広島市東部地区連続立体交差事業 2022.05(Vol.2)<向洋駅周辺>

広島県と市、安芸郡府中町・海田町は、JR西日本とともに、広島市東部地区連続立体交差事業を進めています。
JR山陽本線の線路を高架化することで地区の分断を解消するとともに、
踏切の解消による安全性の向上、交通混雑の解消を図ります。

事業費や地元との折り合いの面で事業採択から様々な紆余曲折がありましたが、
最終的に向洋駅および海田市駅周辺の約5kmを高架化し、計16の踏切を除去する計画で関係自治体が合意。

2020年10月から一部工区で準備工事に着手しました。

向洋駅周辺のⅠ期工事は2031年春に完成、
海田市駅周辺のⅡ期工事は2036年度の完成を見込みます。

 

幾度となく関係自治体で議論が交わされ、計画の練り直しが行われてきたこの事業。
ようやくひとつの案で落ち着き、現地での準備工事も始まったとのことなので、
久々に現地の状況を見てきました。

 

前回訪れた時の状況です。

JR向洋駅から海田市駅までの線路を高架化するとした「広島市東部地区連続立体交差事業」について、 広島県は両駅の周辺のみを高架化する見直し案を示しました。 2013年8月に提示さ

 

 

事業概要

【広島市公式ホームページ】:鉄道と道路の立体交差化の推進…JR山陽本線・呉線(広島市東部地区連続立体交差事業)

イメージ(上記広島市資料より)

 

事業名 広島市東部地区連続立体交差事業
(「見直し修正案」 H30.2公表)
主な事業内容 〔鉄道高架区間〕
Ⅰ期区間:向洋駅周辺~的場川西踏切付近 約2km
Ⅱ期区間:的場川西踏切付近~海田市駅周辺 約3km〔関連道路〕
東西幹線道路((都)青崎中店線など)を整備
的場川西踏切⇒閉鎖⇒(都)船越中央線(平面道路)を整備
概ね80m広島側に歩行者横断道を整備
概算事業費 約915億円(市域:約370億円、県域:約545億円)
工事期間 17年間程度
(Ⅰ期区間:10年間程度、Ⅱ期区間:10年間程度)
※Ⅰ期区間工事着手後、概ね7年程度を目途にⅡ期区間工事に着手
年間投資額 約48億円(市域:約20億円、県域:約28億円)
費用便益比 1.1程度
除去踏切 JR山陽本線:12箇所
JR呉線  :4箇所
関連事業 〔都市計画道路〕
7路線〔土地区画整理事業〕
向洋駅周辺土地区画整理事業  :約12.2ヘクタール
向洋駅周辺青崎土地区画整理事業:約6.1ヘクタール
海田市駅南口土地区画整理事業 :約2.0ヘクタール

 

見直し修正案 全体スケジュール
(上記広島市資料より) (広島市HP『鉄道工事(先行工区)の住民説明会資料(南区青崎・堀越地区) [PDFファイル/7.78MB]』より)

 

 

仮線路・仮ホームの整備が進むJR向洋駅

全体スケジュールに記載されているとおり、2020年から準備工事が始まりました。
これまでに用地買収した土地を用いて現在の線路の北側に仮線路を設け、順次移設していく段階です。
そうして生まれた南側に高架橋を建設し、今度は順次高架橋に線路を移設しながら
最終的に鉄道高架橋と都市計画道路を整備する計画です。

(広島市HP『鉄道工事(先行工区)の住民説明会資料(南区青崎・堀越地区) [PDFファイル/7.78MB]』より、管理人が一部抽出し集約)

 

なお、完成時の向洋駅は下記のような2面4線の構造となります。

(広島市HP『鉄道工事(先行工区)の住民説明会資料(南区青崎・堀越地区) [PDFファイル/7.78MB]』より)

 

現在の向洋駅です。

 

施工ステップのイラストとは向きが逆になりますが、向かって左側(北側)の仮線路用地に既に線路の敷設が始まっているのを確認しました!
旅客列車(山陽線・呉線)が使用する、複々線の最も外側になる線路です。

 

駅にはこれに関連した駅舎変更のお知らせが。

新しく跨線橋を設けるとともに、北口駅舎の位置が変更になりました。

 

北口仮駅舎と跨線橋です。

 

 

高架駅になった時には撤去されるものなので比較的簡素なつくりとなっています。
それでも10年単位で使用するものなので、仮設感はあまり感じません。

 

驚いたのがこちら。

 

「仮」とは思えないほど立派なホームが姿を表しています。特に、近年の駅がどんどん簡素になっていることもあり、新駅と紹介しても違和感がないほど。

かつての北口駅舎が2枚目の画像の奥に確認できるでしょうか。
仮線路用地となるため、今回の仮駅舎への変更となりました。

 

北口仮駅舎から現在の上り・海田市方面のホームを。

現状はこの通り通路ですが、整備中の仮ホームが供用開始する頃には閉鎖され、やがて4線分の仮線路がこの場所を横切ることになります。

ちなみに、現在画像で写っている上りホームは、仮線への完全移行が完了した後、上り・広島方面のホームとして使用されます。

 

改札の外から見た仮ホーム。

 

 

区画整理も進行する向洋駅周辺

向洋駅のすぐ西側にある青崎第10踏切。

 

 

駅の前後の区間で仮線路の敷設が進みます。踏切も仮線路に対応したものに改良されました。
現在の線路と位置に完成時の高架橋が姿を表すことになります。

 

なおこちらの踏切は、仮線路も合わせるとかなりの本数の線路を跨ぐことになります。
線路を斜めに横断していましたが、あまりにも距離が伸びるためか、直角に交差するように改良されました。

もちろん、この踏切も除去対象です。

 

向洋駅周辺では、「向洋駅周辺土地区画整理事業」(府中町)、「向洋駅周辺青崎土地区画整理事業」(広島市)が進みます。

 

一部区画では完成の姿になっているところもあり、新築の住宅やビルも見られました。

 

マツダ本社の上空を横断し国道2号に至る仁保橋の延長に街路が整備されます。

 

 

そのまま高架橋の下を抜け、先の既存の街路につながる予定です。

 

向洋駅北口側に移動しました。

 

仮駅舎の前には仮設のロータリーが整備されています。
ここに接する道路や目の前の街区は区画整理済みのエリアとなっており、
新しいマンションや医療ビルが並びます。

完成時の北口駅前広場は、南口より2倍ほど広い約4,700平方メートルの広場が整備されます。

 

海田市方面にかけて、仮線路整備のため仮囲いが続きます。

 

 

向洋駅東側の仮線路整備状況

ここから東へ、海田市駅方面に向けて仮線路の整備状況をギャラリー的に紹介していきます。

■青崎第6踏切

 

 

■青崎第3踏切

 

 

 

 

■畑宮踏切

 

 

■堀越第1踏切

 

この先の的場川西踏切までのⅠ期工事区間が2037年春の完成予定となっています。

 

 

本事業に対するブログ主の所感

広島~海田市間は山陽本線と呉線の2路線が使用するほか、貨物列車も通ることから列車の往来頻度が高く、踏切の遮断割合も必然的に高くなります。
同じ条件である広島より西側は、可部線が並走する横川までJRが盛土上を走る構造となっており、基本的に車道とは立体交差していることから、
東側の当区間も立体化を行い、交通円滑化や安全性の向上を図る必要性は十分にあると理解しています。

ただ、平成11年の都市計画決定から20年以上。あまりにも時間が経ちすぎました。
令和になりようやく着工したは良いものの、全て完成するのはまだあと15年必要です。

都市は既に成熟の段階を迎え、都市圏の人口は今後減少の加速が危惧されています。
資材や人件費は高くなるばかりですし、大きな便益が期待できるうちに実現できないのは非常に残念です。

規模縮小した”見直し案”が地元に否定されたことで再度提示された”見直し修正案”(=現在進んでいる最終案)は、
可能な限り高架を維持したを打ち出したことで事業費は増加。
年間投資額を抑えるよう考慮した結果、費用便益比(B/C)が1.0を下回る事態となることから、
Ⅱ期に分けて先行部分を暫定開業させることでB/Cは、なんとか1.1を維持しました。(あくまで現在の事業費試算において)

ギリギリです。

 

とはいえ、既に自治体と地元、そして自治体の代表者を選んだ有権者でのコンセンサスが得られて、実際に事業が進みだしているのですから、もはや賛成も反対もありません。
計画に理解を示し、事業に協力してこられた地元の方々や関係者の方々の努力もあります。

先程書いたとおり、連立事業そのものには確実な価値はありますから、
トラブルなく確実に事業を遂行し、2036年度の全体完成を見守りたいと思います。

 

guest
16 Comments
古い順
新しい順 高評価順
Inline Feedbacks
View all comments