モビリーデイズ読取機でICOCA・WAON、7月から対応へ 越えるべき次の課題

広島電鉄は、2026年7月1日から
MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)の読み取り機を用いたICOCAなど交通系ICカード決済の取り扱いを始める方針を明らかにしました。

PASPYの後継として2025年3月から導入されたモビリーデイズは交通系ICカードには対応しておらず、
現在は別途ハンディ端末を用いた簡易的な対応となっています。
そのため、交通系ICカード利用時はモビリーデイズとは支払方法が異なり、電車の全扉乗降やバスでの整理券不要といった利便性を十分に受けられない状態が続いていました。

開始後はモビリーデイズと同じく乗車時・降車時の2回タッチに統一されます。
これにより、広電電車では交通系ICカード利用者も全扉から乗り降りでき、バスでは整理券が不要になります。

また、上記のサービスは交通系ICカードだけでなく、イオングループが提供するWAONも利用できるようになる予定です。

 

 

AI要約
今回のICOCA対応は、広電の電車・バスにおける利用方法を一本化するものであり、利用者にとって歓迎すべき改善。
ただし、モビリーデイズ導入から1年以上を要する対応であり、「ようやく」という印象も否めない。
さらに、広島の公共交通全体で見れば、事業者間で決済端末や定期券の扱いが分かれる状況は続く状況である。
また、10%割引を前提としたモビリーデイズの運賃制度は、全国交通系ICカード利用者との公平性という点にも疑問を感じる。
今回のICOCA対応を一つの契機として、モビリーデイズをどう軟着陸させるべきかを考える。

モビリーデイズ端末でICOCA・WAONが利用可能に

【MOBIRY DAYS】:MOBIRY DAYS リーダによる、 交通系IC カード(ICOCA 等)およびWAON の取扱開始について

【広島電鉄】:MOBIRY DAYS リーダによる、交通系 IC カード(ICOCA 等)および WAON の取扱開始について

▼MOBIRY DAYSリーダを用いた交通系ICカード(ICOCA 等)およびWAONの取扱概要

取扱開始日 2026年7月1日(水)始発から
対象決済 ・交通系ICカード(ICOCA、Kitaca、PASMO、Suica、manaca、TOICA、はやかけん、nimoca、SUGOCA)※PiTaPaは非対応
・WAON
利用方法 MOBIRY DAYSリーダーに乗車時・降車時の2回タッチ
対象事業者 広島電鉄、備北交通、芸陽バス、ボン・バスなど20事業者のMOBIRY DAYS利用可能路線

 

MOBIRY DAYSリーダー

 

モビリーデイズは、維持費が高額だったPASPY(パスピー)の後継として、広電が中心となって導入した新しい乗車券システムです。
スマートフォンのQRコードや専用ICカードを使い、クラウド上のアカウントで利用情報を管理することで、運賃制度を柔軟に設計しやすく、システム費用を抑えやすいという利点があります。

一方で、全国的に普及しているICOCAなどの交通系ICカードとそのまま互換する仕組みではなかったため、広島都市圏の公共交通では決済手段が分かれました。

パスピー終了後、ICOCAを主なIC乗車券として採用した広島バス、広島交通、JRバス中国などに対し、広電グループは独自開発したモビリーデイズを軸にしました。

その結果、同じ広島市内のバス・電車でありながら、事業者によって使う端末や割引制度が異なる状態になり、現場の混乱、利用者の困惑を招いていました。

ついに具体的な廃止のスケジュールが明らかにされました。 維持管理にコストが掛かるとして廃止する方針が示されていた広島都市圏の交通系ICカード「PASPY」について、 202
広島エリアの新たな交通系決済サービスとなる「MOBIRY DAYS」が、 2024年9月7日より広島電鉄の電車やバス全線、芸陽バス等で利用可能となり、本格的な運用をスタートしまし

 

対応としてモビリーデイズの端末で交通系ICカードの利用を可能にする方針を2024年11月に示していましたが、その具体的な時期が今回2026年7月とリリースされました。(当初は”2026年春”とされていました。)

広島電鉄は11月13日の記者会見で、 ICOCA等の全国交通系ICカード(10カード)や、WAON(ワオン)などの流通系の電子マネーを MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)

【株式会社トランザクション・メディア・ネットワークス】:広島電鉄の新乗車券システム「MOBIRY DAYS」における交通系ICなどキャッシュレス決済導入をサポートします

 

 

イコカでの端末統一がようやく実現するも、分かりづらさはまだ残る

大変時間がかかりましたが、ようやくモビリーデイズの読み取り機での交通系ICカードの対応が実現します。
広電の電車・バスの車内でイコカ等の利用方法が一本化されることで、「どのタイミングで、どこにタッチすればよいか分からない」という状態が解消されるため、率直に歓迎したいです。

路面電車の連接車両ではモビリーデイズと同様に全扉から乗り降りでき、バスでは整理券を取る必要もなくなります。
同一電停の60分以内再乗車サービスも対応とのことで、利便性の向上、乗降に要する時間の短縮に繋がりそうです。

ただし、モビリーデイズは2025年3月から本格導入されており、今回の対応には1年以上を要することになります。
広島駅前大橋ルートの開業にも間に合いませんでした。
必要な前進ではありますが、「ようやく」という印象は否めません。

 

また、今回の対応で広島の公共交通全体の分かりづらさが解消するわけではありません。
広電以外の、いわば「ICOCAメイン」としている事業者はイコカ定期券を発券していますが、”システムが異なる”ことから広電のモビリーデイズ読み取り機では対応できないようです。
そのため、広電以外の事業者は、モビリーデイズはモビリーデイズ読み取り機、ICOCAはICOCA専用端末、というこれまで通りの運用が続くと思われます。

【中国新聞】:モビリーデイズがICOCAやWAONに対応、割引はどうなる 広島電鉄の方針は

(一部引用)
広島市内の他のバス会社が発行したイコカ定期券については「システムが異なるため現行の読み取り機では対応できない」と話した。

 

つまり、広電の車内では利用方法が一本化されても、事業者間で見れば利用体験は統一されません。
特に、エキまちループをはじめ、広電を含む複数事業者が共有する路線では、この分かりづらさが残ります。
自分が登録している定期券によって乗るバスを選ぶ、あるいは利用している決済手段によって読み取り機を見極めなければならない状況は、公共交通として望ましい姿ではありません。

事業者ごとの投資判断やシステム選択には、それぞれ事情があると思います。
しかし利用者からすれば、重要なのは「どの会社のバスか」ではなく、「広島の公共交通として迷わず使えるか」です。

バス協調・共創を掲げるのであれば、事業者側の都合ではなく、利用者の体験を基準に制度をそろえていく必要があります。

 

 

広電でのイコカ利用時の割引は引き続き無し  そもそも一律10%割引は妥当なのか

先程の中国新聞の記事より、広電のモビリーデイズ読み取り機におけるICOCA利用では、従来通り割引は適用されないことが分かりました。
個人的には、ICOCAにも割引を適用してほしいとは考えていません。
むしろ疑問なのは、最大10%という大きな割引を前提にした運賃体系そのものです。

運賃は本来、事業者が提供する移動サービスに対して利用者が適正な対価を支払うものであり、
その設定は10円単位の値上げであっても当局の認可を受ける、公共性の高いものです。
自社の決済サービスを使うだけで、一律にその場で大幅な割引が適用される仕組みは、
健全な運賃制度と言えるのでしょうか。

これは、バスカード時代から額面の1割増しのプレミアムが付いていたこともあり、利用者側にも「割引があって当たり前」という感覚が根付いている面はあると思います。
公共交通機関の利用促進策として一定の還元を行うこと自体は否定しませんが、モビリーデイズの割引率は10%と、
一般的なクレジットカード等の還元率と比較しても非常に高く設定されており、実際の負担額と「正規運賃」として設定された額の乖離が大きすぎるように思います。

モビリーデイズとICOCA利用の間に差を設けている理由については、
全国交通系ICカードのネットワークに接続するための費用負担があるため、と見ることもできるかもしれません。
しかし、広電より規模の小さい広島バスや広島交通などは、ICOCAをメインの決済サービスに据えたうえで、一律に10%の割引を適用しています。

「安価に導入できた」との言及があることも踏まえると、交通系ICカードの接続費用だけを理由に、ICOCA利用者を割引対象から外す説明には、やはり疑問が残ります。

【中国新聞】:モビリーデイズとICOCA 広島県内バスや電車の運賃支払い方法「分裂」の背景は

(一部引用)
広島バスがイコカを選択したのは、22年5月頃。広島バスの平岡祐介・運輸部次長は「イコカをメーンにすると、全国交通系ICカードが使えて今までとほぼ同じサービスが提供できるのが大きかった。コストも格段に安かった」と理由を語った。

 

やるのであれば、運賃そのものの大幅な割引はやめ、例えば還元率を最大でも5%程度まで抑えた「モビリーデイズポイント」の積立制に改め、
一定のポイントが貯まればチャージに充当できるような仕組みの方が、公平であり分かりやすいです。
(当然、ICOCA利用では「モビリーデイズポイント」は貯まらず、WESTERポイントが貯まる。)

便利なサービスであれば、料金に差がなくても利用者は使います。
モビリーデイズは「柔軟な割引制度」がメリットであるはずのクラウド型乗車券サービスですが、現状ではマイナンバーカード連携のごく一部の割引サービスを除いて登場していません。
公共性の高い全国交通系ICカードの利用者を割引の対象から外し、自社サービスだけを大きく優遇する形は、単なる囲い込みと受け取られても仕方ありません。

近年厳しさを増す人件費や燃料費、設備更新費の高騰は、公共交通を維持するうえでの死活問題です。
だからこそ、慣例的に続いた、一様に割り引く運賃制度は、早い段階で再整理するべきだと思います。

 

 

WAON決済にも対応、本当に必要なのはクレカの『タッチ乗車』ではないか

今回の発表では、ICOCAなどの全国交通系ICカードに加え、以前から報じられていたWAONへの対応も示されました。
流通系の電子マネーを直接公共交通機関で使用できるのはそれなりに大きなトピックですね。

ただ、ここについても今更感があるように思います。
近年のイオングループは、AEON PayとWAONの連携や、ポイント制度の整理を進めています。
顧客への情報発信やサービスの軸も、従来型のWAON単体より、スマートフォン決済を含むAEON Pay側へ移っているように見えます。
そうした流れの中で、2026年になってWAON対応を大きく打ち出されても、利用者にとってどれほど分かりやすい訴求になるのかは疑問です。

むしろ今後、広電が本格的に検討すべきなのは、クレジットカードのタッチ決済による「クレカ乗車」です。
全国各地の公共交通で導入が進み、国内外の来訪者にとっても使いやすい決済手段になりつつあります。

特に広島は、観光客や出張者、外国人旅行者が多い都市です。事前登録や専用カードを必要とせず、手元のクレジットカードでそのまま乗れる仕組みは、広島の特性にも合っています。
広電は過去にクレカ乗車へ慎重な姿勢を示しており、その後も大きな動きは見えていません。

ICOCA対応を第一歩としつつ、次の段階では「クレカ乗車」への対応も本格的に検討すべきです。

 

ICOCAを主軸に、モビリーデイズは付加価値サービスに発展を

2026年初頭から、広電以外の事業者にもモビリーデイズの読み取り機が設置されサービスが利用できるようになりました。
これには広島市が2年間で約9億円近くもの補助金が投じられています。市としては「バス協調・共創プラットフォームひろしま」を立ち上げた以上、事業者間の足並みをそろえるために必要な支援という位置づけだったのだと思います。

今回のように特定の事業者が先行する形で、利用者の利便性や他事業者の考えと必ずしも合致しないサービスが作られ、結果的にそれを「共創」の名のもとに他社へ広げざるを得ない形になったことについては、重く受け止めなくてはいけません。
広島市は検討当時、事業者にサービスの一本化を呼びかけたものの、最終的には民間事業者が決断することとして「口出しできなかった」と中国新聞の取材に答えています。

いやいや、「バス協調・共創プラットフォームひろしま」の要である行政機関なのですから、大いに口出しすべきだったはずでしょう。こうなる前に、もっと強く舵取りをすべきだったと思います。

【中国新聞デジタル】:モビリーデイズとICOCA「分裂」の今後は 広島市「一本化呼びかける」/専門家「もう一度議論を」

(一部引用)
事業者に「サービスの一本化を」と呼びかけてきた広島市の当時の担当者は「最終的には民間事業者が決断すること。市は口出しできなかった」と説明する。

 

課題・反省が多く残るモビリーデイズですが、これだけ投資をしてしまっている以上、無かったことにするわけにもいかず、多くの利用者・事業者が納得できる何らかの形で軟着陸させる必要はあります。
今回の“ICOCA対応”も大きな一歩ですが、最終的には、やはり広電も他社と同様にICOCA主軸の決済に再整備すべきと考えます。クレジットカードのタッチ決済にも対応し、日常利用者、観光客、出張者、外国人旅行者の誰もが迷わず乗れる「公共性」の高い利用環境を整えていただきたいです。

そのうえでモビリーデイズは、一日乗車券、企画乗車券、MaaS連携、地域限定施策などに活用すればよいと思います。
個人的には一刻も早く「MOBIRY TRAVEL」の機能をアプリに統合してほしいです。

少し飛躍しますが、将来的に車外精算を見据えた時に、現金利用者向けのチケット読み取りにも使えるのではないでしょうか。(電停の簡易券売機でQRコードが印字されたレシートが発行される)

広島の公共交通に必要なのは、事業者ごとに異なる仕組みを利用者が理解して使い分けることではなく、誰もが迷わず乗れる分かりやすさです。モビリーデイズは、普段使いの決済手段として利用者を囲い込むのではなく、一日乗車券や企画乗車券、MaaS、地域施策といった付加価値サービスでこそ生かすべきだと思います。

今回のICOCA対応を、単なる機能追加で終わらせるのではなく、広島の公共交通全体を利用者目線で再設計するきっかけにしてほしいです。

guest
2 Comments
古い順
新しい順 高評価順
Inline Feedbacks
View all comments