土砂災害から半年 被災地を歩く

2014年8月20日未明、広島市北部の広範囲で未曽有の土砂災害が発生し、74人もの命が失われました。
改めまして亡くなられた方々には心からお悔やみ申し上げます。
まだその日のことは鮮明に覚えていますが、来月で発生からもう半年になります。
今年初めての撮影は、このことを忘れないためにも被災地に行ってきました。
 
 
まずはGoogleEarthで作った比較図を載せておきます。
 
saigai-hikaku2.jpg
緑井・八木地区航空写真(災害発生前後, GoogleEarth)
 
 
二つの画像は広島市安佐南区の緑井・八木地区です。
Googleのデータベースにある2012年4月と発生後の2014年9月の全く同じ位置を並べました。
ここに写っている範囲以外でも安佐南区山本、安佐北区可部などでも土砂による犠牲者が出ています。
 
私が歩いたのは図で”①”とした緑井8丁目、そして”②”とした八木3丁目の辺りです。
今回は撮影した画像と同じ角度の「Googleストリートビュー」のリンクを載せています。
記事執筆時点でストリートビューの画像は災害発生前なので、比較ができるかと思います。
 
まず”①”の緑井地区の状況です。緑井地区では13人が亡くなられました。
JR可部線の七軒茶屋駅から災害現場となった山裾を目指し北上します。
 
201501saigai-1.jpg
 
途中の道路脇に、このような無線の警報機がありました。
再び土砂崩れを検知するとサイレンが鳴ります。
土砂は流れ込んでいたと思いますが、物的被害がそこまでない所で目にしたことで一気に実感が湧きました。
 
 
歩を進めるにつれて損傷が目立つようになります。
 
201501saigai-2.jpg
 
 
 
201501saigai-3.jpg
→ストリートビュー
 
 
 
201501saigai-4.jpg
→ストリートビュー
 
畑や植木などはほとんど流され(もしくは撤去)、石垣だけが残っています。
ストリートビューと比較すると左手の家は解体されたようです。
 
 
 
 
201501saigai-5.jpg
→ストリートビュー
 
 
 
201501saigai-6.jpg
→ストリートビュー
 
 
 
201501saigai-7.jpg
 
 
JRの線路から直線距離でおよそ300m付近を越えると、建物の直接的な被害が見受けられるようになってきました。
もう少し進んだ所が宅地と山の境になりますが、応急復旧工事や下水道工事が行われていたので近づくのはやめておきました。
山から平地に向かって小さな水路が流れていますが、これが当日は濁流となって今通ってきた道路を下っていったことがうかがえます。
倒壊した家屋の撤去はほとんど完了しています。
帰宅して元の航空写真やストリートビューを見直すと、元々こんなに住宅が建っていたのかと驚きました。
土砂の恐ろしさを目の当たりにしました。
 
 
 
続いて”②”の八木3丁目周辺の状況です。
「八木地区」では今回の災害で最も多い52人が亡くなりました。
 
201501saigai-19.jpg
 
 
 
201501saigai-18.jpg
 
 
まずJR梅林駅近くの歩道橋から南を撮影した物と、駅から約400m南下した地点の踏切です。
テレビ中継でも何度も写っていた場所です。
災害時、土砂はここまで達しており可部線は9月1日まで運休を余儀なくされました。
(法面崩落も絡んでいます。広島~緑井間は運行。)
 
 
未だに土で茶色くなっている線路を越え、山の方に進みます。
 
201501saigai-17.jpg
 
 
 
201501saigai-8.jpg
→ストリートビュー
 
線路から直線距離で200mに満たない場所ですが、既に建物への被害が見受けられます。
 
 
もうしばらく進むと一気に”茶色”の景色になりました。
 
201501saigai-9.jpg
→ストリートビュー
 
 
 
201501saigai-16.jpg
 
 
 
201501saigai-10.jpg
 
 
 
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→ストリートビュー
 
主に「県営緑丘住宅」付近を写していますが、間の棚田のようになっている所には元々駐車場や一戸建ての家屋が幾つも建っていました。
あまりにも何も無い状態になっており愕然としました。
土砂に押しつぶされ原型を留めないほどグシャグシャになった車はまだ何台も残っています。
撤去しようにもその費用負担で折り合いが付かなかったり持ち主が亡くなっていたり、という問題があるそうです。
 
 
 
201501saigai-12.jpg
→ストリートビュー
 
 
 
201501saigai-13.jpg
 
 
建物は無くなっていますが、この先からとてつもない量の土砂が一気に流れて来る光景が浮かび非常に恐怖を感じます。
県営住宅の北面(山側)にも土砂は押し寄せました。
屋根瓦から鉄筋コンクリート製の手すりやバルコニーまでも崩れており、土砂の威力を物語っています。
 
 
 
 
201501saigai-15.jpg
→ストリートビュー
 
 
 
201501saigai-14.jpg
 
 
県営住宅の北側を東に進んだ所の一戸建て住宅と、そこから見下ろす平地部です。
鉄筋コンクリートの土台(駐車場)は残っていますが、木造だった上屋は跡形もなくなってしまっています。
土砂が流れてきた山の方では応急復旧工事をしている音だけが聞こえていました。
 
 
画像はこれで以上です。
実際に現地の状況を見るのは初めてでしたが、改めて土砂災害の恐ろしさを感じています。
2つの地区どちらも現在は砂防ダム・治山ダムの応急的な対策工事とそのための瓦礫の撤去、進入路整備が主に進められているようでした。
家屋が流されてしまったり倒壊した住民がまた元の生活に戻るのは、まだまだ先になるだろうと率直に思いました。
広島県と市は被災者向けに公営住宅などの仮住宅を無償で用意していますが、入居から6ヶ月としていた期限の延長を先日決めました。
この地区にはもう住まないと決めた住民もいらっしゃると思います。
被災されたすべての方々が少しでも早く日常の生活に戻り落ち着きを取り戻すことができることを願っています。
 
再発防止についても考えなければなりません。
対策はしても大雨は降りますし土砂災害もいつかまた起こるものです。
今回の災害では危険地区が多いにもかかわらず不動産価値への影響や測量調査に関する予算不足などから警戒区域への指定が進んでいなかったという問題が露呈しました。
何より住民の安全のため、そして結果として多額の復旧費用が必要となった市にとっても、今後は積極的に指定を進めるべきだと思います。
そのための改正土砂災害防止法も昨年11月成立しました。
区域の中でも特に危険な区域については、そもそも建物が建てられない「市街化調整区域」に移行する事なども検討していくべきではないでしょうか。
 
現在被災地では”ハード面”となる砂防ダムの応急復旧工事などが行われていますが、
“ソフト面”となるこうした都市計画面や避難計画、住民の意識の向上等の対策も必要です。
もちろん安佐南区・安佐北区だけではありません。己斐も危険な地区が多いと聞きます。
いかにハードとソフトを両立して計画できるかが今後の減災に直結すると思います。
 
 
 
【日本経済新聞】:広島土砂災害、警戒区域指定進まず 資産価値低下懸念
【朝日新聞】:改正土砂災害防止法、18日施行 基礎調査公表義務づけ
【Wikipedia】:平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害
 
【広島市】:広島市8・20豪雨災害義援金の受け付けについて(企画総務局総務課)


 

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