PASPY後継『MOBIRY DAYS』が本格スタート 広電以外のICOCA等の対応も明らかに

広島エリアの新たな交通系決済サービスとなる「MOBIRY DAYS」が、
2024年9月7日より広島電鉄の電車やバス全線、芸陽バス等で利用可能となり、本格的な運用をスタートしました。
既存のICカード「PASPY」は、更新費の負担が大きいことなどを理由に2025年3月末で終了します。

後継となる「MOBIRY DAYS」は、ABT(アカウントベースド)方式で車内での処理を簡略化を狙ったシステムです。
コストダウンやクラウドでの運賃処理を生かした柔軟な料金設定を行えるようにすることが可能となりますが、
ICOCA等の全国で使える交通系ICカードと互換性がないことから、別の方法での対応となる予定です。
他のバス事業者やアストラムラインについては、ICOCAを後継のメインシステムに切り替えます。

 

 

MOBIRY DAYSの広島電鉄サービスインの概要

【広島電鉄】:― 新乗車券システム 「MOBIRY DAYS」 ― サービス開始です!

(1)2024 年 7 月 20 日(土)始発便よりサービスを開始するバス路線
・広島電鉄(バス)・・・広島~三次・庄原・東城線
・備北交通・・・全線(高田南部線、東城市街地循環バス、東城廃止代替バスを除く)

(2)2024 年 9 月 7 日(土)始発便よりサービスを開始する電車・バス路線
・広島電鉄(電車)・・・全線
・広島電鉄(バス)・・・全線(松江線、米子線を除く)
・芸陽バス・・・全線(安芸津海風バスを除く)
・備北交通・・・全線(東城市街地循環バス、東城廃止代替バスを除く)
・ボン・バス・・・全線

 

他の交通機関はICOCAをメインのシステムに

モビリーデイズの開発を主導した広島電鉄に対し、
広島県内、市内の他の交通事業者は、JR西日本のICOCAをメインの乗車券に据えることを明らかにしています。

定期券も含めICOCAが標準のサービスとなります。
広電のような簡易端末による対応ではありません。

MOBIRY DAYSについては、広島市からの補助を受け
2024度中に順次導入され対応する予定です。

 

【広島バス、広島交通、中国ジェイアールバス】

【広島高速交通(アストラムライン)】:広島高速交通株式会社におけるICOCAおよびICOCA定期券の発売開始について

 

▼広島都市圏の交通決済サービス対応状況

ICOCA MOBIRY DAYS
乗車券 定期券 乗車券 定期券
広島電鉄
(電車・バス)
△:簡易端末
による対応
広島バス 順次対応(時期未定)
広島交通 順次対応(時期未定)
中国ジェイアールバス 順次対応(時期未定)
広島高速交通

 

そして大きなトピックが一つ。
これまでPASPYを利用した場合に限り通常より10%割引が適用されていましたが、
PASPYが終了する来年3月以降、広島バス、広島交通、中国ジェイアールバスの3社は、
ICOCAを利用した場合でも10%割引が適用されることが明らかになりました。

先日の運賃制度改定に関する広島市の資料です。

2024年3月30日以降の各種割引
(広島市『「広島市中心部における均一運賃の改定等」について』(https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/1029/404492.html)より)

 

 

所感と疑問

開発を主導した広島電鉄から順次、本格展開が始まりました。
開始日はシャレオ中央広場で登録会が行われ、一人では設定が難しい方々などが登録を済ませたそうです。
その日限定で路面電車のキーホルダー型MOBIRY DAYSが発売されるなど話題となりました。
累計発行枚数190万枚、利用率は8割とも9割ともいわれるPASPYが使えなくなるので、
否が応でもMOBIRY DAYSへの移行は進んでいくものと思われます。

 

一方で、広電以外のバス3社は、メインのシステムに据える「ICOCA」(10カード)を使用した場合でも、現状のPAPSYと同様に10%割引が適用されることが分かりました。
他社システムを適用させるだけでもコストが掛かりそうなので、割引はないものと思っていました。意外です。

普段上記3社のバスしか利用しないという人にとってはMOBIRY DAYSを使うメリットがあまりないですね。

従来方式の課題は理解しますが、決定権を握る1社の強い思いの結果、
路線バスの共同経営の実現にこぎつけたにも関わらず、支払い手段の足並みが揃わない
(乗るバスを選ばざるを得ない)状況が残ることが非常に残念です。

 

MOBIRY DAYS 今後の展望

既存のシステムに見切りをつけて新しいシステムを導入することについて、
これまでこのブログでも度々記事を書いてきました。

維持費を抑えられる点、クラウドベースで柔軟な割引・サービスを提供できる点については、評価できる点だと思います。
世の中に出た今、より使いやすくて便利なものにしていくため、
今更ながら以下のことを提案したいです。

 

①多様な決済手段の解放

車上端末では利用者を識別する情報を読みたるだけの通信装置です。
運賃計算、決済処理をクラウドで管理することを活かし、多様な決済手段に対応した開かれたシステムになることを願います。
特に対応を急ぐべきと考えるものは以下です。

  • クレジットカードのタッチ決済

広電がMOBIRY DAYSを開発していた頃から、全国でクレジットカードのタッチ決済に対応する事業者が急速に増えました。
「オープンループ」と言われるこの方式。手持ちのクレジットカードが直接利用できることから、国際的な観光都市である広島とは非常に相性が良いです。
インバウンドで賑わう京阪神や福岡では特に動きが早かったと思います。

MOBIRY DAYS公式HPのQ&Aに問い合わせをしましたが、それに対する返答がないため
今のところは考えられていないようです。

プリペイド式の交通系ICカードと異なり、後払いであるため、
1日ごとや1ヶ月ごと、あるいはエリアごとなどで上限金額を設定するなど、
自由度の高い、柔軟性のある運賃設定が可能です。(全国で実績あり)

 

  • QRコード決済や電子マネー対応

国内利用者向けには、PayPay等のQRコード決済サービスにもし対応できれば画期的です。

車上端末では利用者を識別する情報を読み取るだけであり、決済処理はクラウドで行われます。
ベンダーとの調整が必要ですが、現在のモビリーデイズの読み取り機1台で対応できれば理想的です。

 

一日乗車券や他の交通機関及び観光サービス等と連携した企画乗車券などがクラウド上で柔軟に設定できる点はとても優れています。
そうしたサービスはスマートフォンでのQRコードに任せ、独自のICカードとタッチ決済で賄う、下記のようなものがよかったのではないかと。

【PRTIMES】:「神姫バス」Visaのタッチ決済&QR企画券による実証実験 

Impress Watch】:茨城交通、バス全400台にVisaのタッチ決済やQRコード決済導入

(上記サイトより)

 

②WEBブラウザで完結するサービスの存続

広島の”MaaS”を目指し、PASPYと併用されていた「MOBIRY」というデジタルチケットサービスが提供されています。
広島電鉄が運営しており、電車・バス乗り放題チケットや6時間券といったおトクなチケットを扱っていました。
名称から分かるように、将来的にはモビリーデイズとの統合を視野に入れているそうです。

【公式】:広島を便利に旅するデジタルチケット「MOBIRY」

とても優れているのが、ChromeやSafariといったスマホのWEBブラウザで使えるところです。
個別のアプリをインストールする必要がなく、観光で広島を訪れた人が手軽に利用できるのは非常に重要なポイントだと思います。

不正利用防止の観点もあると思います。1日券や企画乗車券のみに絞ったものでよいので、ブラウザ版のモビリーデイズをリリースすべきだと考えます。

 

実際に使用した気づき

使用感を確かめるため、実際に使ってみました。
クレジットカードを登録しアプリのQRコードで乗車します。

読み取り機。大きく取り回しの悪そうな筐体です。
汎用部品を使うにしても、すでに世の中に流通している機器を用いることはできなかったのか…

また、暫定的な対応かもしれませんが、乗車用、降車用、乗降兼用の端末があるようですが、案内文字が小さすぎてとても分かりづらいです。

車内でのQRコードの読み取りは、やはりこれまでのICカードに比べてワンテンポ待たされますね。
これがカメラで光学的に画像を読み取ることに起因するものなのか、
クラウドと通信していることに起因するものなのか気になるところ。(はたまた両方か)
モビリーデイズ専用ICカードの場合にどれほど違いが出るのか気になります。いつか試してみます。

 

現状はまだまだ利用者が少ないので問題は見受けられません。
しかしながら、広電では2025年3月29日を超えないよう、PASPY定期券(3ヶ月、6ヶ月)の販売を順次終了する予定で、
これらの切り替わりのタイミングで一気にモビリーデイズ利用者が増えることが予想されます。

大半の定期券利用者がこのシステムに置き換わった際に、ラッシュ時の乗降時間にどれほど影響を与えるかモニタリングをお願いしたいです。

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