天満屋(岡山市)や三越伊勢丹ホールディングス(東京)などは、
広島市中心部の天満屋八丁堀ビルや広島三越の入る中国新聞文化事業社ビルなどを一体的に建て替える再開発の実現に向けて、事業協力者の募集を行っていることが明らかになりました。
2024年12月には天満屋や三越伊勢丹HDなど十数の団体や個人で構成する準備組合を設立しており、
再開発事業の本格化に向けて前向きな姿勢を見せています。
一体の再開発についてはコロナ前の2019年頃から表面化しており、
天満屋と隣接する中国新聞文化事業社ビルなど周辺施設との一体的な建て替えの模索が続けられていました。
昨年12月に準備組合設立!再開発に向けて動き出す
報道されている内容です。
【山陽新聞デジタル】:広島市中心部で再開発準備 天満屋や三越、協力業者募る
- 再開発の対象エリアは、「天満屋八丁堀ビル」や「広島三越」が含まれる広島市中区胡町5番地区(約1.2ヘクタール)
- 天満屋、三越伊勢丹ホールディングスなど、十数件の法人・個人による再開発準備組合が2023年12月設立
- 老朽化した複数のビルを建て替え、エリアを一体的に整備・更新
- 事業の具体化に向け、実績のある不動産開発事業者やゼネコンなどの協力業者の募集を開始
- 具体的な着工時期、工事区域、完成時期は現時点で未定
▼対象地
天満屋八丁堀ビル(2022年10月撮影)
中国新聞文化事業社ビル(2022年10月撮影)
厳しい環境下で問われる都心再開発の真価
本事業は、2022年には協力企業の一つとして、三井不動産が加わっています。
準備組合を構成する十数の法人・個人というのは基本的に当時から設立されていた検討協議会のメンバーと思われますが、
▼事業参画者(2022年9月27日報道時点)
| 再開発を検討する協議会 | ・東洋観光 ※ ・胡子神社 ・三越伊勢丹ホールディングス ・天満屋 ・中国新聞文化事業社 ・中国新聞社※準大手ゼネコンのフジタ(東京)が東洋観光から所有権移転請求権の仮登記をしており、協議会に加わると見られる。 |
| 協力企業 | ・三井不動産 |
昨今の建設業界は、建材費や人件費の高騰という極めて厳しい環境にあり、他都市では大規模再開発が中断・見直しを余儀なくされる事例も出てきています。
逆風の中で、いかに「時代に即した規模と質」を両立できるかが大きな焦点となります。
先日、広島三越にDAISOがオープンしたことが大きな話題となりました。厳しい経営環境にありながらも、百貨店としての品格を守りつつ、多様化する現代のニーズに応えようとする姿勢には、色々考えさせられるものがあります。
かつて「何でも揃う場所」だった百貨店の役割は郊外の大型ショッピングモールが担う状況にあります。
これからの都心施設には、ブランド店や個性豊かな店舗、そして市民にゆとりをもたらすオープンスペースの創出が求められるのではないでしょうか。
利便性の高い立地を活かし、昨今ニーズのある高機能オフィスや高級ホテルを誘致するなど、多機能な都市拠点としての魅力構築が待望されます。
広島三越(2022年10月撮影)
一方で、避けて通れないのが交通処理の課題です。
対象地は「相生通り」「中央通り」「えびす通り商店街」「流川通り」という、いずれも自動車や歩行者が多く通行する四方の主要道路に囲まれています。
附置義務駐車場の整備において、入庫待ちの車列を発生させないことは絶対条件であり、場合によっては受益者負担の観点から敷地の提供による入庫専用レーンの設置といった踏み込んだ対応も検討すべきでしょう。
もっとも、現代の都市計画が目指すのは「自家用車に頼らないウォーカブルなまちづくり」です。
現状でも「タイムズ三越前パーキング」が広島三越の附置義務を果たす隔地駐車場として機能していることから、こうした既存の周辺駐車場を有効活用する柔軟な計画が望まれます。
「賀茂鶴オアシス」となっている区域を活用して増床対応ができないか、といった視点も必要になるでしょう。
駐車場隣接地の一部で小規模な単独建て替えが進んでいる点は惜しまれます…。
本プロジェクトの対象地は、繁華街八丁堀と歓楽街流川を繋ぐ広島の商業のまさに中心です。
現状は事業協力業者の募集を通じた計画の具体化段階にありますが、天満屋八丁堀ビルの耐震性能不足という喫緊の課題もあります。
広島市中心部の活性化を象徴する新たなランドマークとなることに期待して、今後も注目しておきたいです。


