、
桜町(中央区)に2019年9月に完成した複合商業施設「サクラマチクマモト」に行ってきました。
こちらも2018年7月に訪れて以来の訪問となります。
「サクラマチクマモト」は、バスターミナル、商業施設、シネマコンプレックス、ホテル、ホール・会議場などで構成される複合施設です。
九州地方で高速バスなどを運行する九州産交HDと九州産交ランドマークといった民間会社が共同で出資した「熊本桜町再開発株式会社」が主体となり、既存の交通センター(バスターミナル)を再開発しました。
延床面積約16万平方メートル、総事業費755億円の巨大プロジェクトです。
再開発の概要
【熊本市】:桜町地区市街地再開発事業
- (参考)事業者報告(PDF:2.47メガバイト)
【公式】:SAKURA MACHI Kumamoto-サクラマチ クマモト-
【九州産交ランドマーク】:SAKURA MACHI Kumamoto
【サクラマチクマモト】
正式名称 | 熊本都市計画桜町地区第一種市街地再開発事業 |
用途 | 商業施設、バスターミナル、公益施設(ホール等)、ホテル、 バンケット、住宅、シネマコンプレックス、事務所、駐車場 |
高さ | [住宅・ホテル棟]:59.88m |
階数 | [住宅・ホテル棟]:地上15階 [商業棟ほか]:地上5階・地下1階 |
構造 | 鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造 |
敷地面積 | 30,266.83平方メートル |
延床面積 | 164,070平方メートル |
商業施設店舗数 | 約150店舗 |
バスターミナル | 29バース |
公益施設 | 熊本城ホール 2,300席(メインホール) |
ホテル | ホテルトラスティプレミア熊本 205室 |
住宅 | ザ・熊本ガーデンズ(株式会社マリモ) 159戸 |
着工 | 2015年 |
開業 | 2019年9月14日 |
事業主 | 熊本桜町再開発株式会社 |
設計 | 日建設計・太宏設計事務所JV |
施工 | 大成・吉永・岩永・三津野・新規JV |
総事業費 | 755億円 |
上記の用途を見ていただいて分かるように、あらゆる都市機能が集積する「全部入り」の再開発施設です。
延床面積も16万平米とモンスター級。ハードでは地方最強の都市施設ではないかと個人的に思っております。
賑わい感じる有機的な外観
では実際に訪れた様子です。3年前の記事と似た角度から意識して撮っていますので、見比べながら見てみると面白いかもしれません。
ネット記事や他の方のブログ等で見てはいましたが、
実際に目の当たりにすると「本当にこんな曲線だらけのものが現実になったのか」と改めて驚きます。
室内に模型があったので撮ってみました。
このように商業棟は各階にテラスが設けられています。
一つとして同じ形のフロアがなく、非常に複雑で有機的です。
後ほどテラスにも行ってみます。
南側は地上15階の住宅・ホテル棟。
マンションは広島に本社を置く株式会社マリモが手掛けた「ザ・熊本ガーデンズ」となります。
西側に隣接するのが公益施設部分。「熊本城ホール」はこちらです。
1階は新しいバスターミナルとなっており、車両の出入口がこちらに設けられました。
「熊本桜町バスターミナル」は29バースを備え、1日に4,300便もの高速バス・路線バスが乗り入れる日本最大のバスターミナルです。
コロナ前の1日のバスターミナル利用者数はおよそ4万人となっており、JR熊本駅のおよそ2.4万人よりも多いのですね。熊本はバスの街です。
バスターミナルはウィンドウで仕切られた室内式。
ホームによって色が分けられています。
バスロケーションシステムも当然導入されています。
すでに発車した、1本前のバスも表示してくれるのがいいですね。
本当に待っていたら来るのか?という不安の解消に繋がります。
本当にビルの上なの?商業施設のテラスへ
サクラマチクマモトの中に入っていきます。
各階に設けられた「ストリートビューテラス」。
どの層でも豊かな緑と太陽が感じられるテラス。(この日は雨が降ったり止んだりでしたが)
お店を限定しないカウンターテーブルが本当に多数設けられていて、自由に楽しみ休憩することができます。
下手をすると、”お金にならない空間”にもなりかねないというのに、それでもこれだけの空間を用意したのは英断ですね。
5階のテラスから、屋上「サクラマチガーデン」に繋がります。
このあたりから、ビルの屋上であることを忘れていきます。
イベントスペースが設置されています。
現代版、デパートの屋上ですね。
さらに、「ガーデン」の名に相応しいたくさんの木々と池が整備されています。
いや、ここビルの屋上ですよ(笑)
熊本城ホールのメインホールのエントランスからは、熊本城を望むことができます。
眺望計画が素晴らしいですね。
ビル周辺も変化 歩行者中心のマチナカに
ビルの周辺の様子です。
この記事の最初で撮影した商店街とサクラマチクマモトを互いに導くように、
オープンスペース「花畑広場」が整備されました。
南側の辛島公園もリニューアルし、街に開けた印象に。
サクラマチクマモトの目の前は、元々バスターミナルのアプローチ道路でしたが、
先ほど紹介したようにバスの導線を南側に変更した事により、すべて歩行者専用化されました。
「シンボルプロムナード」と名付けられており、熊本城が視点場になるよう考えられています。
北側から振り返ります。
以前はバスセンターへのアプローチ道路でした。
あとがき
何年後しで実現したんでしょう。
観光資源であり市民の誇りでもある熊本城を尊重しながら、都市に不足していた機能や交通の利便性を一気に解決することを図った大型再開発は非常に見応えがありました。
行政や施設関係者間でビジョンが明確になっているのがもの凄く伝わってきます。
行政も絡む中心市街地での大型再開発ということで、
商業テナントの数や中身の選定は難しい判断もあったと思われます。
とはいえ、県内外の人々が集うバスセンターですから、
郊外から中心部にという大きな括りで人を呼び込む機能としては非常に強力な施設ができたのではないかと思います。
2階に「サクラマチコンコース」という空間があります。
バスのりばに繋がるコンコースで、この先では熊本城ホールに直結しています。
ここを中心に、ビル内、ホール、そして商店街方面に人が染み出していくイメージですね。
イベント終了後ということもあったのか、非常に通行客が多く、まさしく「都市の心臓」に見えました。
サクラマチクマモトのこうした構造や憩いの空間の使い方は、令和の総合百貨店の姿ではないでしょうか。
そごう広島店本館およびバスセンターのモデルにしてほしいと思いましたね。