基町相生通再開発 160mのタワーなどのデザインについて

広島市中区の旧朝日会館跡地、市営基町駐車場ほか一帯で、「基町相生通地区第一種市街地再開発事業」が進められています。

本事業は、市営基町駐車場、朝日会館跡地、中国電力基町ビルを一体的に再開発するもので、
オフィスや広島商工会議所、高層階にホテルが入居する約160mの高層棟のほか、発電所棟、駐輪場棟が整備されます。

2022年3月に広島市による都市計画が決定され、今後は権利変換計画認可などを経て
高層棟は2027年度、駐輪場棟は2029年度の竣工を予定します。

 

広島市における建築・土木構造物について、優れた景観や広島らしい個性あるまちづくりに寄与することを目的に設置された「広島市都市デザインアドバイザー会議」の中で、
基町相生通地区市街地再開発事業が議論されていました。
議事録が公開されていたので、ご紹介します。

 

 

2022年5月に開催された会議ですが、その当時、”「広島らしい建物とするべきだ」との意見が出た”と報じられたことから、SNS等で一時話題のネタになりました。
私も思うところはありましたが、前後の文脈などもあるので正式なものが出てくるまでは話題にはしておりませんでした。

時間が経ちましたが、市のHPを覗いてみると公開されていたのでご紹介します。

 

【広島市都市デザインアドバイザー会議の概要】:令和4年第1回広島市都市デザインアドバイザー会議会議要旨 [PDFファイル/537KB]

 

基町再開発に関する概要を抜粋します。
この会議では平和大通りへの自転車走行空間についても議論されていますので、興味があれば読んでみてください。

ア 外観デザインについて
・広島のランドマークタワー、リーディングプロジェクトとなる持続性のある デザインとなるよう検討する。

イ 広島らしさの 表現について
・ 内装含め 素材等で広島らしさを演出できないか検討する。
・計画地の歴史を感じられる空間を設けることができるか検討する。

ウ 1 階・ 6 階のオープンスペースについて
・市街地再開発事業の公共貢献として、 広島市民が楽しめる空間づくり に向けて 、賑わいが生まれるよう、 デザインや 活用方法を検討する。
・6 階のオープンスペース の存在が外部から見て「何かやっている」と伝わりやすい工夫、 動線やデザインを検討する。
・植栽やベンチの配置等を検討する。

エ 安全性について
・ BCP (危機の下でも事業 を継続する計画) 等、ソフト面での安全性を引き続き検討する。

(上記会議要旨より、議事 ⑴ 基町相生通地区第一種市街地再開発事業 に関する今後の検討事項を抜粋)

 

「広島らしいものを」というキーワードは確かに出てきておりますが、
建物全体のデザインに対して修正を要望しているものではなく、ピロティ等において広島の歴史が感じられる空間づくりが望まれる、というような議論です。

事業者側は、壁面の素材やラグジュアリーホテルのインテリア等で、広島ならではのものになるよう検討を続けていく旨の回答を行っています。

この再開発は民間資本で行う事業ですし、よほど奇抜なものでない限り、アドバイザーの指摘に対して論理的に説明ができれば基本的には問題ないものかと思います。

 

個人的には、相生通りへの圧迫感を緩和させるよう高層部をセットバックさせていること、
そしてその基壇部は既存の建物の高さを合わせて連続性を確保しているとのことなので、
全体の造形としては民間開発ながらよく配慮されていると感じます。

 

​基町相生通地区市街地再開発事業の完成イメージ。

(朝日新聞デジタル『広島都心部の再開発、有識者ら提言の初会合 デザインなど議論』より)

 

 

その他ピックアップすると、
高層部に行くにつれてセットバックするデザインは、「あべのハルカス」や「渋谷ヒカリエ」等2010年代に見られたトレンドで、長い目で見た時に陳腐化するのではないか、という意見がありますね。

事業者側も回答していますが、オフィスと違ってホテルにとって眺望が得られないビルの”芯部”に価値は無いので、これは仕方ないですね。
同じく高層部にホテルが入る広島駅北口の「GRANODE広島」と比べ、
「ねじれ」てでも高層部のホテルと連続性を保った基町再開発の方が新鮮で、リーディングプロジェクトとしてのシンボル性も十分高いのではないかと思います。

 

GRANODE広島

 

 

また、基壇部の一番上(商工会議所の屋上)に当たる6階は、オフィスワーカーだけでなく、一般にも開放してくつろぐ事ができる空間とするよう検討しているようです。
30m程度の高さとなるようですね。

(広島市)

 

ビルの上層部はホテルのレストランやスカイラウンジとしては地元の人も利用できるようになりそうですが、
展望台にして一般の人も楽しめるようにするという回答はないようですね。

 

広島の新しいランドマークとなる外観や、広島屈指のおもてなしができるラグジュアリーホテルの進出など、非常に楽しみなプロジェクト。

「基町相生通地区第1種市街地再開発事業」は、
2022~2023年度の着工、2027年度の完成予定です。(駐輪場棟は2029年度完成予定)

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