ICカード『PASPY』が25年3月で廃止へ 代替はQRコードとICカード併用へ

ついに具体的な廃止のスケジュールが明らかにされました。

維持管理にコストが掛かるとして廃止する方針が示されていた広島都市圏の交通系ICカード「PASPY」について、
2025年3月までに廃止し、新規開発するアカウント登録方式のQRコード決済に移行させる方針が明らかになりました。

自動改札機で運用している新交通アストラムラインは
定期券の登録も含めたICOCAでの一本化をJR西日本と合意したことを公表。

PASPYの導入からおよそ15年。
広島の交通利用体系が早くも大きく変わろうとしています。

 

21日の中国新聞の記事で、広島電鉄の椋田社長は 広島都市圏で利用できるIC乗車券PASPY(パスピー)を広電としては将来的に廃止し、代わりにスマートフォンを使ったQRコード決済の

 

PAPSY(パスピー) 2025年3月に完全廃止

【PASPY「パスピー」 公式サイト】:交通系ICカードPASPYのサービス終了について

  • サービス終了目処:2025年3月までに順次終了予定
  • サービス終了理由(抜粋):機器の老朽化による更新に多額の投資が見込まれており、システムの維持が困難になっていることから、PASPYのサービス終了の方針を決定したものです。
  • 払い戻し等の取り扱いについて:後日詳細が決まり次第お知らせ

 

 

【広島電鉄】:スマートフォンに表示させたQRコードや新たな交通系ICカードを認証媒体とする新乗車券システムの開発に着手します

  • 広島電鉄、日本電気株式会社(NEC)、レシップ株式会社(レシップ)の3社で、スマートフォンに表示させたQRコードによる乗車券システムの開発に着手する。
  • 利用者の情報は固有IDでクラウドサーバ側で管理し、機器側で処理を行わないためシステム全体のコストダウンが可能。
  • 自らのアカウントを利用してスマートフォンやPC上からチャージや定期券の購入が可能。アカウント登録時にクレジットカードや銀行口座と紐付ける。
  • スマートフォンを持っていない利用者については、専用の新たな交通系ICカードを提供し利用してもらう。
  • 乗継割引や共通定期など各種割引サービスも実装予定。
  • 2024年10月からのサービス開始を予定する。

 

【広島高速交通】:アストラムラインにおけるICOCA及びICOCA定期券の発売について

  • アストラムラインにおけるICOCA及びICOCA定期券の販売についてJR西日本と合意。
  • 連絡定期券の導入についても検討。
  • 2024年度の開始を予定。

 

【中国新聞】:【Q&A】パスピー廃止へ、広電の新しい乗車券システムとは

  • アストラムラインや他のバス事業者なども含め、全てで使えなくなる
  • 銀行口座やクレジットカードからのチャージを基本とし、現金チャーチは広電の窓口でのみ可能。車内では不可。
  • ICOCAやSuicaを使えるかどうかは未定。
  • 読み取り反応速度はサーバーと通信する分時間はかかるが1秒以内を目指す。(PASPYは0.2秒)

 

ということで、ついに廃止に向けた具体的なスケジュールと、その後の方針について明らかになってきました。
パスピーは県内の交通事業者らで作る協議会により運営されていますが、その中心的な役割を担ってきた広島電鉄が抜けるとなれば、やはり存続は困難であり、現在30以上の事業者に導入されているPASPYそのものが廃止されることは避けられないようです。
中国新聞のQ&Aによると、加盟する32社全てでPASPYは使用できなくなることが記載されています。

 

 

QR化移行に思うこと

以前から書いているように、ICカードの利便性やスピードは他に変えられず、存続の道を探るべきという立場ですが、
ここまで方針が決まっているのであれば、今後覆ることはそうそう無いでしょう。
もはや、新システム下でいかに利便性やスピードを保つことができるか、覚悟を決めて考えるべきですね。

 

とはいえ、現段階での情報では色々と気になることだらけです。

気になった点をいくつか。

①通勤通学で利用する定期券もQRコードで運用するのか?

専用のカードや乗車券が要らずスマホさえあればサービスが利用できるQRコードは、
観光客、特にインバウンド受け入れには確かに相性がいいです。
様々な事業者を横断的に案内しまとめて予約・決済までもを可能にする「MaaS」の考え方は、欧州で広く普及しています。

MaaS(Mobility as a Service)

MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。

(国土交通省『日本版MaaSの推進』より)

 

広島都市圏でも2020年3月から、広島電鉄が提供するサービス「Mobily」で
路面電車の1日券や空港リムジンバス、シェアサイクルなどをアプリ1つで予約・購入が可能です。
現状は乗務員にスマホの画面を見せるだけの運用になっています。
QRコードを用いた新乗車券と統合されるものと思われます。

ということで、観光客向けはQRコード、定期利用者は従来のICカードのように棲み分けを行うのかと思っていましたが、
お知らせの記載を見るとそうでもなさそうで、
定期券利用者もQRコードに移行させる方針があるようです。

以前も書いたように、
【裏表を気にせず、財布やスマホケースに入れたまま高速に通過できるICカード】
VS
【取り出してコード画面を開いて必ずその面をかざさなければならないQRコード】
では、運賃収受時間でICカードに優位性があるのは明らかです。

 

 

②ICカードではクラウド化できないのか?(QRコードである理由は?)

専門家ではないので詳しいことは分かりませんが、決済や残高管理をサーバー側で処理することで、機器側のを低コスト化に繋がるのであれば、
その手段はQRコードではなくICカードでもいいのではないか、という疑問です。

というのもJR東日本のSuicaが全く同様に、センターサーバーで処理する方式への刷新を計画しており、より柔軟なサービス開発やコスト削減によるエリア拡充を目指しています。

Impress Watch】:クラウド化するSuicaが目指す未来【鈴木淳也のPay Attention】

 

仮に、QRコードにこだわる理由が、将来的な観光MaaSとの統合、サービス拡充だけが目的なのであれば、
それは別の手段でサービス提供を行い、ICカードの利便性を取るべきと感じます。
機器にQRコードを提示するのではなく、電停等に掲示したQRコードを読み取る方式にすれば、車両側の機器としてはICカードリーダーに一本化できます。

 

 

③結局、SuicaやICOCは使えるのか?

一番重要なところではないかと思うのですが、なんとまだ決まっていないとのこと。

ただし、スマートフォンを持っていない人向けには”専用のICカード”を用意するようなので、これを使ってSuica等が利用できる可能性はあります。

Suica等を使用が目的ではなく、スマホを持っていない人にICカードを提供するという点も非常に中途半端です。
余計に、”じゃあICカードでいいじゃん?”と思ってしまうのです。

 

いっそのこと現金利用者・スマホ非利用者はについては券売機方式にして、ワンタイム式のQRコードを発行し、乗車してもらう方が統一感もあり分かりやすいのではないでしょうか。

券売機は非常にシンプルなもので、QRが印字されたレシートのような乗車券を発行するイメージです。
Suica等利用者については、自動改札機感覚でICカードをタッチすると決済完了し、即時発行されるQRコード乗車券を持って乗車してもらう。
このようにすれば、全ての利用者が乗車時と降車時に同じ動作をすることになり、
全扉のセルフ乗車を導入する際の不正防止にも繋がります。

 

 

④アストラムはQR乗車券に参加せず、ICOCAにスイッチへ

アストラムラインは、QRコードは採用せずICOCAのシステムに乗り換えることが明らかになりました。
通勤時間帯などは特に多くの利用者が集中するため、QRコードをかざして自動改札を通るという行為は現実的ではありません。
資料にはJRとの共通定期券も検討するとしています。例えば、新白島駅で乗り換える、五日市→本通(アストラムライン経由)という定期券も発行可能になるのでしょうか。

運賃が統一されるわけではないのでそれだけ料金はかかりますが、
乗り換えを行っている利用者にとっては乗車券が1枚で済むことになります。

気分的にもJRから本通が少し近くなるかもしれません。

 

以上、思うことをまとめてみました。

駅ビル建て替えと合わせて行われている駅前大橋線の整備。
まさか開業時にはPASPYが廃止されているとは夢にも思わなかったです。

運賃収受の所要時間像、利便性の低下など懸念事項は大いにありますが、
決済処理のクラウド化により柔軟な運賃設定が可能となるのは大いに期待すべきところかと思います。
先日報道のあった、広電の時間変動運賃も、このシステム変更がなければ不可能です。

これから開発を進めていくので、様々な利用者の意見を踏まえ、可能な限り利便性を保った体系となることを望みます。

【中国新聞】:広電、時間帯・曜日で運賃の変動検討 バスと電車

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