広島市内中心部のバス・路面電車が値上げ 均一240円に

広島市内で路面電車や路線バスを運行する7つの交通事業者は、
2025年2月1日から市中心部の均一運賃を現行の220円から240円に引き上げる方針を示しました。
路面電車については宮島線も含めて全線均一運賃となります。

コロナ禍により減少した利用者がまだ完全に戻らないことや、燃料費の高騰、労働力不足を受け、
域内の公共交通機関を確保するための措置としています。
ただし、交通系ICカードPASPYの後継としてサービスが始まったMOBIRY DAYSを利用すれば
一律1割引きが受けられるほか、宮島線内は従量制の割引が受けられます。

市内中心部における乗合バス事業の共同運営システムを取りまとめる広島市は、
運賃改定に関するパブリックコメントを受け付け、市民意見を踏まえ中国運輸局への新料金への改定の手続きを進める予定です。

 

 

運賃制度変更の概要

【交通事業者7社】:広島市内均一エリア拡大及び運賃制度の変更について
(交通事業者7社=広島電鉄株式会社、広島バス株式会社、広島交通株式会社、芸陽バス株式会社、備北交通株式会社、中国ジェイアールバス株式会社、エイチ・ディー西広島株式会社 ※上記リンクは広島バスHP内)

【広島電鉄】:電車・バスの運賃改定及び運賃・定期券制度等の変更について

 

▼主な変更内容

  • 広島市中心部「均一運賃エリア」のバス運賃および、路面電車を全線 240 円均一に
  • バスの均一運賃エリアの拡大
  • 定期券制度の変更
    • 電車全線が乗り放題の「電車全線定期券」の設定
    • 区間や経路の指定が不要な「バス金額式定期券」の設定(従来の区間定期券の廃止)
    • 上記に伴う「広島シティパス」、「デジタルシティパス」の運賃、対象エリアの変更

 

▼運賃制度の変更

路線 旧運賃 新運賃
バス 市内均一
運賃エリア
220円 240円
路面電車 市内線 220円 240円
白島線 160円 240円
宮島線 220円~270円
(区間による)
240円
(全線均一)
※MOBIRY DAYSによる
区間割引あり

 

▼均一運賃エリアの変更

(広島市『「広島市中心部における均一運賃の改定等」について』(https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/1029/404492.html)より)

 

 

相次ぐ値上げと今後の展望

190円から220円に値上げされた2022年11月からおよそ2年半。再び値上げの方針が示されました。
労働者不足、需要減の背景があり、公共交通を維持していくための値上げということは理解しますが、
利用者としてはこれだけの度重なる値上げは痛手です。

広島市中心部では、事業者7社が”競争”から”共創”へ、より効率的なバス運行を目指した共同運営システム「バス協調・共創プラットフォームひろしま」が組織されています。
全国でもかなり先駆的な取り組みです。
これまでに、事業者を限定しない区間共通定期券の設定や、一部の重複路線した路線の統合などを行い、余剰となったリソースで循環線「エキまちループ」などの運行を実現してきました。

今回の事業者らの値上げの意思決定は早かったですが、効率化により我々が実感できる”さらなる”利便性向上施策についても加速させてほしいです。
(「”競争”しなくなった弊害だ」と何処かから言われる前に…)

【広島市】:バス協調・共創プラットフォームひろしまについて

【NHK 広島のニュース】:路線バス維持へ 広島市が「広島モデル」新組織発足

 

また、この共同経営の枠組みに広電バスだけでなく、基幹交通手段の一つである路面電車を加えて検討を進めるべきだと思います。
現状では、駅前大橋線の整備は進められているものの、それ以外の抜本的な施策は全く具体化されておらず、
路面電車の高度化=基幹交通の位置づけを活かした速達化、定時性の向上はまだまだ実現されていません。
来年度中には駅前大橋線が開通します。次なる一手の検討は急務です。

 

ICOCA等を利用した乗車について

今回発表された値上げの計画より、路面電車は市内線・宮島線は均一240円となります。
MOBIRY DAYSを利用した場合、宮島線内においては距離に応じた割引が受けられます。(これまでの従量運賃に近いイメージ)

ICOCAやSuica等の10カード、現金利用者は、路線を考えることなく一律240円ですので、分かりやすさは向上します。
PASPYが廃止される来春以降、路面電車での10カード利用は簡易端末を用いた処理になる予定です。
当初は、どこから乗ったか申告し、乗務員がそれに応じた金額を設定して差し引いてもらう方式が検討されていました。
一律で240円を引き去ればよいので、上記のようなあまりにも非効率な運用は回避できそうです。

とはいえ観光客など他都市から広島を訪れる人にとって特殊な運用であることには変わりないので、10カード利用であっても全扉から乗降できるよう、検討を進めていただきたいです。

 

運賃制度について意見を 広島市がパブリックコメント募集中

「バス協調・共創プラットフォームひろしま」を取りまとめる広島市は、11月1日(金)から11月21日(木)まで、パブリックコメントを受け付けています。

コロナ禍からの需要が完全に戻りきらず、労働者の確保も困難となっている昨今の現状は深刻です。
そうした背景は理解しつつも、短期間でこれだけ値上げが続くのは懐事情はもちろん心理的な負担も大きいです。

途中にも書きましたが、「共同経営となったことにより事業者間で競争しなくなったデメリットが現れた」と指摘されないよう、効率的な運行の検討を加速させつつ、事業者の隔たりを感じない柔軟な運用を追求してほしいです。

値上げに至る背景についても詳しく説明されていますので、ご意見のある方はよく読んだ上で意見してみてはいかがでしょうか。

【広島市】:「広島市中心部における均一運賃の改定等」に関する意見を募集します

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