広島バス、広島交通、JRバス中国の3社は、交通系ICカード「PASPY(パスピー)」の後継に位置付ける、「ICOCA(イコカ)」 の概要を明らかにしました。
これまでのパスピーと同様に、利用金額から最大10%を割り引くサービスや、バス車内での現金チャージにも対応します。
現在のパスピーは、更新費用が高額であることを理由に来年3月にサービスを終了します。
広島電鉄らが中心となって開発した、「MOBIRY DAYS(もビリーデイズ)」に
上記3社も対応する予定ですが、現時点でその時期は未定です。
前回の記事です。
”バスICOCA”の概要 3社の違いなど
3社のプレスリリースです。
【広島バス】:【12/25更新】交通系ICカードICOCA導入について
【広島交通】:広島交通全路線で導入する交通系ICカード「ICOCA」でのサービスについて
【JRバス中国】:広島県内路線バスに導入する交通系IC カード「ICOCA」でのサービスについて
ICOCA を乗車券および定期券として採用する点は同じですが、その他の点で違いもあるので表にまとめました。
▼3社が導入するICカード「ICOCA(イコカ)」の概要
項目 | 広島バス | 広島交通 | JRバス中国 |
---|---|---|---|
サービス開始日 | 2025年3月30日(日) | ||
導入範囲 | 各社の運行する路線バス全線 | ||
主なサービス内容 | ◆これまでのPASPYと同水準のサービス ・最大10%の運賃割引(10円単位) ・60分以内の乗継(広島バス、広島交通、JRバス中国)で20円割引(小児・障がい者は10円) ・療育手帳、身体障害者手帳、保健福祉手帳所有者向け割引 ・車内現金チャージ◆新たに可能になるサービス ・JR路線やアストラムラインの区間を含む定期券の発行 ・オンラインでの定期券購入 |
||
全国交通系ICカードの相互利用 | Suica等10カードが利用可能 (割引があるのはICOCAのみ) |
||
定期券 | 金額式定期券 | 区間式定期券 | |
WESTERポイントサービス | なし | 1か月に3,000円を超えて利用した金額の5%付与 |
広島バスのみ、金額式定期券が採用されることとなりました。
また、JRバス中国のみ同グループが展開するWESTERポイントが貯まります。
合わせて、定期券を持つ人の家族が土日祝日に100円で全事業者のバスを利用できる環境定期券「のれバスて~き」の対応はなくなりました。
モビリーデイズには実装されているので、3社がモビリーデイズに対応した後に再び組み入れられるものと思われます。
【広島県バス協会】:【重要】のれバスて~き(環境定期券制度)終了について
【広島電鉄】:のれバスて~き(環境定期券制度)
モビリーデイズでも適用予定『金額式定期券』
上記3社では広島バスのみ対応することとなった金額式定期券。
モビリーデイズの定期券も、2025年2月1日から金額式定期券となる予定です。
決められた区間のみを利用できる従来の定期券と異なり、
利用する区間の運賃の範囲であれば、路線や区間を問わず乗車できる定期券の制度です。
定期券の範囲を超える(購入した金額範囲を超える)区間の乗車については、
従来制度と同様に差額がチャージから引き去られます。
路線・区間を問わず、購入した金額分の範囲であればどこでも乗車できるので、
休日など行動範囲が広がります。
公共交通を利用した行動を促すことができる先進的な制度です。
感想とモビリーデイズの続報 「タッチ決済」は望み薄
使用感は限りなくパスピーに近いものが実現できそうです。
というより、ほぼ同水準のサービスでJRにも乗れて、JR・バス統合の定期券も発行できて、
コンビニでお茶も買えるのですから、パスピーの上位互換とも言える内容です。
イコカなど10カードに採用される「サイバネ規格」に係るハード・ソフトの更新費が莫大となるのが、従来規格の課題でした。
3社がどのような手法をとったのかは分かりませんが、それを踏まえても自社路線全線への導入(しかも割引付き)できると判断できるものになっているのですから、称賛に値しますね。
以前も書いた通り、そのバス会社しか使わない住環境であれば、
もしくは広電を使う必要がない住環境であれば、モビリーデイズを利用する理由がないです。
ただ、本来はそのような”バス会社”を意識することなく公共交通を利用できることを目指したのが、
共同運営システム「バス協調・共創プラットフォームひろしま」であったはずです。
モビリーデイズを生み出した広電もイコカは使用できるようになる予定ですが、割引はありません。
それだけでなく、事業者を限定しない共通定期券の枠組みや途中で触れた環境定期券の枠組みにおいても、
モビリーデイズを使っているかイコカを使っているかで、乗るバスを選ばなければならない状況になる可能性もあります。
やはり、何度考えてもデメリットがメリットを上回る…。
軸となるシステムをイコカ、乗り放題チケットやデジタルシティパス、MaaS的な他サービスとの連携時などにアカウントベース(ABT)と棲み分けを図るべきだったと思います。
実際に、広島バス、広島交通、JRバス中国の3社は、実際にそうした運用が多数となりそうですし。
最後にモビリーデイズの続報を。
少し前になりますが、広電の仮井社長のインタビューが掲載されました。
個人的にいち早く導入すべきと推しているクレジットカードのタッチ決済については、
”規格が異なるため”、導入には慎重な姿勢を見せています。
必要性についてはこれまでに申し上げた通り。
万博に向けて関西圏の私鉄・地下鉄では一気に導入が進みました。首都圏やその他各地でも対応事例が拡大中です。
開発しながらそうした全国の動きは視界に入っていなかったのか。。
【中国新聞デジタル】:モビリーデイズの今後は 広島電鉄の仮井社長に聞く「分かりやすいサービスに」