広島で毎年開催されている建築の公開イベント「ひろしまたてものがたりフェスタ」が今年も開かれました。
通称「たてフェス」は、建築の特別公開や多様なプログラムを通じて、広島・呉の魅力的な建築を見て・触れて・知ることができるイベントです。2025年度は、過去最多となるプログラムが実施され、広島市内および呉市内各所で開催されました。
公開された建物のうち、原爆ドームの北側に立つ「広島商工会議所」を訪れました。
27年度には基町の再開発ビル「KAMIHACHI X」に移転する予定の広島商工会議所。築後60年、ビルがどのような景色を見てきたのか確かめてきました。
『ひろしまたてものがたりフェスタ2025』の概要
【公式】:ひろしまたてものがたりフェスタ | 建築公開イベント
【広島県】:ひろしまたてものがたりフェスタ2025の開催について
「ひろしまたてものがたりフェスタ(たてフェス)」は、建築の特別公開や多様なプログラムを通じて、広島・呉の魅力的な建築を見て・触れて・知ることができるイベントです。2025年度は、過去最多となるプログラムが実施され、広島市内および呉市内各所で開催されました。
建物の価値を広く共有することで、広島での建築文化の発展や、広島県のエリアブランディングへの貢献も目的としています。
広島商工会議所は、広島市中央公園に隣接した中区基町に立地。
(2023年4月撮影)
戦後復興と高度経済成長が続く1965年に完成しており、2025年現在で築60年が経過しています。
また、2022年に改定された広島市景観計画では、平和公園から原爆ドームを貫く南北軸の景観を保全するための高さ制限を設けました。広島商工会議所ビルは制限を超える高さであり、景観計画に適合しない建築物となっています。
これら様々な背景から、広島市は相生通り沿いの市営基町駐車場と財産交換を行い、駐車場跡地一帯の再開発ビルの3~6階へ移転する計画を進めている状況です。
平和公園側から見る原爆ドームと広島商工会議所(2023年4月撮影)
まちづくりの共同ワーキングスペース『port.cloud(ポートクラウド)』
2022年、広島商工会議所の9階に開業したのが、まちづくりに関わる方々向けのワーキングスペースが「port.cloud」です。
施設内は窓側に面したワーキングスペースのほか、会議室やセミナーが行えるスペースを有しています。
東面のデスクからは、広島ゲートパークが一望できました。
【公式】:広島都心のまちづくりワーキングスペース port.cloud
南側は相生通りを挟んで平和公園に面します。
初めて訪れましたが、凄い景色だ…
原爆ドーム、その背後に丹下健三が手がけた平和記念公園を眼下に収めます。
平和公園と合わせて眺めると、この平和記念公園の「平和の軸線」を改めて強く意識しますね。
世界中の人々が特別な思いを持って見に来ている場所を、こうした角度から見ることに、どこか背徳感すら覚えてしまうほどでした。
北側に伸びる平和の軸線。
広島県立体育館(グリーンアリーナ)、基町高層アパートまで、軸線を意識した整備が行われました。
私は原爆ドーム周辺の景観について、個人的には
一帯が今も昔も広島市の中心地であり、市民の経済活動に与える影響を考えると過度な規制は否定的です。
ただ、平和公園から「平和の軸線」を通して見える原爆ドームに対して、商工会議所ビルは明らかに異質な存在に感じます。
丹下健三が提唱した都市計画を尊重するためにも、移転解体は必要であり
広島市が策定した南北軸に絞った景観計画は評価できると考えます。
また、広島商工会議所の解体により、ゲートパークと元安川の親水護岸との回遊性が格段に増し、
広島のアイデンティティである豊かな河川と一体となった賑わいづくりにも大きな影響を与えることが期待されます。
東側をもう一度眺めます。
東側はかなり都市としてのボリュームを感じることが出来ますね。
相生通りの先に、建設中の広島相生通地区第一種市街地再開発事業「KAMIHACHI X」が確認できます。
商工会議所の移転先です。
北東側に見える広島城と相生通り。
相生通りはかつての広島城の南側の外堀に当たります。
こうして、当時の城下町のスケール感や変貌を遂げた現代の街並みを感じることができるのは、非常に価値のあることだと思います。
やはり都心の何処かには、最上階が有料展望台として解放された高層ビルの登場を望みたいものです。
広島商工会議所9階『port.cloud』はイベントとしての公開は終わりましたが、通常通り運営中。
たてものがたりフェスタは、15日、16日も呉市の建築が主な対象となり各種イベントが開かれる予定です。











