広島市とJR西日本『新アリーナ』実現に向け協定結ぶ! 想定される規模や実現への課題は?

広島市とJR西日本は、以前報じられた通り広島駅北口(二葉の里地区)への新アリーナ建設を中心としたまちづくりについて、2026年3月30日に包括連携協定を締結しました。
​少子高齢化や人口減少が進む中、公共交通を軸とした持続可能な都市の発展を目指していくのが狙いです。

最大の目玉となる新アリーナ構想では、両者が「オール広島」の体制で実現に向けて協力していくことで合意しました。
​新施設は、プロバスケットボールBリーグ・広島ドラゴンフライズの新たな本拠地としての役割に加え、大規模なコンサート会場、非常時の帰宅困難者の受け入れ等の活用も見込みます。

JR西日本の飯田支社長は、具体的な完成時期の目安として2031年を選択肢の一つとして挙げており、今後の計画の具体化に注目が集まっています。

 

 

 

広島市とJR西日本の連携協定の概要

【広島市】:広島市と西日本旅客鉄道株式会社が包括的連携に関する協定を締結しました

【JR西日本】:広島広域都市圏の持続的な発展に向けて―広島市・JR西日本が「連携協定を締結」―

【RCC中国放送】:「前に進めていく決意の表れ」「2031年完成も選択肢の一つ」広島市とJR西日本が広島駅北口に新アリーナ建設に向け連携協定を調印

 

▼連携協定の概要

協定締結日 令和8年3月30日(月)
主な目的 ・広島市とJR西日本が連携して公共交通とまちづくりを一体的に検討し、円滑な移動と都市の魅力向上を実現する。
・持続可能なローカル経済圏の構築を通じて、西日本の拠点都市としての発展および地域活性化の実現を目指す。
連携内容の柱 (1) 新アリーナ構想を契機とした二葉の里地区のまちづくりの推進に関すること
(2) 楕円形の都心づくりの更なる推進に関すること
(3) 広島広域都市圏におけるまちづくりと鉄道施策の一体的な推進に関すること
(4) その他必要と認められる事項に関すること
協定の期間 締結の日から5年間(申し出がない場合は1年間の自動更新)

 

期待が高まる新アリーナ構想について

広島駅北口へ『多目的アリーナ』を ドラフラやイベント会社など連盟で要望書提出

プロバスケットボールの広島ドラゴンフライズは、新たな本拠地となる新しいアリーナの建設をかねてから模索しています。
背景にあるのは、2026年から始まる新しいB.LEAGUEの最上位カテゴリー「Bプレミア」への参入です。
Bリーグの華となる「Bプレミア」は勝敗による昇降格が無く、クラブの経営状態やBリーグ発展の貢献度などを基準とし、審査で参入が認められます。
参入要件を満たすため、様々な来場促進施策とともに、本拠地を従来の西区の商工センターの広島サンプラザから中区の広島グリーンアリーナへ移し、VIPルームの整備などの改修を施すことで、「Bプレミア」入りを獲得しました。

広島県と交わした合意書では、グリーンアリーナの使用期限を5年と設定していることから、「オール広島」での連携が取れれば、新アリーナは2031年完成も一つの選択肢と、JR西日本の飯田支社長が言及しました。

プロバスケットボールB1リーグの広島ドラゴンフライズは、 3月8日に行われた「東アジアスーパーリーグ(EASL)」で桃園パウイアン・パイロッツ(台湾)との決勝戦に勝利し、見事優勝

 

新アリーナは、新たな大型コンサート会場としても注目されています。

中四国最大級のキャパシティを誇る広島グリーンアリーナは、県立体育館という性質上、広島県が有料興行は年間開館の10%までという制限を掛けていました。
令和7年度に平日の制限については撤廃したものの需要は逼迫しており、会場を確保できないプロモーターやアーティストの「広島飛ばし」が課題となっています。

広島県は、「広島グリーンアリーナの有効利用に係る意見交換会」の内容を踏まえ、県立広島グリーンアリーナの利用制限を緩和する方針の案をまとめました。 グリーンアリーナはこれまで、

 

こうした背景に加え、全国でも新アリーナの建設が相次いでいることも重なり、24年頃から新アリーナ建設に対する期待が高まっています。

10万筆の署名を集めるとともに、2024年10月には、ドラゴンフライズ、SVリーグの広島サンダーズとともに、複数のコンサートプロモーターも連名で、広島駅北口への新アリーナ建設の要望書をJR西日本に提出しました。

ドラゴンフライズ『新アリーナを広島駅北に』JRと協議へ

上記の記事でも述べているように、個人的にも二葉の里JR西日本敷地にはアリーナ建設が相応しいと考えています。

連携協定の締結に至り、実現に向けて一歩前進したことなので、
これまで漠然としていた認識の解像度を高めるとともに、解決しなければならない課題を整理してみたいと思います。

 

 

アリーナの想定規模は? 全国では多用途の1万人収容アリーナが相次ぐ

現時点で、広島ドラゴンフライズから新アリーナの具体的な収容人数について言及されたことはないはずですが、
需要が逼迫するグリーンアリーナの代替を担うという意味においても、コンサート興行時(アリーナフロアに仮設席を配置した状態)で最低でも1万人収容は必須です。

地方での絶対的な優位性を持たせるのであれば、1万5000、2万…とさらに大きなキャパを求めたくもなりますが、後述する敷地面積の問題やコストの問題も踏まえると、
1万人を基準に、最大でも1万2000人程度という規模感が合理的な水準ではないかと思います。

 

また、観客席の構造は、バスケット等のスポーツ興行だけでなく音楽興行での使いやすさも重要な要素となります。
現実的にはプロスポーツのホームゲームは年間約30日程度ですから、イベント重視、見やすさはコンサートファーストで設計すべきだと思います。

形状によりいくつかのタイプに分けられますが、コンサート時でも見切れ席が少なく効率的に収容人数を確保でき、見やすさも確保できる「U字型」またはオーバル型の一体感と組み合わせた「ハイブリッド型」が望ましいです。

オーバル型:広島グリーンアリーナ、IGアリーナなど
U字型(馬蹄型):GLION ARENA KOBE(U字型)など
ハイブリッド型:LaLa arena TOKYO-BAY(船橋市)、静岡市新アリーナ[計画中]など

配置計画および観客席のレイアウトについて(静岡市新アリーナの例)
(静岡市『静岡市アリーナ整備・運営事業 落札者の決定』(https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/7444/rakusatsusya-kettei_260225.pdf)より)

 

U字型・ハイブリッド型は、一辺が開いている(観客席を設けていない)ため、イベント資材の搬出入が容易で効率的であるというメリットもあります。
地上レベルから大型トラックが直接乗り入れできる搬入路を整備することで、試合やコンサートなど多様なイベントを高い回転率で回すことが可能になります 。

なお、広島グリーンアリーナの床は木のフローリングとなっており、土足で入場するイベントでは毎回養生が必要です。大型トラック等が直接フロアに乗り入れることはできず、効率性を削ぐ要因となっています。

 

 

構想実現に向けた課題と考えられる対策

広島駅北口の一等地に1万人規模の巨大な集客施設を成立させるためには、多くの課題を乗り越える必要があります。
以下に主要な課題と、それらに対して考えられる対策を整理します。

① 敷地の狭さと来場者が滞留できるオープンスペースの確保

新アリーナ構想の対象となるJR西日本広島支社跡地

 

対象地となる広島駅北口二葉の里のJR西日本広島支社跡地一帯の面積は、およそ1万8,000平方メートル。目の前にすると広いですが、1万人規模のアリーナを建設するにはそれほど余裕はなく狭い部類に入ります。

近年作られている代表的なアリーナの諸元を整理しました。

 

このように1万人収容のアリーナでは最低でも2万平方メートル程度が主流です。
とはいえ、広島の対象地の建蔽率は80%を上限に、いっぱいに建てれば建築面積1万4000平方メートル程度は可能。
1万人収容のアリーナで、U字型・ハイブリッド型の施設となると、やはりLaLa arena TOKYO-BAYや静岡市新アリーナがベンチマークとなりそうです。

 

下記は同じスケールで静岡市新アリーナの本体を広島駅北口に配置した、筆者作成のイメージです。

設計にあたって構造を現地に合わせて工夫することで、1万人(+α)収容のアリーナはなんとか収まりそうです。
北側には後述する県の大型医療施設ができる予定であるため、北側の道路から人や車両の出入りはしないこととしました。

隣接する街区公園「二葉の里第3公園」(面積約1,000平方メートル)を敷地内で再配置することができれば、検討の自由度はさらに高まりそうです。

(静岡市新アリーナ配置図のスケール調整)

広島駅北口に静岡市新アリーナを配置したイメージ
(航空写真はQGIS上で地理院タイルを表示。アリーナ図面は静岡市『静岡市アリーナ整備・運営事業 落札者の決定』(https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/7444/rakusatsusya-kettei_260225.pdf)より、同一スケールで加工して配置。)

 

上記のイメージは、静岡市新アリーナの建築部分のみを抜き出したものを当てはめているため、このままでは来場者の滞留空間が不足する可能性があります。
地上レベルでの空間の余裕はないため、広島駅北口の既存のペデストリアンデッキの拡幅するとともに、アリーナの外周部まで大きく拡張して接続することで、2階レベルの歩行者ネットワークを巨大な滞留空間として活用するのが有効でしょう。
このデッキ整備は、公共の歩行者動線としての性質も持つため、広島市が費用負担や整備において積極的に協力・介入しやすい分野かと思います。

 

 

② 2030年度完成予定の新病院への配慮

新アリーナ建設予定地の近隣(北側)には、県立広島病院や県立二葉の里病院(旧JR広島病院)、中電病院などを統合した新たな「高度医療・人材育成拠点」が2030年度の開院を目指して整備される予定です。

広島県は、県立広島病院、JR広島病院、および中電病院(一部機能)などを統合・再編した「高度医療・人材育成拠点」となる新病院の整備計画を進めています。 場所は、広島駅北口の二葉の里

 

病院利用者とアリーナの観客の双方の快適性や安全性を確保する意味でも、徹底した歩行者動線の分離は必須となりそうです。

標準幅員6mの現状のペデストリアンデッキ(北口広場中央)に、アリーナ来場者を通行・滞留させつつ病院利用者の安全な動線も確保するのは困難であると思われます。
やはり先ほども触れたデッキの拡幅は必要ではないかと。
この際、使い勝手があまり良くない北口ロータリーをもう一度改修して再配置してもよいのではないでしょうか。(なぜ空港リムジンバスを遠くの目立たない場所に発着させるのか…)

そして、アリーナ特有の「音」「振動」という課題に対しては、経験ある企業の綿密なシミュレーションを行い、必要であればコストアップの要因にはなるものの、躯体構造自体に高度な防音・防振対策が必要になりそうです。
アリーナ内部の音源と外壁に物理的な縁切りを行う仕組みや振動対策など、ノウハウのある事業者を引き込みたいです。

【竹中工務店】:防振浮床

 

広島駅北口に静岡市新アリーナを配置したイメージ
(航空写真はQGIS上で地理院タイルを表示。アリーナ図面は静岡市『静岡市アリーナ整備・運営事業 落札者の決定』(https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/7444/rakusatsusya-kettei_260225.pdf)より、同一スケールで加工して配置。)

 

 

③ 300億越え?物価高騰下で事業スキームは最大の課題

世界的なインフレや人手不足により、建設費の高騰は一番の課題です。
先ほどから紹介している静岡市の新アリーナ整備事業では、事業者から総事業費約363億円と公表されました。
鮮度の高い情報に、物価高騰の現実を突きつけられますね。

市が受け持つのはこの内300億円で、国の補助金や市債、寄付金を活用し、実質の負担額を147億円に抑えるとしています。
(ちなみに、サッカースタジアムであるエディオンピースウイング広島の場合は総事業費約286億円。広島市の負担は市債を除き約40億円です。県も同額。)

広島駅北口のケースでは、面積は小さいものの、防音・防振設計(+関連事業としてペデストリアンデッキの拡張等)の要件が加わるため、静岡市と同等の建設費となる可能性もあります。いかにして持続可能な資金調達モデルを構築するかが最大の課題です。

広島ドラゴンフライズ(および親会社のNOVAホールディングス)単独での事業化は現実的に厳しく、その意味で、今回JR西日本とこのような協力的な協定を結べたことの意義は非常に大きいです。

 

山陽・九州新幹線の拠点駅とアリーナが近接していることから、九州や関西など広域から「日帰りでの来訪」が可能となります。
これは逆に、市内の「宿泊消費」に繋がりにくいことにもなりますが、広島にはそれを補って余りある強固な観光需要があります。

JRとしては、宿泊の代わりに「ekie」や新駅ビル「minamoa」など、駅周辺エリアでの飲食・物販消費の大きな増大が期待できます。
仮に1万人規模のコンサートが定期的に開催されるようなアリーナが実現すれば、今の「ekie」「minamoa」を持ってしてもまだ需要が上回るのではないでしょうか。
これも踏まえ、自社土地の提供以上に、事業のパートナーとしてどこまで踏み込んだ協力が得られるか、注目したいです。

もちろん、”「オール広島」で取り組む”とあるように、JR西日本だけではなく有力な民間デベロッパー、ゼネコン、金融機関を巻き込んだ協力体制の確立も不可欠であり、早期実現のためにはこれも急ぐ必要があります。

 

 

交通渋滞に対する懸念

​自動車による交通渋滞も深刻な課題です。計画地周辺では、2027年度に広島高速5号線の開通、2030年度に新病院の開業を控え、これだけでも交通量の増大は大きな懸念です。
現状でも二葉通りは慢性的に渋滞気味ですし、マイカー送迎車の近隣への路上駐車も既に課題となっています。

1万人単位で集客するアリーナの整備がこの渋滞にさらなる拍車をかける可能性も。
救急車等の緊急輸送や路線バス・高速バス等の公共交通機関の運行に支障をきたすようなことはあってはなりません。

二葉通りの拡幅など現状以上のハード対策は物理的にも困難ですから、広島市とJR西日本が協力し公共交通の利用促進を図るとともに、違法駐車に対する適切な取り締まりを行いながら、来場者の意識向上(モラル向上やマイカー来場の抑制)を進めていく必要があります。

 

 

広島の未来を動かす新アリーナへの期待

様々な課題や懸念はありますが、山陽・九州新幹線の拠点駅と全天候型で様々な活用が可能なアリーナがこれほど近接している立地は全国でも珍しく、県・市の課題とニーズにも合致します。

国際的にも知名度が高く、スポーツやエンターテインメント、企業PR等にとどまらない活用も、利用者目線で様々出てくるのではないでしょうか。

2031年開場は流石に余裕が無く現実的には難しいかもしれませんが、早期に目処が立つよう注目し追風を送っていきたいです。

 

出典:

  • 沖縄サントリーアリーナ(https://okinawa-arena.jp/)
  • SAGAアリーナ(https://saga-sunrisepark.com/arena/)
  • 長崎スタジアムシティ HAPPINESS ARENA(https://www.nagasakistadiumcity.com/)
  • LaLa arena TOKYO-BAY(https://lalaarenatokyo-bay.com/)
  • あなぶきアリーナ香川(https://kagawa-arena.com/)
  • IGアリーナ(https://www.ig-arena.jp/)
  • TOYOTA ARENA TOKYO(https://www.toyota-arena-tokyo.jp/)
  • 静岡市/ アリーナ事業の実施状況(https://www.city.shizuoka.lg.jp/s6925/s007589.html)

 

(生成AIによるイメージ。何らかの根拠に基づくものではありません)

guest
2 Comments
古い順
新しい順 高評価順
Inline Feedbacks
View all comments