他都市探訪記事です。
先日所要で長崎を訪れた際に、長崎市の新たなランドマーク「長崎スタジアムシティ」に行ってきました。
この施設は、ジャパネットグループのリージョナルクリエーション長崎が運営する大型複合施設で、2024年10月14日に開業しました。
約20,000席のサッカースタジアム「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」を核として、約6,000席のアリーナ「HAPPINESS ARENA」、日本初のスタジアムビューホテルに、商業施設・オフィスビルで構成される複合施設です。
単なるスポーツ観戦だけでなく、ショッピングやビジネスなど多彩な体験を提供する新たなランドマークとして注目を集めています。
目次
長崎スタジアムシティの概要
【公式】:長崎スタジアムシティ
【ソフトバンクニュース】:日本初が詰まった「長崎スタジアムシティ」。長崎に誕生したのはスタジアムと一体となった “街” だった
▼概要
名称 | 長崎スタジアムシティ | |
所在地 | 長崎県長崎市幸町7番1号 | |
アクセス | JR「長崎駅」徒歩約10分、JR「浦上駅」徒歩約7分 | |
敷地面積 | 約75,000㎡ | |
延床面積 | 約183,373㎡ | |
主要施設 | サッカースタジアム | PEACE STADIUM Connected by SoftBank(20,000席) ・JリーグのV・ファーレン長崎の本拠地 |
多目的アリーナ | HAPPINESS ARENA(6,000席) ・Bリーグの長崎ヴェルカの本拠地 |
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宿泊施設 | スタジアムシティホテル長崎(243室) | |
商業施設 | スタジアムシティSOUTH(延約20,000㎡) | |
オフィス棟 | スタジアムシティNORTH(約13,900㎡) | |
その他 | 駐車場(約1,100台)ほか | |
建設主体 | 株式会社ジャパネットホールディングス | |
総事業費 | 約1,000億円 | |
運営者 | 株式会社リージョナルクリエーション長崎 | |
開業日 | 2024年10月14日 | |
特徴 | 地域課題解決、防災機能、一時避難所としても利用可能 |
外観とアクセス
長崎駅に降り立ちました。
およそ3年ぶりに訪れましたが、新幹線が開通し駅自体も大きく生まれ変わっています。
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駅の様子は機会があればまたご紹介します。
駅前広場や新幹線・在来線の高架を横切り、浦上川沿いを北上しスタジアムを目指します。
駅前からも「スタジアムホテル」の上部が一部確認できました。
徒歩15分ほどで見えてきたスタジアムの外観です。
スタジアムの南北を商業施設とアリーナが挟みます。
全体が「スタジアムシティ」です。
2万人収容のスタジアム!ピッチに近すぎる座席など
階段を上りスタジアムに入ります。
観客席に至るメインのコンコースは3階レベルとなっています。
コンコースから眺めるピッチ全体の様子です。
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囲まれ感が強い美しいスタジアムに興奮しました!
バックスタンド側のスタジアムホテルは横に長く、長崎に多数入港するクルーズ船のようです。
メインスタンド
バックスタンド
記者席等はメインスタンドに設けられていますが、ホテルや後述するフードコートなどはバックスタンド側にあり、ホスピタリティが整っています。
スタンドからの景色をいくつか
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サッカースタジアムとして当たり前ですが、どの席もピッチに近くフィールド内を向いているので、非常に見やすいです。
ピッチとの近さなど。
いや凄すぎる…通常の座席もピッチとの距離は短い方ですが、
2枚目の画像に示す「プレイヤーズスイート」は、ピッチまでおよそ5m!
フェンスなど一切遮るものがなく観戦できます。いや、これは「観戦」なのか…?
選手のベンチは画像奥、スタンド内の1段上がった場所に設けられており、選手と一体となって試合に望むことができますね。
座席の様子。
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全席カップホルダーが付いています。
面白いのは、画像2枚目。年間指定席には一席ずつオーナーのネームプレートが付いています。
お金はかかりますが、非常に満足感が高まる良い取組ですね。
映像装置。
北側に幅18m×高さ6mのビジョン、南側に幅14.4m×高さ約8.2mのビジョンが設けられています。
画像は北側のものです。
また、360度取り囲むリボンビジョンも設置されています。
ピッチを見渡しながら360度周回できるコンコース
コンコースを改めて見ていきます。
ゲートはABCという呼称ではなく、いずれもスポンサー名がつけられています。
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エディオンピースウイング広島と同様に、ピッチを見ながらぐるりと1周できるようになっています。
コンコース内の店舗は試合がない日でも一部を除き営業しています。
1層目のスタンドはほとんどのエリアが開放されており、テイクアウトしてテーブル座席やスタンド席で飲食できます。なんと開放的な運用だ…
快適さも備えたスタジアムグルメ
飲食関係です。先程の3階コンコースとは別に、バックスタンド2階にはフードホールが設けられています。
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こんなところまで試合のない日には楽しむことができます。凄すぎる…
試合がない日の活用に主眼をおいて話してしまいがちですが、
これは試合がある日においても子供連れやライトなお客さんの楽しみ方が増えますね。
ちなみにいずれの店舗も「完全キャッシュレス」。
店舗に並ぶ必要すら無く、画像に写っているディスプレイの端末で店舗と品物を選んで注文するか、
自らのスマートフォンにインストールしたアプリでオンライン注文と決済ができます。
現金しか使えない方には、プリペイド式で金額をチャージされたQRコードを購入して対応するそうです。
キャッシュレス化のメリットは上記のような仕組みと合わせて、
必ずしも注文に並ばなくてもよくなるという点もあります。
エディオンピースウイング広島に限らずですが、スポーツ観戦では店舗・コンコースがとても混雑する時間帯が必ずあるので、これからの時代もっと普及してもいいものだと思います。
北側の2階に設けられたバー「THE STUDIUM BREWS NAGASAKI」。
店内で醸造した多種多様なクラフトビールが味わえます。
『シティ』を構成する商業施設やアクティビティ
スタジアムの南側の商業施設「スタジアムシティSOUTH」。
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カフェや雑貨、アパレル、アミューズメントなど、この棟だけで20店舗程度のテナントが入居しています。空き区画はまだあり今後増えてくる予定です。
スタジアムのスタンドを覆う屋根がそのまま背後の商業施設まで達しており、
雨に濡れない大きなコンコースになっています。
吹き抜けの空間から望む稲佐山が印象的でした。
スタジアムシティSOUTHの屋上8階に設けられた足湯。
無料で利用することができます。
北側「スタジアムシティNORTH」へ。
メディア等でも大きく取り上げられた、スタジアム上空を滑り降りるジップラインのスタート地点があります。
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ビルとビルの間をつなぐジップラインは国内で初めてなのだそう。
それをスタジアムの上空でやってしまうのですから、実行力、決断力には脱帽です。
なかなかスリルはありそう(汗)
スタジアムシティNORTH2階「ジャパレクラボ」
クラブのスポンサーでもある長崎創業のジャパネットが、商品の展示・販売を行っています。
一角にはテレビショッピングを体験できるコーナーも。これは土産話にもなるし、PRにもなりますね。
スタジアムと一体となったハピネスアリーナ
長崎スタジアムシティには、サッカースタジアムだけでなく8000人収容の多目的アリーナ「ハピネスアリーナ」も新築されました。
スタジアムのコンコースから、すぐにアクセスすることが可能でスタジアムシティNORTHとデッキを共有しています。
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あとがき
三大都市圏でも珍しいような大規模複合施設に終始圧倒されていました。
サッカースタジアム、多目的アリーナ、商業施設、オフィスがまとまった「スタジアムシティ」の名が示す通り、単なるスポーツ施設ではなく、エンターテインメントを核とした街づくりに感服です。
印象的だったのは、サッカーの試合がない日の活用のレベルが高いことです。
コンコースの飲食店が営業していることに加え、ほぼ全周で1層目のスタンドが開放されており、訪れた人々が自由に時間を過ごせるようになっています。清掃や警備に人員が必要になるにも関わらず。
長崎市の都市規模で、ここまでのサービスを提供していることに衝撃を受けました…。
きちんと利益が出るのかは私が心配することではありませんが、
ひとえに、建設主であるジャパネットホールディングスが目先の利益にとらわれず、市民の憩いの場としての長期的な価値を追求する姿勢の表れだと思います。
施設自体の建設に行政は一切負担していないので、長崎県や市町の各自治体にとっても非常に大きな存在です。
広島の街にも同じ年に「エディオンピースウイング広島」が開業しました。比較されることも多いですが、両者のコンセプトは大きく異なります。
広島は徒歩圏の中心繁華街や平和公園と調和しながら「日常」の憩いの場として都市公園の賑わいを生み出すことを目的としています。
一方、長崎は民設民営の強みを活かし、エンターテインメントやアクティビティを豊富に盛り込み、スタジアムそのものが「非日常」の賑わいを生み出すことを目指しています。
名称も「広島スタジアムパーク」「長崎スタジアムシティ」と異なっており、それぞれのコンセプトの違いがよく表れていると感じました。
ただし、共通しているのは「まちなかスタジアム」というキーワードです。
まちなかの利便性の高さは中心市街地に波及し賑わいの相乗効果を生んでいます。
広島は中国・四国地方最大の繁華街に隣接しており、地域経済への波及も大きいと考えられます。
【Yahooニュース】:「愛され続けるスタジアムに」エディオンピースウイング広島 開業1年間の来場者数 目標上回る130万人に (RCC中国放送)
こうした都市型スタジアムが日本のスポーツ施設の新たな潮流となる可能性は十分にあると感じました。
マツダスタジアムが日本プロ野球界のボールパークの先駆けとなったように、
長崎と広島のスタジアムがJリーグにおいても新たなスタンダード的存在になることを期待します。
そして何より、V・ファーレン長崎がJ1に昇格し、広島と長崎で「ピースマッチ」が実現する日を楽しみにしています。