広島西飛行場跡地 2021.04 大規模な道路改良とともに進む産業集積

新型コロナウイルス再拡大により、広島県・岡山県にも緊急事態宣言が再度発令されました。
これを受け、当面の現地取材は原則避け、過去の未公開ストックを活用して、ブログ更新を続けていきます。

なお本記事は緊急事態宣言前に取材を行った内容になります。

 

広島県と広島市は、広島西飛行場跡地の有効活用に向け、
導入機能や交通アクセス等の内容を具体化した「広島西飛行場跡地利用計画」を2017年4月に策定しました。
計画では地区内道路等の基盤整備に加え、跡地を広域防災、新たな産業(雇用)、スポーツ・レクリエーション、新たな産業(にぎわい)の4つに分けて、それぞれ開発を行います。

【広島市】:広島西飛行場跡地利用計画[PDFファイル/1.8MB]


(上記資料より)

 

この中で「新たな産業(雇用)」エリアについて広島県が事業予定者を募集し、
産業団地「広島イノベーション・テクノ・ポート」として開発を掲げた大和ハウス工業が選定されました。

今回は基盤となる道路整備の状況と、跡地内の開発状況を取材してきたのでご紹介します。

 

跡地活用に向け道路アクセスが大幅改善!

まずは基盤となる道路の改善からご紹介していきます。
車載動画にまとめました。

ちなみに今回から撮影車が「MAZDA3」に変わりましたよ。

ご覧いただいてお分かりの通り、西飛行場名物だった、あの直角クランク2つが解消され、
4車線の広々とした緩やかなS字に生まれ変わりました!これは感動です。

 

現場にあった工事の看板です。

左下に概略図があります。ターミナル近くの2箇所のクランクが緩やかなカーブに変わっているのが、まずは図面でお分かりいただけるかと思います。

 

実際に、旧西飛行場のターミナルビル跡地前から、空港通りを進んでいきます。

 

 

三菱重工の入口と別れたあと、改良された道路が伸びていきます。
驚いたのは広々とした4車線道路と、完全に分離された自転車専用道路です。
ここだけで、「メッチャ変わった」と衝撃を受けました。

 

いよいよ、旧クランク区間。

 

 

 

「ザ・旧道」!こういった旧道、残地を見るのは好きですね。
ただ、廃止されるのではなく、何らかの用途として残されるようで、
片方からのみアクセスできるようになっていました。

 

2つのクランクをショートカットするように、緩やかなカーブで右に左に曲がり、マリーナホップ方面に伸びていきます。

 

この区間、上下線両方に、こうして分離された自転車道が整備されています。
後ほど紹介する跡地開発で、将来交通量は飛躍的に増加することが予想されます。
沿線には山陽高校や商業施設のマリーナホップもあることから、かなり安全性に配慮し設計されています。
用地に有り余る程の余裕があることも実現の後押しとなったのでしょうね。

電線・電柱の地中化もお願いしたかったところです…。

 

山陽高校を過ぎ、陸運局の手前で2車線に減少します。

 

 

都市計画上では、この先も4車線化にする予定はあるようです。

 

 

物流施設に研究開発施設など進む跡地開発

ここからは、実際に広島西飛行場跡地内、かつて滑走路だった場所で行われている開発の紹介です。
冒頭にご紹介したように、跡地内の「新たな産業(雇用)」ゾーンは大和ハウス工業による産業団地「広島イノベーションテクノポート」開発が行われています。

【大和ハウス工業】:産業団地「広島イノベーション・テクノ・ポート」を開発します

■産業団地「広島イノベーション・テクノ・ポート」の概要
 名  称     :「広島イノベーション・テクノ・ポート」
 設置場所     :広島県広島市西区観音新町4丁目2874番165 他4筆
 事業規模     :約200億円を予定(土地と建物)
 事業面積      :約9.8ha(「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島」の約4倍)
 販売予定面積   :約8.1ha

■事業スケジュール
2018年12月   :広島県と広島市との基本協定書締結
2019年3月    :土地売買契約締結
2019年5月    :土地決済、所有権移転
2019年5月24日 :造成工事着工、販売開始
2020年3月    :造成工事完了(予定)
2020年4月    :建物着工開始(予定)
2022年春  :分譲完了(予定)

 

広島湾に面する最も南側の「新たな産業(にぎわい)」は、応募はあったものの事業者選定には至りませんでした。

【広島市公式ホームページ】:広島西飛行場跡地活用に係る事業予定者募集の結果について(2018年4月4日)

 

事業者選定された「新たな産業(雇用)」で核となるのが、ダイワハウスによるマルチテナント型大型物流施設「DPL広島観音」です。

 

 

【大和ハウスグループ 】:中国・四国地域最大の物流施設「DPL広島観音」着工

■建物概要

名称 「DPL広島観音」
所在地 広島県広島市西区観音新町4丁目2874番165 他4筆

工業団地「広島イノベーション・テクノ・ポート」内

交通 山陽自動車道路「五日市インターチェンジ」および

「廿日市インターチェンジ」から約10km

敷地面積 39,551.75㎡
延床面積 96,558.52㎡
構造・規模 鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造 5階建て
設計・施工 株式会社フジタ
着工日 2020年6月1日
竣工日 2021年11月30日(予定)
総事業費 約180億円

 

広島のマルチテナント型物流施設は、五日市港の「DPL広島五日市港」や、
同じ西飛行場跡地向かい(三菱重工の北側)、三井不動産による「MFLP広島」などが挙げられますが、
建設中の「DPL広島観音」はそれらを上回り、広島最大どころか中四国地方最大規模を誇ります。

観音地区に2棟もこうした巨大物流施設が進出するのは、やはり道路を軸とした広域なアクセス性の良さがあるからでしょう。
広島南道路、広島高速の恩恵です。

なお「DPL広島観音」は全10区画の内、9区画ですでに契約済みとなっているようです。

 

さて、「DPL広島観音」の北側の区画も分譲先が決まり、開発が始まろうとしていました。

 

 

先日話題になりました、地場企業「モルテン」の本社兼研究施設が新築移転される用地です。

 

【モルテン】:molten [the Box]

【株式会社モルテン テクニカルセンター】

愛称 molten [the Box]
住所 広島市西区観音新町4丁目
延床面積 14,993平方メートル
敷地面積 18,446平方メートル
階数 4階建て
着工予定 2021年7月
竣工予定 2022年8月
業務開始 2022年11月1日(株式会社モルテン 創立記念日)
デザイン監修 サポーズデザインオフィス株式会社
コンストラクション・マネジメント 日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社
設計・施工 株式会社フジタ

現在横川にある本社を移し、テクニカルセンターとして統合させるようです。
ただの研究施設ではなく、デザイン監修にこちらも広島出身の建築家、谷尻誠氏率いる「サポーズデザインオフィス」が担当。(建替え中の広島駅ビルのデザインも監修します)
更に日建設計もマネジメントに加わるという豪華な布陣です。

 

コンセプトムービーが公開されており、開放的で凝った内装を見ることができます。

 

 

「DPL広島観音」の南側です。

こちらについてはつい先日、同じくダイワハウスにより「広島イノベーションテクノポートⅡ」として開発されることが、プレスリリースされました。

【ダイワハウス】:産業団地「広島イノベーション・テクノ・ポートⅡ」を開発します

(上記HPより)

 

広島ヘリポートに向けて戻っていきます。

 

ヘリポートの敷地に面する北側は、公園として整備されていました。
離発着するヘリコプターが意外と近くから見ることができます。
見物スポットになるかもしれません。子どもも喜ぶのではないでしょうか。

 

こちらは現在のターミナルビル。

 

空港時代の管制塔が解体され、新しい建物に建て替えられました。
ロータリーを潰して何か工事をしています。
駐車場にでもなるのでしょうか。

 

広島南道路・広島高速3号線方面と、三井不動産「MFLP広島Ⅰ」。

かつての広島の空の玄関口が、産業の街に生まれ変わろうとしています。

路線バスがあるとはいえ、やはり車でのアクセスが最も便利な場所です。
ダイワハウスによる産業エリアの本格的な分譲・開発はこれから始まります。
広域アクセスのしやすさを活かし、臨海エリアの産業集積が進むこと、
そして相乗効果的に広島高速3号線の利用促進と早期の4車線化・延伸に期待したいです。

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