「広島飛ばし」回避へ アリーナ有効活用に向けた県・市のビジョン共有を

広島県は、県立総合体育館(広島市中区)「広島グリーンアリーナ」の有効利用に関する第2回の意見交換会を開きました。
広島県が設けている、コンサートなどのスポーツ以外の有料興行の開催を開館日数の10%以内とする制限について、
音楽イベント会社からは、”制限により年間20日程度コンサートの実施ができず、
約60億円の経済効果を逸している”との指摘がなされました。
同社は、この制限が中四国地方を「日本で一番アリーナ公演ができない地区」にしていると訴え、見直しを求めています。

一方で、県高等学校体育連盟からはスポーツ大会の会場確保の難しさが提起され、予約方法の改善を求める声も上がりました。

県はこれらの意見を踏まえ、7月にも新たな利用方針案をまとめる予定です。

 

 

会場が抑えられない広島 年間約60億円の機会損失

【Yahooニュース】:広島グリーンアリーナの有料興行制限で「年60億円の経済効果を逃している」 県の意見交換会で音楽イベント関係者(中国新聞デジタル)

【広島ホームテレビ】:グリーンアリーナ有効利用を検討 アリーナ公演は全国の約2% 広島

 

広島グリーンアリーナ

 

グリーンアリーナを管理する広島県は、体育施設としての本来の役割を顧み、音楽コンサート等の有料興行の開催を開館日数の10%(準備・撤去のための日数は除く)とする方針を設けています。

これに対し音楽プロモーターの夢番地は、”制限により年間20日程度コンサートの実施ができず、約60億円の経済効果を逸している”との分析結果を報告しました。

同社は中四国地方を「日本で一番アリーナ公演ができない地区」と表現しています。

また、プロバスケットボールB1リーグの広島ドラゴンフライズが、2026-27シーズンから5年間、グリーンアリーナを一時的な本拠地として使用することが決定しています。
ドラゴンフライズの「Bリーグ・プレミア」参入の条件を満たすための措置ではありますが、
アリーナの稼働率が高まり、コンサートの枠は一層狭まることが予想されます。

グリーンアリーナの有効利用に関する本意見交換会は、これを受けて開かれているものです。

 

広島県のHPに、会議資料が公開されています。
上記の発言があった第2回の資料は執筆時点(6/18)で公開されていませんが、
第1回資料の利用実績(下記リンク)によると、
令和6年度のコンサートやショーなど有料興行実績は、42日(本番日数)であることが報告されています。
開館日数を360日とすると、10%は36日となるので、目安よりは若干上振れた日数を開催していたようです。

”制限により年間20日程度のコンサートが実施できない”となると、
現状の広島における潜在的なアリーナコンサート(有料興行)の需要は、60日/年程度となるのでしょうか。

【広島県】:広島グリーンアリーナの有効利用に係る意見交換会を開催しました

第1回会議資料

令和6年度広島グリーンアリーナでの大規模イベントの状況(上記資料より)

 

開催実績を見ても分かる通り、この規模のコンサートは周辺の都道府県からも来訪する集客力を持ったアーティストです。
中四国で一番大きな広島がダメなら、岡山県か香川県で代わりの会場を探すことになるのは当然の流れです。
香川県の高松駅前には、グリーンアリーナとほぼ同規模の「あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)」が今年開業しました。
岡山市も7,000~8,000人収容のアリーナを2031年に完成させる計画が進行中です。

広島にとっては非常に危機的な状況です。

【読売新聞オンライン】:岡山の新アリーナ2031年度完成見通し…プロスポーツの拠点、客席数増も検討

 

 

 

更新の検討進む『広島サンプラザ』の存在 県と市でビジョン共有を

広島県はどのような落としどころを考えているのでしょうか。
「広島飛ばし」が世論でこれだけ取り上げられていますし、コロナ後の開催実績の傾向からも、
有料興行は開館日数の10%という制限は若干の緩和を想定しているようにも伺えます。

ドラゴンフライズの一時的な本拠地移転により、さらに枠は狭まりますが、
普通に考えれば、これまで本拠地として使用してきた広島サンプラザに同じ量の空きが出るので、
アマチュアの体育イベントの受け皿はそちらでも確保が可能となります。
県に公開されている記録を読む限り、これについての言及がないのが少し不思議に感じるところ。

広島サンプラザは広島市の公益財団法人が管理する施設ですが、
広島県と市の間で、十分な議論、将来ビジョンの共有は果たしてどの程度できているのでしょうか。

広島サンプラザ(2020年10月撮影)

 

また、展示・イベントとしても使用されるグリーンアリーナですが、
広島市内で同規模のイベントが開催できる広さを持った展示会場はなく、
グリーンアリーナの需要を押し上げる要因の一つとなっています。
以前記事にしたように、展示会場を含むMICE機能の不足も深刻です。

広島市は2024年度中の策定を目指し、「商工センター地区まちづくりビジョン」の検討を進めています。 商工センター地区は昭和57年の埋立竣工以来、市の広域的な流通拠点として発展して

 

広島ドラゴンフライズは、他の団体と協力しグリーンアリーナを本拠地として使用する5年後までを目処に、
広島駅北口への新アリーナ建設を目指しています

同時に広島市は老朽化した広島サンプラザの更新について、検討会を設けてヒジョンを策定。事業化に向けて模索しているところです。

このような「過渡期」に入りつつある状況において、それぞれの更新タイミングを考慮した戦略が必要ではないでしょうか。

  • 広島グリーンアリーナ
    • 新アリーナ完成までの5年間、有料興行の制限を緩和(1万人規模のコンサートは50~60日/年)
    • アマチュアスポーツイベントはサンプラザで代替
  • 新アリーナ(広島駅北口)
    • ドラゴンフライズやサンダース等の本拠地としての機能に加え、1万人規模のコンサートや各種イベントに対応できる多目的アリーナ。
    • グリーンアリーナで行っていた一定数の有料興行を受け持つ。
  • 新サンプラザ(商工センター)
    • 新アリーナ完成後、大規模展示会や国際会議、そして1万~1万2,000人規模の大型コンサートに対応できる多目的施設。

これはあくまでも妄想を多分に含んだ私案ですが、重要なのは県と市がこうした将来像について具体的なビジョンを共有し、実現に向けた体制を構築することです。

(生成AI)

 

「広島飛ばし」という言葉が囁かれて久しいですが、魅力的なアリーナやMICE施設は、国内外から多くの人々を惹きつけ、経済効果を生み出す都市の重要な装置です。
現状は札仙広福どころか、中国・四国ブロックでも水を空けられてしまいかねない状況です。
新アリーナの建設を一つの契機として県と市が連携することで、広島が「選ばれる都市」となることを期待します。

 

広島ドラゴンフライズを含む県内の団体が主体となった、アリーナ建設のオンライン署名のご案内です。
10万筆の署名を目指しており、こちらのプレスリリース(6月16日)時点で、8万筆を超えたことが記載されています。
ご協力をよろしくお願いいたします。

【広島東洋カープ】:マツダ スタジアムでの「夢の新アリーナ応援プロジェクト」署名活動について

【HEBDA 一般社団法人広島イベント事業振興協会】:夢の新アリーナ応援プロジェクト

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