向洋・海田市両駅周辺を高架化、16年着工へ 現地に行ってきました

JR向洋駅から海田市駅までの線路を高架化するとした「広島市東部地区連続立体交差事業」について、
広島県は両駅の周辺のみを高架化する見直し案を示しました。
2013年8月に提示された向洋駅のみ高架化する縮小案に対し大きく反発していた海田町は、
今回の見直し案については了承したため早ければ2016年度にも工事に着手出来る見通しです。

【中国新聞】:事業費を圧縮 折衷案 (2015年6月11日朝刊)

  • 向洋駅と海田市駅周辺の2区間を部分高架とする案を提示。
  • 2013年8月に打ち出された”見直し案”(海田町域の高架を見送り)に、海田町が強く反発。今回の案は事業費圧縮と海田町が求めるまちづくりを両立するための折衷案。
  • 事業期間は1年あたりの事業費を減らすため、5年前後延長。

(記事より要約)

 

当ブログの過去の記事。
海田市駅は高架化せず…東部連続立体交差”見直し案”(2013年12月)
広島市東部地区 JR高架事業維持を再検討(2014年12月)

今回(2015年6月)発表された見直し案。
広島県/ 広島市東部地区連続立体交差事業】:見直しの方向性について (PDFファイル)(3.4MB)

①今回の見直し案のイメージ

201506kouka-gaiyou1.jpg
(上記広島県資料より)

②2013年8月に提示された縮小案

201506kouka-shukushou.jpg
(上記広島県資料より)

③2002年に作成された現計画案のイメージ

201506kouka-tousho.jpg
(上記広島県資料より)

○各案の概要比較
201506kouka-hikaku.jpg
(上記広島県資料より)

概要はこの通りになります。
今回の見直し案は向洋・海田市駅間一帯全てを高架化するのではなく、高架駅を出て一旦地上に降りて再びすぐ高架駅に至るという変則的な計画になっています。
海田市駅より東側(上り)は山陽線及び呉線においても高架延長が当初より短くなっています。
当初計画では山陽線が2階、呉線が3階に乗り入れる3階建ての構造だった海田市駅は2階建てに変更となりました。
呉線呉方面と山陽線広島方面の交差は、現在立体交差させている施設の活用を検討するとのこと。
また高架高さはこれまで大型車の通行に必要とされる4.7mが確保されていましたが、
必ずしも通行が必要でない区間について少なくとも緊急車両が通行できる高さ3.2mとすることで事業費の大幅な削減を図ったそうです。

駅間を高架にしない連続立体交差事業ということで中途半端な感じも否めませんが、これでようやく事業が進みそうなので良しとしたいと思います。
踏切の除去数は当初案の20ヶ所には及ばない14ヶ所ですが、縮小案の9ヶ所より多くの踏切を削減できます。
“踏切一つを除去するのにいくら掛かるか”という視点で見てみると、当初案が52.5億円(近年の事業費単価で計算)、見直し案が55億円、縮小案が70億円となります。
当初案に近い水準ですし、縮小案の単価が非常に高いことが際立ちます。

参考までに、広島市としての負担額は約280億円なのでアストラムラインの西風新都線延伸(289億円)とほぼ同じ規模となります。
以前から書いている通り、連続立体交差事業は府中・海田町民だけでなく、JR沿線に住む利用者(安芸中野~瀬野は広島市)や、
逆に他都市から広島市に通勤される方にも恩恵がある事業であるため、
時間はかかっても行うべきだと考えています。

ここからは今年3月と6月に撮影した現地の様子を紹介していこうと思います。
まず向洋駅です。

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南口の駅舎です。
向洋駅周辺では府中町による「向洋駅周辺土地区画整理事業」が行われています。
【府中町】:広島圏都市計画事業向洋駅周辺土地区画整理事業の概要

南口は現状ではマツダ本社が面する県道164号線「大州青崎線」とかなり細い道でしか繋がっていませんが、
広い道路と公園も整備され街並みを一新します。

現状の改札口です。

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マツダ本社・本社工場の最寄り駅というだけあってこの改札レーンの多さは特徴的ですよね。

ついでにマツダ本社ビル。

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SKYACTIV技術と魂動デザインで絶好調のマツダです。

北口は同じ区画整理で南口より規模の大きなロータリーができます。

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元々は南口にしか改札がない地上駅でしたが、地元の要望を受け2011年にこのような仮設の北口改札が新設されました。
仮のロータリーも一応あります。
西側には将来の北口広場となる区画が広がっていました。

ここから海田市駅のある、向洋駅東側の様子を。

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この付近から海田市駅を過ぎるまで、線路の北側には平行する東西幹線道路も整備されます。
それらしい土地も確保されていました。
南口に比べ区画整理がかなり進んでおり、駅の北東は広大な空き地になっています。

4~500m進むと5m程上がった造成地がありますが、ここも区画整理の範囲です。

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撮影地からまだ1km弱高架が続いていきます。
当初予定では当然海田市駅まで高架でつながる予定でしたが、今回の見直し案で「的場川西踏切」まで除去して地上へ降り再び海田市駅で高架に戻る計画になります。

海田市駅に移動しました。

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海田市駅は既に橋上駅になっています。
駅ビルを持たず屋外の自由通路がある構造は呉線の坂駅に似ています。

駅の西側へ。

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立体交差事業を見越して、前後の道路が2+1車線確保されている、広島市の船越踏切の周辺です。

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上の画像が踏切の北側、下の画像が南側になります。
南側の画像で右側に写る大きな建物が広島市の安芸区民文化センターです。さっきまで安芸郡(府中町・海田町)にいたというのに不思議な感覚に陥ります。
今回の見直し案で、この道路が平面ではなく線路の下をくぐるアンダーパスに変更されました。
と言っても駅からかなり近いので、JR線の高架⇔地上の遷移区間の下を通る、そこまで深さのないアンダーパスになると思います。

こちらは船越踏切のさらに西側にある引地踏切。

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この通り、呉線上り(呉方面)と山陽本線の立体交差のど真ん中にある踏切です。
見直し案においてもこの踏切は除去されずに残る事になっています。
ここに同じく呉線の交差地点を設けることになっていますが、最終的にどのような構造になるのでしょうか。

海田市駅に戻りました。

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南東の方角、呉線が伸びる方向を見ています。
海田市駅を起点とする呉線は当初1.7kmが高架化される予定でしたが、0.9kmに縮小されました。「瀬野川東踏切」までが除去される対象になります。
建設が始まった国道2号線東広島バイパスの「海田高架橋」がつながる「海田西インター」では既に地上に降りている事になります。

こちらは、海田市駅から山陽線を東に辿った「中店第1踏切」から東側を撮影した画像です。

201506toubu_kouka-7.jpg

見直し案により踏切が除去されるのはここまでになりました。当初計画ではこの先約400mまで高架が続き4ヶ所の踏切が除去される予定でした。
画像で左に見える白い建物が海田町庁舎。
高架線路の範囲では無くなったとはいえ、計画される東西幹線道路とは重なります。
早期に庁舎の移転を進まなければなりません。

おまけです。

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7月4日に運用が拡大されこの227系に遭遇する割合が高くなりましたね。