広島市とJR西日本、広島電鉄の3者は、JR広島駅の南口広場を再整備する計画を進めています。
駅前広場のレイアウトを見直し周辺に分散したバス乗降場を集約し、路面電車を駅前通りを経由するルート(駅前大橋線)に変更の上、広島駅の2階に乗り入れ、自由通路からの乗り換え利便性向上を図ります。
これに伴いJR西日本は現在の駅ビルを建て替える予定です。
駅前大橋線整備で新たに軌道を敷設することになるため、
広島市では環境影響評価(環境アセスメント)が実施されています。
このアセスに関わる資料が広島市HPで公開されていることをTwitterで教えていただきました。
広島のがんもさん、うましさんありがとうございます。
かなり興味深い内容だったのでご紹介いたします。
【広島市】:(仮称)駅前大橋線軌道建設事業
ここが公開されているページです。
現在は”こんな計画で評価を行います”という「環境影響評価実施計画書」と、
その次の段階となる”評価のために準備すべき点”をまとめた「環境影響評価準備書」まで作成されています。
これまでほとんど情報が出ていないものと思っていましたが、これはかなり興味深い資料でした!
「環境影響評価準備書」をもとに、気になった箇所を紹介していきます。
路線の構造及び騒音対策
「構造」とひとまとめにさせていただきましたが、計画範囲全体の平面図と断面図が載っています。
2階に乗り入れるため駅前大橋から高架に移っていきますが、
・駅前大橋部分と駅前交差点及び広島駅:鋼製桁に樹脂固定軌道を敷設
・駅前大橋北詰から駅前交差点までの区間:軽量盛土にバラスト軌道を敷設
・高架部分についてはレールレベルから約2mの遮音壁を設置
となるようです。
駅前大橋北詰から広島駅までの区間は、地下広場が埋まっています。
地下構造物への影響、コストなど総合的に判断してこのようになったようです。
軽量盛土は広島高速3号線の観音地区の水路埋め戻しの際、軽量盛土として発泡スチロールが採用された事例がありますね。
そして、やはり鉄軌道の乗り物が走るようになるということで、騒音と振動の対策については念入りに行われるようです。
軌道の方式については、盛土の区間は鉄道のようなバラスト軌道、桁橋の部分にはレールを樹脂で固定し振動を防ぐ「樹脂固定軌道(インファンド工法)」が用いられるとのこと。広島電鉄では宇品線の元宇品口~広島港間で実績があります。
同時に、遮音壁も設置されるようですね。レールから2mということは車体の半分以上が隠れる高さです。
路面電車が2階に乗り入れるというシンボル的な空間になるのに、ほとんど遮音壁に隠れてしまうのは少し複雑ですね。
広島高速のように視界を遮らないクリアタイプの遮音壁が設置されることに期待したいです。
区間の横断図も掲載されています。
この計画の当初から大きなポイントとなっていた駅前大橋から広島駅までの上り勾配は、「約4%」と記載されています。
やはり駅前大橋の途中までは、現在の橋そのものの勾配となるようですが、実際にどのような構造になるのでしょうか。ここだけ床版取っ払って橋脚と電車専用橋を新たに架設?
広電広島駅の構造
「ここまで出ているのか」と驚きました。
かつてこのブログでも広島駅の構造を巡って、
『降車専用ホームがある現状と比較してそうしたスペースが確保できない将来形では、広島駅に到着する電車と輻輳が発生して無駄な時間を消費する』
『方面が同じ1・2・6号を別々のホームで乗車させるようにするのか』
といったことについて検討し皆様からご意見を伺ったこともありました。
切り欠きの3番ホームがある事以外はオーソドックスな4線の頭端式ホームとなっています。
どのように運用するのか非常に気がかりなところですね。
1番ホームと5番ホームを降車専用、
2番ホームと4番ホームを最も利用が多い紙屋町・八丁堀及び宮島口方面の乗車専用とすることでなんとなく分離はできますが、それであの多頻度運行の電車をさばけるかどうか…。
以前から私が主張しているように、運行系統の大幅削減しその分効力のある優先信号を実行することで速達性を向上させるのが、こうした駅の入れ替え処理の面でも有効ではないでしょうか。
↓の水色文字部分です。
広電でも、この駅前大橋線2階乗り入れ及び環状線運行に伴う系統見直しを行うことが報じられているので、
実際にどのようになるか注目したいです。
将来を見据えて、電停のホーム長も現状の5連接以上の長大編成に対応できる構造になっていると素晴らしいのですが、これではまだ判断できませんね。
整備による景観の変化
環境影響評価法に基づき、駅前大橋線整備に伴う景観の変化について、複数の箇所でフォトモンタージュを用いて将来の景観を再現しています。
(あくまで基礎的な資料に基づくイメージなので、実際の細かな意匠については変更されていくと思われます。)
目を引くのはやはり駅前大橋付近の路面電車高架橋の存在です。
盛土やRCの橋脚によって駅前大橋から駅前交差点にかけて、まるで別の場所のように変わリますね。これは仕方ありません。
以前海外にはこのような事例もあることをご紹介しましたが、夢で終わってしまいそうです。
広電は駅前大橋線の架線レス化を検討しています。
架線柱が無くなればそれだけでまずまずスッキリしそうですし、先程書いたように遮音壁はクリアタイプを使うなど、色々検討してもらいたいですね。
資料では、眺望の変化について、
”保全措置として「改変面積の最小化」、「景観との調和を図った施設デザインの選定」を行い、周辺景観への影響を低減”することとしています。
駅ビルも建て替えによって、現在の広場の中間まで張り出してきます。
地上においては否が応でも圧迫感が増すのは避けられません。
しかしながら、今回整備した南北自由通路と、この南口広場再整備で計画されるペデストリアンデッキにより
南口においても歩行者のメインの動線は2階に移ることになります。
そうであるなら思い切って電停脇にもちょっとしたイベントが開けるほどの滞留空間(人工地盤)を整備して、
1階はバスとマイカーの空間、2階は歩行者(+路面電車)が主役となり賑わいが生まれる空間を目指すよう切り替えるべきです。大きな屋根で濡れないようにすればベストですね。
ここでの賑わいが駅前A,B,Cブロック、そして東郵便局再開発に波及すれば、理想的な駅前になります。
ここまで情報が明らかになりました。
春頃には駅ビルの整備イメージも公開されてきます。
駅ナカが一段落した今日、これからはいよいよ本丸の駅ビルと南口の動向に大いに注目したいですね。
広島市、JR、広電の3者は、2024年度の完成を目指しています。