商工センターの将来に向けて 約6,000平米の展示場などMICE新設を検討中

広島市は2024年度中の策定を目指し、「商工センター地区まちづくりビジョン」の検討を進めています。

商工センター地区は昭和57年の埋立竣工以来、市の広域的な流通拠点として発展してきましたが、社会情勢の変化や施設の老朽化が進み、地域全体の競争力強化が課題となっていました。

令和4年7月には、地域の関係者が「商工センター地区街づくり提案」を市に提出されたことを受け、学識経験者や地域代表、行政などで構成される「商工センター地区まちづくりビジョン検討会」を設置。
提案内容を基に課題の整理やまちづくりの方向性について議論を重ねており、
老朽化した広島サンプラザに代わる新たなMICE施設を整備することなどが盛り込まれています。

ビジョン策定の背景と概要

【広島市】:商工センター地区まちづくりビジョン検討会

▼ビジョンの基本コンセプト(三本の柱)

基本コンセプト 概要
MICE施設の新設 展示室や会議室を備えた新たなMICE施設を整備し、商業・市場・流通・居住機能と連携させることで、地区全体の魅力を向上させる。
交通機能の強化 陸と海の玄関口として、駅や港の交通機能を強化。循環バスやパーソナルモビリティの導入、ペデストリアンデッキの延長などで回遊性を向上させる。
にぎわいの創出 港周辺や公共空間を活用したイベント開催、飲食・物販施設の誘致などで、年間を通じて市民や観光客が訪れるにぎわいを創出する。

 

MICE施設の新設 交通機能の強化 にぎわいの創出

 

MICE施設(左)、ホテル等のイメージ

 

地元から提案された街づくり提案はこちら。

 

 

遅れ目立つ広島 大型展示場など各施設充実に期待

施設の老朽化への対応と地元からの提案を踏まえながら、比較的スピード感を持ってビジョンを定めようとしている動きは評価したいです。
市長の思惑とも合致しているのだと思います。

ビジョンの最初に挙げられている「MICE施設の新設」。
市は何十年も前から南区出島地区などに「メセコン」(当時はそう呼んでいましたね)の整備を検討してきましたが、実現には至っていません。

MICEの「E:Exhibition」:企業や団体が主催する展示会や見本市については
広島市でそれが開催できる大型の展示場の不足は特に顕著です。

地方中枢都市の札仙広福に絞り、1展示会場の面積が大きい順に上位3位まで整理してみました。

展示会場(体育館除く)

▼札幌市

  1. 大和ハウス プレミストドーム(札幌ドーム) :14,460㎡
    ※プロ野球日本ハムファイターズが本拠地を移ったため掲載
  2. アクセスサッポロ(札幌流通総合会館) 大展示場 :5,000㎡
  3. 札幌コンベンションセンター 大ホール :2,607㎡

▼仙台市

  1. 夢メッセみやぎ(みやぎ産業交流センター) 展示ホール :7,500㎡
  2. 仙台国際センター 展示棟 :3,000㎡
  3. 夢メッセみやぎ(みやぎ産業交流センター) 西館展示場 :1,295㎡

▼広島市

  1. 広島市中小企業会館 総合展示館 :2,640㎡
  2. 広島県立広島産業会館 西展示館 :2,565㎡
  3. 広島県立広島産業会館 東展示館 :2,558㎡

※参考(体育館)
グリーンアリーナ(広島県立総合体育館) 大アリーナ :3,500㎡

▼福岡市

  1. マリンメッセ福岡 A館 :9,100㎡
  2. 福岡国際センター :5,052㎡
  3. マリンメッセ福岡 B館 :5,000㎡

▼その他参考

  • アイテムえひめ(愛媛国際貿易センター) 大展示場 :4,500㎡
  • 福山ビッグ・ローズ(広島県立ふくやま産業交流館) 大ホール :4,476㎡
  • サンメッセ香川 大展示場 :4,015㎡
  • コンベックス岡山 :3,797㎡

※出典
【日本政府観光局(JNTO)】:都市・施設を探す

【札幌市】:札幌コンベンション施設ガイド
【夢メッセみやぎ】:施設一覧ページ
【広島県立広島産業会館】:フロアマップ

札仙広福はおろか、中国・四国ブロックの都市と比べてもその不足が目立ちます。
”頼み”のグリーンアリーナも、「スポーツ振興以外の有料興行は年間10%(35日程度)」
という県の方針より、コンサートやイベント需要が集中し
会場が抑えづらい状況となっています。(結果として「広島飛ばし」)
大型の展示会場や多目的ホール・アリーナ、ホテルの整備は急務と考えます。

以上を踏まえた上で、今回のビジョンで検討されているのは、展示会場、ホテル、会議室など。
素案に記載された展示会場の概ねの規模(面積)は、委員会の需要調査に基づき
約6,000㎡と想定されています。

将来的に需要を踏まえながら拡張することも視野に入れているようです。

市中小企業会館でイベントを行った主催者を基本に、
全国規模及び市内で展示会を主催している事業者なども対象にヒアリングした結果に基づいて試算されたものとこのと。

現実的な話として、大きい箱ができれば南区の県立産業会館の需要が転換してくることも大いに考えられるので、既存の利用者以外の声も重点的に聞くべきだと思います。
産業会館との棲み分け、老朽化した施設の将来も含めて、県と長期的な視点での話ができているのか気になります。

 

なお、地元からの提案には”ドラゴンフライズの本拠地となるアリーナ”がはっきりと明記されていましたが、
ビジョンでは第3段階として”広島サンプラザ(ホール棟・サブホール)の代替施設を整備する”という記載に留められています。

ドラゴンフライズ(を含む団体)は広島駅北口への多目的アリーナ建設を本格的に進めようとしているので、委員会としては様子見といったところでしょう。

会議や展示会による来訪客を受け入れるにあたり、宿泊施設の整備も重要なポイント。
広島市は宿泊施設不足も課題です。

【日本政府観光局(JNTO)】:日本コンベンション都市ガイド

総客室数
・札幌市:27,848室
・仙台市:35,561室
広島市:11,490室
・福岡市:32,386室
(日本政府観光局(JNTO)『日本コンベンション都市ガイド(2021年2月)』に基づく)

同じ地方中枢都市と比べてもここまでの差をつけられています。ここまでとは…。
21年の資料なので、この時点よりは増えているかと思います。
ドミナント戦略で出店攻勢を強めるアパの説得力が増します。

太平洋ベルトに位置しブロックの拠点である大阪や福岡に2時間もかからず移動できるため、宿泊しなくても観光できるのは良くも悪くも利便性の高い地域ならではです。。

観光産業は広島の地域経済にとって大きな柱の1つです。G7の開催等国内外からの注目は今改めて高まりつつあります。
宿泊施設の整備ももうさらに加速させていかなければなりません。

中央卸売市場を含めた一体的な賑わいにも期待

今回のビジョンで非常に興味深いのは、老朽化したサンプラザの更新を契機に、
建て替え再整備を予定している広島中央卸売市場や商業施設「LECT」などをデッキやパーソナルモビリティで結びつけ、一体的な回遊を図ろうとしている点です。

観光・商業・地域産業一体的に結びつけ域内の回遊性を高めることで、他県や国外から広島を訪れる人々の滞在価値も大幅に向上させる可能性があります。

広島中央卸売市場は2032年度までに建て替えオープンを計画しており、
商工センター地区と一体的な整備を行っていくにはちょうど良い時期です。

起点となるJR新井口駅と広電商工センター入口駅のバリアフリー化は必須です。

【広島市】:​広島市中央卸売市場新中央市場整備事業​ 入札公告及び入札説明書等の公表について

イメージパース
(広島市『施設イメージパース [PDFファイル/623KB]』(https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/217294.pdf)より)

(資料2 商工センター地区街づくり提案 [PDFファイル/9.58MB](https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/219196.pdf)より)

広島市は今後、市民意見を聞くなどし3月にも素案が取れた「商工センター地区まちづくりビジョン」を策定する予定です。

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