広島電鉄は2026年春のダイヤ改正を発表しました。
当初より計画していた循環線の運行開始に加え、
ニーズが大きい時間帯の増便・車両の大型化や、昨年8月から実証運行している「快速便」の運行路線・本数の拡大を行います。
さらに、全国に先駆けた試験として、横川線の一部区間で
最高速度を50km/hに引き上げる取り組みを実施することも明らかにされました。
旧来の路面電車から、現代の技術と社会に合わせた次世代路面電車=LRTへの昇華に向けて、
非常に意味のある取り組みが始まります。
循環線開業日決定に関する記事はこちら。
目次
輸送力強化・快速便拡充を図るダイヤ改正の概要
【広島電鉄/路面電車 循環線について】:【2026/3/3掲載】循環線の開業に伴う広電電車ダイヤ改正に関する詳細はこちら
循環線の運行に関する内容は、概ね前回まとめた通りです。
循環線を除く、今回のダイヤ改正の主なトピックを以下にまとめます。
▼ダイヤ改正の主なトピック(循環線除く)
| ① 輸送力の増強 | ■1号線 ・平日朝ラッシュ帯の大型車両(5連接車両)を増便(20本→26本)。 ・土休日10〜14時台も増便(42本→50本)、大型車両も拡充(120本→138本)。 ■5号線 ・早朝の始発を14分繰り上げ(皆実町六丁目発 5:46→5:32)、新幹線・フェリーへの接続を改善。 |
|---|---|
| ② 快速便の拡充 | ・実証運行中だった1号線の快速便を本格運行へ移行し、2号線でも新規運行を開始。運行本数を2本→4本に倍増。 ・広島駅から紙屋町東まで稲荷町・八丁堀のみ停車し、所要時間 10分→9分に短縮。 |
| ③ 本通電停への 副名称導入 |
・平和記念公園を訪れる観光客の利便性向上を目的に副名称を追加。 「本通」→「本通(平和記念公園東)」 |
合わせて、早朝の一部の2号線(宮島線)の便において、
広電西広島駅~広島駅間のワンマン運行を実施することも公表されました。
昨年8月の駅前大橋ルート開業により、路面電車が2階に乗り入れる現在の運用が始まりました。
これに伴い広島駅の乗降客数が増加していることを受け、広島駅発着便を中心に5連接車両などの大型車両への変更や増便を行うものです。
5200形グリーンムーバーApex
「快速便」については、駅前大橋ルートの開業とともに、朝ピーク時における1号線の2本に快速を設定し、実証運行を行ってきました。
利用者からの”好評の声”を受け、2号線(宮島線)にも2本設定されることとなりました。
実証から本格運行に変わる1号快速便と合わせ、計4本が設定されます。
各駅停車に比べ、紙屋町東までの所要時間は1分短縮します。
(広島電鉄『【2026/3/3掲載】循環線の開業に伴う広電電車ダイヤ改正に関する詳細はこちら』(https://www.hiroden.co.jp/topics/2026/pdf/0328-loopline/0303_release.pdf)より)
全国初!『40km/hの壁』破る歴史的な取り組みが始まる
ダイヤ改正とは別の取り組みとして、路面電車の走行速度を向上させる試験的な取り組みが公表されました。
【広島電鉄】:路面電車の速度向上試験について
路面電車は軌道運転規則に則り、最高速度が40km/h以下に定められていますが、
国や警察の検証の一環として、横川線の十日市町~別院前の約770mで、
50km/hで試運転を行います。
(広島電鉄『路面電車の速度向上試験について』(https://www.hiroden.co.jp/topics/2026/pdf/0303-traininfo/release.pdf)より)
まずは1000形で試運転を継続して行い、安全性に問題ないことが確認されれば、
7号線・8号線の営業列車でも同区間の最高速度を50km/hに引き上げて運転します。
この取り組みは国土交通省、警察庁、有識者や事業者で構成される「路面電車の速度向上に係る検討会」における検証の一環として行われるもので、
広島電鉄が国の軌道運転規則の例外取扱い許可を受けて実施します。
1000形グリーンムーバーLEX
路面電車から真の『LRT』への昇華に向けた期待
期待を感じる、非常に見ごたえのあるプレスリリースです!
交通結節点の整備や走行性の向上により、公共交通に目が向けられるのは非常に良い傾向ですね。
快速便拡充にみる「速達性」へのアプローチ
快速便の拡充については特筆したい取り組みです。
路面電車の速達化を考える上で、多すぎる電停は大きな課題です。将来の電停の統廃合も視野に入るこの取り組みには非常に注目しています。
以前も書いたとおり、快速運行で速達性が増しても、先行列車に追いつくと時短効果も薄れます。
逆に言えば快速運行の本数が増えれば増えるほどその効果は高まっていくので、拡充の方向性には大歓迎です。
快速便は全体の本数からすれば2本増えてもまだまだわずかですが、
「実証」から「本格運行」に変わり、”この方向で進めていく”という意思が明確になったことだけでも非常に大きな一歩ではないかと思います。
軌道法改正を見据えた「最高時速50km/h」の意義
路面電車が運行の基にする軌道法(軌道運転規則)は、戦後間もない昭和29年にできたもので、
今日に至るまで一度も改正されたことはありません。
今回の試験は、初めて路面電車が「40km/hの壁」を打ち破る歴史的な取り組みと言えます。
当時と現在では車両の性能や道路環境も大きく異なります。
車両のブレーキの性能も上がりました。
急ブレーキをすると車内の安全性が保てないという意見もありますが、路線バスも規制速度内で40km/hを超える運転を行っています。
周囲の安全確保のルール化など、運用で乗り越えるべきものかと思います。
最高時速を10km/h緩和するという単体でみると効果は限定的ですが、電停間の間隔や信号の最適化に合わせて取り組むことで、その効果は一気に高まります。
最高速度の引き上げは速達化を実現する要素の一つとして、今後の見直しは必ず必要であると考えます。
法改正、あるいは特認の拡大によって、まずは駅前大橋ルートで、そして将来的には相生通り、鯉城通りなどでの速度引き上げに大いに期待したいです。
広島のみならず、日本国内においても路面電車は「LRT(ライトレールトランジット・次世代路面電車)」として価値が見直され、
栃木県には日本一とも呼べる水準を持つ「芳賀・宇都宮LRT」が新規開業しました。
その宇都宮でさえ、最高時速40km/h、編成長は30m以内という現行規則に縛られて運行されているのが現状です。
あとがき
これまで幾多の議論はあれど、”机上の空論”だった施策が、少しずつでも実現に向かい始めたことに、すでに感慨深さすら感じます。
それぞれの取り組みはまだまだ限定的なもので、
今の状況を見て「意味がない」とおっしゃる方も居られるかも。
ところが、理想はまだまだ遠いところにあります。
理想をいきなり実現するのは容易ではありません。一つ一つの実績の積み重ねこそが、実現へのステップに最も重要になるはずです。
広島が全国のモデルケースとして歩みを進めることに、大いに期待しています。






