高速5号線、二葉山トンネルを考える

さて今回は住民の反対により建設はおろか現地調査すら困難な状態にある広島高速5号線の二葉山トンネルを
大学で土木を少し学んだ素人が考えてみます。
ご指摘・ご批判のほど遠慮なくお願いします。
 
まず改めて広島高速5号線をおさらいしておくと、
現在計画されているのは高速1号線の南端である温品JCTから広島駅北口ランプを結ぶ約4キロでほぼ半分の区間が二葉山を抜けるトンネルになります。
そのトンネルの頭上にある中山地区・牛田地区の住民が、建設による地盤地下を懸念し反対運動を続けており
当初2012年度としていた開通時期には無論間に合わず大幅に遅れています。
 
 
さて、つい先日も安全を検証する検討委員会(第9回)が開かれ、
検討委から安全を認める報告書がまとめられました
(沈下予測はルート中央付近に位置する牛田地区で最大14.2ミリ、東側出入り口付近の中山地区で同51.0ミリと予測。)
しかし住民らが推薦した4人の委員が審議不十分として退席してしまったようです。
中国新聞:安全性認める報告に住民反発
(どんな内容であろうと建設中止しか求めていないようですね。。。)
 
 
果たして二葉山トンネルの建設で
本当に(福木トンネルと比較してどの程度)地盤沈下は起こるのでしょうか。

 
 
広島高速1号線の広島東JCTと馬木IC間を結ぶ福木トンネルは、2001年から掘削を始めましたが
最終的に15cm以上の地盤沈下を起こしました。これは事実です。
 
 
ここからが私の考え・想像になります。
(「予測」ができるほどの知識はありません(^_^;))
 
まずはトンネル建設反対派の主張を見てみます。
 
トンネル建設に反対している「二葉山を守る会」という団体のホームページがあります。
“その他の問題点”というトピックをたどると次のようなページが出てきました。
二葉山を守る会:トンネル建設計画 その問題点
このページの下2つに二葉山トンネル建設反対をまとめたPDF資料がありますね。
これをまとめた日本地質学会会員という越智秀二氏は住民とともに反対運動に声を上げているそうです。
 
広島高速1号線の福木トンネル建設で実際に起きた地盤沈下についても、同じく越智氏によってまとめられていました。
福木トンネルの住宅被害:http://yogananda.cc/daily/you/tunnel.html
一番下にある「福木トンネル被害調査報告 (PDFファイル)」というリンクです。
 
 
さて以上の3つのPDF資料を読んで私が気になったことは、
トンネルを建設するにあたっての工法に関する記載がほとんど無いこと。
地質や地下水の存在、地域の特性などには触れられているものの、トンネルを掘る工法そのものについては書かれていません。
 
そもそも地盤沈下は、穴を掘る過程で土中に含まれる地下水が流出、
地下水位の低下とともに山の自重で表面が沈下するというメカニズムです。
(…と認識しています。)
 
トンネルを掘る工法について調べてみました。
地盤沈下が発生した1号線福木トンネルは「NATM工法」と呼ばれる工法で施工されました。
最も一般的な「山岳工法」の一つで、トンネルを横方向にドリル・発破等により掘るとともにコンクリートを吹き付けることによって壁面を固めます。
さらに周囲にロックボルトと呼ばれる杭のようなものを何本も打ち込むことで、周囲の岩盤と固定され山自体に影響を与えない強固なトンネルが出来るということ。
 
この工法は経済性にも優れているようですが、結果として150ミリ(15cm)以上の沈下を起こしました。
 
 
当二葉山トンネルにおいても検討委員会の議事録等を読む限りこのNATM工法が用いられるようです。
広島高速道路公社:広島高速5号線トンネル安全検討委員会
地下水対策として排水型と呼ばれる方式も検討しているようですが、ここからは難しくてわかりません。。
 
 
 
トンネルを掘る別の工法としてシールド工法というものがあります。
これは各地の地下鉄建設や首都高都市部の地下を通す時に用いられた工法としてそこそこ有名ではないかと思います。
シールド工法はシールドマシンと呼ばれる筒状のマシンによってトンネルを掘ります。
掘削面に圧力をかけながら前方の刃が回転しトンネルを掘削していきます。
その後方ですぐにコンクリートのセグメントを組み立てていくので、地盤の緩み・地下水流出も防ぐことができます。
地盤沈下を抑制できる非常に合理的な工法です。
 
しかしNATM工法と比較してコスト高であることや、掘削途中で工法を変更することができないなどの問題もあるようです。
 
議事録を見ると検討委員会でも、「施工時にも地下水を低下させない工法」としてシールド工法や薬液注入などにも触れられているので、全く想定されてないことはないようです。
 
NATMよりコストがかかってでも着工が仮に3年伸びてでも、地盤沈下を起こさず安全に施工できるなら
こういった技術も積極的に採用すべきだと私は思います。
住民との争いも起こる可能性はかなり減るはずです。
 
 
 
しかし、ここまで長々と書いておきながら…と言う感じではありますが。
現実は今更工法を変更して設計を一からやり直す、という段階では無いようです。
検討委員会での安全との報告を受け、
松井市長は年内にも着工するかどうかの判断をする考えを明らかにしました。
中国新聞:「安全」報告に年内にも判断
実際、シールド工法でなくとも安全と呼べる沈下予測が出ているので、先延ばしする意味はあまりないですね。
 
 
最後に。
二葉山トンネルの建設は、広島の広域的な拠点性を考える上で非常に重要な道路です。
時間短縮と言う意味での貢献度は高く無いですが、広島空港へのアクセスを考えた時に定時制が確保できるのは大きなメリットです。
加えて終点の広島駅側でも始点の中山地区側でも、準備工事がかなりの部分で進んでいます。
松井市長にはトンネルがもたらす恩恵をどれほど多くの人々が受けるかを考えて判断をしていただきたいです。
 
 
 
参考にしたサイト
・土木学会「トンネルはどうやって作るの?」
 →http://www.jsce.or.jp/contents/hakase/tunnel/04/index.html
・北越メタル株式会社「NATMとは」
 →http://www.hokume.co.jp/03/03/natm.htm
・首都高速道路株式会社「工事手順(シールドトンネル部)」
 →http://www.yokokan-kita.com/yokokan/construction/work02.html
・首都高速道路株式会社「トンネル工事による地盤沈下とシールド工法」
 →http://www.yokokan-kita.com/yokokan/news/h15_tunnel-sirudo.html
・株式会社九建「シールド・推進工事」
 →http://www.qken.co.jp/engineering/shield.html
 
 
 
また何か追記するかもしれません。


 

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