世界遺産の島「宮島」は、毎年約400万人が訪れる広島を代表する観光地ですが、
その宮島に渡るための玄関となる広島県廿日市市(本州側)の宮島口では現在、
手狭になった旅客ターミナル一帯を再整備する「厳島港宮島口地区港湾整備事業」が行われています。
港湾の一部を埋め立てて整備する新旅客ターミナルは、2020年2月29日に開業することが先日明らかになりました。
これまで別々だったJRフェリーと松大汽船は2社の統合旅客ターミナルや新たな待合スペース等を整備する計画です。
【広島県 / 厳島港宮島口地区港湾整備事業について】:
平成31年1月更新 パンフレット(厳島港港湾整備事業 宮島口地区) (PDFファイル)(29.05MB)
前回の状況です。
新ターミナルのオープン日決定!旧「もみじ本陣」は閉店
年始の中国新聞から話題になりつつありましたが、今年は宮島口の変貌に目が離せない年になりそうです。
埋め立てて建設していた宮島口の新しいターミナルビルの開業日が2月29日に決まりました。
【中国新聞】:宮島口新ターミナル 2月29日オープン
広島県は17日、廿日市市宮島口で建設中のフェリーの新旅客ターミナルが2月29日にオープンすると発表した。乗船場だけでなく、市の観光発信拠点としての機能を加え、世界遺産の島・宮島の玄関口として大きく生まれ変わらせる。
ターミナルは鉄骨2階建て延べ約2200平方メートル。一部がガラス張りの大屋根が覆う開放的なデザインだ。これまでフェリー事業者2社で別々だった乗船場を1カ所に集約。改札近くや建物の壁にはベンチを配し、施設内でゆっくりフェリーを待てるようになる。
市の観光発信拠点としての機能も備える。市は、カキやけん玉などの特産品を扱う物販コーナーや、デジタル映像を用いて宮島の魅力を紹介するスペースを設け、佐伯、吉和地域などの観光情報も伝える。はつかいち観光協会(同市本町)を施設内に移し、市全体の観光振興の拠点とする。
オープン当日は午前9時半から開所式を開いた後、ターミナル正面の桟橋からフェリーを発着させる。隣接する商業施設「宮島口もみじ本陣」は4月上旬に移転オープンする。施設内の物販コーナーなどは内装工事などがあるためゴールデンウイーク前後に開く。
(上記HPより一部使用)
【宮島口新旅客ターミナル】
構 造:鉄骨2階建て
延床面積:約2,200平方メートル
・フェリー事業者2社(JRフェリー、松大汽船)で別々だった乗船場を1箇所に集約
・観光発信拠点として、牡蠣やけん玉などの特産品を扱うコーナーやデジタル映像を用いた宮島の魅力発信スペースを新設
・隣接する商業施設「宮島口もみじ本陣」は内装工事などが残り、4月上旬にオープン。施設内の物販コーナーなどはGW前後に開く。
失礼ながら、”派手な看板の割に中身がない”従来のターミナルとは全く別物になりそうです。
それは実際の建物を見てもはっきりと分かるほど、かなり仕上がってきていました。
先週末現地に行ってきたのでご紹介していきます。
まずはJR宮島口駅正面から。
現在のJRフェリーの建物の背後に、ガラス張りの大きな屋根が見えています。
ロータリーまで移動しました。先日行われました、1月恒例の「広島男子駅伝」で、このロータリーが折り返し地点になるのはおなじみです。
みやげ物などを扱う「もみじ本陣」(広電系の株式会社広電宮島ガーデンが営業)は、
新ターミナルへの移転に向けて、2019年12月10日に営業を終了しました。
早くも仮囲いがなされ、解体に向けた準備が行われているようです。
これを解体した敷地に、広電宮島口駅を移設します。後ほど詳しくご紹介します。
変わってこちらはロータリー正面のJRフェリーターミナル。
背後に新しいターミナルが見えています!この時点で気分が高まります。
以前はそこまで海だったので、この小さな既存のターミナルを抜けて桟橋へ、という経路でした。
大きく西側へ周ります。
おおおお凄い!!
2棟に分かれた建物を大きなガラスの上屋が繋いでいます。現在のターミナルがものすごく小さく感じますね。
新ターミナルは2階建てではありますが、上屋まで入れると高さはそれなりにあり、結婚式場のような堂々とした佇まいです。
上屋の裏側には木材が使われている上、縁に向かってアールになっており、柔らかい温かみのあるデザインです。
背後の宮島・弥山との相性も良いです。
壁面の一部にも木材が用いられています。
作業員の方と比べた窓ガラスのハイトの高さ!ダイナミックさがお分かりいただけますでしょうか。
内部も大部分が見えるようになっています。
2階は当然、海と宮島が見えるようになっているでしょうから、風が通り抜ける半屋外の開放的な空間ですね。
オープンモールのアウトレットのようにも感じます。
2階のデッキ・イベントスペースなど。
100%和風建築ではなく、このように絶妙なカーブを描いているのがとても美しいです。
ターミナルビルから東側広場まで含めたデザインは、特産品である「しゃもじ」をモチーフにしています。
【architecturephoto.net】:乾久美子が、広島の「厳島港宮島口地区旅客ターミナル」設計プロポで、設計候補者に選定
設計プロポで国内外からデザインを募っただけありますね。
フェリー乗船までの動線など
先程までの西側(現JRフェリーのりば側)から、東側(現松大汽船のりば側)へ移動しました。
ターミナル東側は、このようなせり出したみやげ物売り場のようになっており、テラスも完備されているのが確認できます。
JR宮島口駅方面からの県道のちょうど正面、フェリー乗船客のメイン動線となる場所はこのように2階まで吹き抜けの広い空間になっています。
現在は従来のターミナルが覆い隠すように建っていますが、
最終的には解体されて駅前広場も再整備される計画となっています。
そうなれば、”駅”ではありませんが、近年のJR駅と比べてもかなり立派な「駅前広場」となる気配に満ちており、メチャクチャ楽しみです。
ターミナルを抜け、桟橋へ。
新しい統合大桟橋も、以前は骨組みだけでしたが形が見えてきました。
広島湾内では、広島港に次ぐ大きさです。
東側の松大汽船のりば付近から、ターミナルを見てみました。
こちらがわは分離していない1棟の建物となっています。かなり広そうですよね。
2階にはこちらの宮島口側のテラスも充実しています。新たな地域のシンボルにしようという意気込みが伺えます。
宮島口のこれから
新ターミナル前から振り返ったところ。閉店した「もみじ本陣」の状況です。
現在は仮設トイレがあるだけの状態で、内部がすでにスカスカなので内装の撤去が急ピッチで進められているようです。
仮囲いで全周覆われているので、解体も遠くなさそうですね。
この「もみじ本陣」を解体した跡には、広電宮島口駅が移設される計画になっています。
(平成31年1月更新 パンフレット(厳島港港湾整備事業 宮島口地区) (PDFファイル)(29.05MB))
現状は広電の軌道よりも海側に駐車場があるため、駐車場利用者や送迎で宮島口を訪れる車は踏切を通過しなければなりませんが、
「もみじ本陣」跡地に駅を移設することで踏切を解消し、自動車による混雑の緩和を図ります。
広電利用者にとっても横断歩道を渡らず、直接ターミナルに行くことができるようになるため、安全面や快適性においてもメリットがありますね。
さらに、付近では駐車場不足とそれによる渋滞解消のため、立体駐車場の建設も予定されています。
【西広島タイムス】:廿日市市宮島口地区 市営駐車場立体化へ 平成32年完成目指す
【中国新聞】:広電駅移設、乗船スムーズ 立体駐車場も
私はこれまで立体駐車場1棟を建設するのだと思っていたのですが、
どうやら、廿日市市市営駐車場と、広電が建設する駐車場で、2棟の立体駐車場が設置されるようですね。
- 廿日市市
- 普通車200台、観光バス40台を収容する立体駐車場を、平成31年度=2019年度(今年度)着工。
- 2020年春の完成を目指す? (2018年6月の記事のため遅れの可能性)
- 立体駐車場には展望スペースを設けるほか、敷地内に地元コミュニティ施設も整備。
- 建設から運営まで民間に委託し貸付借地料を徴収。候補には広島電鉄が挙がる
- 広島電鉄
- もみじ本陣の駐車場として300台を収容する立体駐車場を建設。
- 広電の立体駐車場と宮島口駅移設は東京五輪後(2020年夏以降)から始め、2026年までの完成を目指す。
このようになっています。立体駐車場はどちらも広電が管理・運営を行うことになりそうですね。
東京五輪後から宮島口駅の移設と立体駐車場の建設に着手するとのことなので、それまでにもみじ本陣は解体されることになります。
国内外からの観光客が増加の一途をたどるなか、
その玄関口にふさわしい変革が始まります。第一歩目の変化として、オープンする新ターミナルビル。
2020年2月29日に供用開始、みやげ物店は4月上旬にオープンする予定です。
動画も制作しました。