昨日更新した記事の続きです。
広電のLRT化に向けて 制度の壁 【最高速度40km/h】
現在、国内を走る路面電車は軌道法に基づいた軌道運転規則によって、運転速度は40km/h以下、一つの編成長が30m以内という制限を受けています。
しかし同規則の中で、“特別の事由がある場合には、国土交通大臣の許可を受けられればこの規則によらない”
ことも示しています。
昨日、電停の統廃合や優先信号制御の拡大の上、グリーンムーバークラスの車両に限り速度制限は緩和されていくべきと書きました。
今日は編成長について。
連結した車両の全長を30m以下としている規則の根拠として、昨日記事の中で紹介した答弁書の中で政府はこのように説明しています。
○連結車両の長さの制限は、併用軌道が道路上に敷設され、他の道路交通に影響を及ぼすことから、交差点等において他の道路交通の進路に支障を来す時間が著しく長くなること等がないよう定められたものである。
○路面電車が他の道路交通に影響を及ぼすことを考慮すれば、道路交通の円滑化を図ること等のために適切なものであると認識している。
正直これはごもっともだと思います(^_^;)
市内線の電停の中には現行の30m級5連接LRVである5000形、5100形が既に容量ギリギリとなっている電停があり、
これ以上伸ばすと横断歩道や交差点に車両の後部が干渉してしまいます。
それでも広島電鉄の輸送力不足は大きな課題です。
先日取り上げた市のLRT計画案によるとラッシュ時では宮島線で150%、市内線で120~130%の混雑率だそうです。(1.現状及び課題、2・整備の目的及び基 本的方向)
個人的には特に宮島線でいつも混雑しているように感じます。休日はほぼ座れないですし、降り口が前後2ヶ所しかないのでそこまで移動するのも大変です。
一つの解決策として海外のトラムのように連結運転をするという方法があります。
パリの例です。
5連接の車両を2編成連結しています。60m以上ありますね。
宮島線内は鉄道事業ですので30mという全長の制限はありません。
宮島口~広電西広島まで連結運転を行い西広島駅で解結後、片方は2号線広島駅行き、片方は3号線広島港行きという形になれば、
混雑は解消できて運用の幅は広がって本当に理想的です。
(ヒロさんのblogでもこれが提案されていました。)
的場町交差点の改良により、広島港まで行かず皆実町6丁目から比治山線に入り再び本線から宮島口を目指す、という路線もあり?
ただ、連結運転を行う場合は前方の車両で後方の車両も制御するため、車両同士を電気的に繋げなければなりません。
現在の車両にはそのような電気連結器は搭載されておらず(非常時に物理的に連結するだけ)、既存車両は連結部の改造が必要となります。
連結運転が理想的に見えますが…(笑)
異なる解決策としてあえて私は7連接車両の導入を提案してみます。
三菱重工など3社で共同開発されたグリーンムーバーマックスは国産初の100%超低床車両です。
将来の国内外への普及を目指し車両はモジュール化されています。
だからこそ5連接をそのまま3連接に縮めた1000形グリーンムーバーレックスが導入できました。
(2013年2月撮影)
このプラットフォームを使えば比較的安価に7連接車両は製造できると思います。
全長は42m程になるはずですが、(5100形:30.0m、1000形:18.6m)
大臣の認可を申請する上で最大の課題は最初に書いた通り電停の長さです。
グーグルマップで簡単に調べてみると、中心部の本線上では銀山町、立町、本川町、西観音町、福島町の電停が長さ30m以下です。
(胡町・八丁堀は統合すると想定、小網町~観音町は平和大通りへ移設すると想定し省きました。)
幸い、これらはいずれも両側が横断歩道に挟まれているということはなく、延長の余地は残されているように見えます。
私はやはり都市部の東西の軸は現在のネットワークを活かした広電が担うべきだと思っています。
将来的に旧態依然の路面電車からLRTに昇華して、一定数自動車やバス路線からLRTへの転換を図るつもりであれば
ラッシュ時以外でも5連接(定員150人)では足らなくなる時が来るのではないでしょうか。
南北の軸はアストラムの本通から先の延伸が理想ですが、現実的に難しい。
だとすればなおさら広電のLRT化の重要性が増します。
ハードルはこちらの方が高いですが、あえて提起してみました。
例え話が大きく飛躍します。
これは先ほどの連結運転案にも当てはめられますが、同じ広島駅行きでも従来の土橋や十日市から本線(相生通り)を経由する電車と、
平和大通りから白神社交差点まで直進する新設ルートから鯉城通り・相生通りを通って広島駅へ向かう電車があれば
軌道上の相対的な車両数が減りダンゴ運転の解消にも貢献できますよね。
ここまで書いてみましたが、いずれの案にせよこれらが運用できるための環境整備が絶対条件です。
電停の統廃合や優先信号拡充、信用乗車制度(運賃制度)、車両更新、何より利用者・沿線住民の理解などなど…。
特に編成長を伸ばせばそれに合わせてドアの数も増えるので、現在の運賃収受制度に代わる全く新しい制度の導入が求められる事になりますね。
昨日取り上げた速度制限緩和と今日の編成長制限緩和は、一連のLRT化施策の中では最後の最後。
まずは先ほど挙げたような所から地道に改善していく必要がありますね。
同時に法律の方も新時代の路面電車に適した物に変えていくことを願います。
国内の地下鉄新規建設はもう終わったとも言われています。
一方、建設費が安価で環境負荷も少ない、バリアフリーなLRTは多くの都市で検討されるようになりました。
2020年東京オリンピック・パラリンピックも決まったことですし、今後の柔軟な検討を期待したいです。