今回も路面電車の高度化に係る制度の問題についてまとめてみたいと思います。
過去の記事はこちらです。
広電のLRT化に向けて 胡町・八丁堀電停統合の提案
広電のLRT化に向けて 『急ぐ時はバス』?
広電のLRT化に向けて サイド/センターリザベーションの提案
広電のLRT化に向けて 制度の壁 【信用乗車方式】
前回は割増運賃(罰金)について定めた鉄道(軌道)運輸規程を取り上げましたが、
今回は軌道法に基づいた軌道運転規則に関して。
国内においてはこの規則により、併用軌道では運転速度は40km/h以下、一つの編成長が30m以内という制限を受けています。
(第四六条、第五三条)
特に広島のような大きな都市で基幹交通を担うには、これらの規則で能力不足を引き起こしていると言わざるを得ません。
しかしながらこの軌道運転規則の第二条にはこのような記載もあります。
第二条 道路の路面に敷設する併用軌道の運転は、この規則の定めるところによつてしなければならない。ただし、特別の事由がある場合には、国土交通大臣の許可を受けて、この規則の定めるところによらないことができる。この場合において許可を受けた事項を変更しようとするときは、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
“特別の事由がある場合には、国土交通大臣の許可を受けてこの規則に定められた以上のことも可能である”
と同じ規則に書いてあるんですね。
京都と大津を結ぶ京阪京津線には固定編成の60m級の車両が一部区間で道路上を走っていますし、
広島でも5000形グリーンムーバーは海外製ゆえ約30.5mの全長を持っています。
この規則は戦後間もない昭和29年、日本中に路面電車が走っていた頃にできたものです。
実際、広電にもその頃から走っているであろう車両はまだ数多く現役で走っているのですが、
グリーンムーバーシリーズのLRVは同じ「路面電車」とは呼べないほどの進化を遂げています。
速度制限について考えます。
そもそも時速40kmという速度制限は
○路面電車の制動距離が他の道路交通に比べて著しく長いこと
○目視で車両間の距離を確保する方式であること
これらの理由によって道路上の安全を確保するために設けられている制限である、というのが政府の見解だそうです。
平成11年、参議院にてLRTの普及に関する質問主意書が提出され、それに対する政府の答弁書が公開されています。
【参議院ホームページ】
質問第二八号
答弁書第二八号
グリーンムーバー以降の車両は加速性能はもちろん、減速性能も大きく向上しています。
通常のブレーキに加えて、パッドを直接レールに押し付ける「レールブレーキ」なるものが装備されていると聞きました。
現状のグリーンムーバーも含め国内を走るLRVが「他の道路交通に比べて制動距離が著しく長い」ということはないと思いますね。
ただ、実際にそれを使うかどうかは車内の乗客の安全性を考えると別の問題です。(バスも同じことが言えます。)
前方数百メートル(これは検討が必要)に車両がいない場合に
グリーンムーバークラス(5000形・5100形・1000形)に限り、市内線最高速度を50km/h程度に緩和しても全く問題はないと思います。
少し先の目標として提案したいです。
しかし、では今の状態のままムーバーの制限だけを50キロに緩和したところで大きな効果は得られないでしょう。
交差点では相変わらず右折車が軌道近くで待機していますし、電停の間隔も短いです。
車両数も増えてきたとはいえ、全体的に見てLRVの数はまだ足らないですしね。
緩和の申請をするには、優先信号の拡大と電停の統廃合、さらなるLRVの導入を済ませてからでないと難しい現実もありますね。
ちなみに軌道運転規則の第三条には、
新設軌道の運転に対しては鉄道運転規則を準用する、とあるので
最高速度40km/hという制限を受けることはないそうです。
つまり、新設する駅前大橋線では制度の上では40km/h以上の運転も可能である、と解釈しても良いのでしょうか。
将来を考えてもせっかくの新線ですから、センターリザベーション化しなるべく他の交通の影響を受けない形で整備していただきたいですね。
このまま編成長についても書きたいところですが、長くなりそうなので一度ここで切りたいと思います。
今回はこちらのサイトを大いに参考にさせていただきました。
【 まちをこわす「クルマ『中心』社会」、まちをつくる「LRT」 】: 「古い手縄」からの「縄抜け」は、できるっ!
軌道法やその他規則に関して気付かされることが多かったです。
>>続き
広電のLRT化に向けて 制度の壁 【全長30m以下】