Jリーグサンフレッチェ広島の新たな本拠地となるスタジアムが、2022年2月に広島市中区中央公園で着工しました。
広島市が主体となり整備するこのスタジアムは3万人収容で、マツダスタジアムのように多種多様なバラエティシート、VIPルーム等が設けられます。
広場および西側の河川敷エリアと、スタジアム内それぞれの回遊性を高める2層のコンコースも特徴の一つです。
広場と一体となり、旧広島市民球場跡地エリア、広島城エリアともデッキで接続し、
「まちなか」に開かれた新たなシンボルとなります。
2023年末に竣工し、2024年のJリーグ開幕から使用される予定です。
前回の状況です。
事業概要
【広島市公式ホームページ】:サッカースタジアム等整備事業の基本設計
- サッカースタジアム等整備事業の基本設計の概要 [PDFファイル/7MB]
- (参考)用語の解説 [PDFファイル/296KB]
- サッカースタジアム等整備事業 基本設計説明書【概要版】 [PDFファイル/29.23MB]
【大成建設】:広島市サッカースタジアム等整備事業
(上記HPより)
【サンフレッチェ広島】:HIROSHIMAスタジアムパークPROJECT
G7広島サミット開催!クレーンは景観に配慮し上部ジブ畳む
2023年5月19日から23日までの4日間の日程で、「G7広島サミット」が開催されました。
主要7カ国の他、多くの招待国の首脳が広島を訪れました。
驚かせたのはウクライナのゼレンスキー大統領の来日と平和記念公園への訪問。
ロシアから核の脅しを受ける当事国の首脳が広島を訪れ、
G7を始めとする多くの国が一帯となって自由を守る決意を世界に発信できたのは、この上なく意義深いものになったと思います。歴史的な光景を目にすることができた気がしました。
目を覆いたくなるウクライナの現在の惨状は、戦後の日本、広島と重なるものがあります。
大統領の言葉にもあったように、将来のウクライナが現在の広島のように美しく復興することを願ってやみません。
さて、私は日程的な都合もあり、サミットが開かれている20日・21日に広島取材を行ってきました。
サミット期間中、平和公園から見て原爆ドームの背後に位置する広島サッカースタジアムについて、景観上の観点からクレーンを畳むことが検討されてきました。
(2023年4月撮影)
(2023年4月撮影)
結果的に、完全には降ろさず、上部のジブを畳んでできるだけ高さを抑える措置が取られていました。
ご覧のとおりです。
正月等の大型連休で稀に見られる状態ですね。大変ご苦労さまでした。
この措置、私は行って良かったと思っています。
「原爆から力強く立ち上がり成長を続けている証なのだから畳む必要はない」というご意見もたくさんあろうかと思いますし、私も否定するつもりはありません。
ただ、広島サミットの重要度や全世界からの注目があまりに大きく、
それを前にするとクレーンが乱立している光景は”ノイズ”になりかねず、今回ばかりは「景観に配慮」することも致し方ないかなと。
ゼレンスキー大統領の来日はもちろん、G7首脳が揃って平和資料館の訪問と献花が実現しただけでも歴史的ですからね。
巨大屋根を支える張弦梁構造
サミットによる警備が非常に激しい城南通りを東側から近づきます。
サミットの国際メディアセンターが県立体育館(グリーンアリーナ)に開かれていました。
スタジアムはその目の前なので、少なくとも海外の記者達にはこのフットボールスタジアムの姿が目に止まったかと思います。
スタジアムの南東角に接続するペデストリアンデッキ。
ファミリープール側に、デッキの橋脚が姿を現していました!
将来、この光景を目指してデッキを渡ることになります。
華奢にすら見える柱が大きな鉄骨の屋根を支えます。
ここで、大成建設が公開しているプロジェクトニュースのご紹介。
【大成建設】:広島市サッカースタジアム等整備事業
2023年5月で工事の進捗率は49%!
これは東側の広場も含む進捗率なので、スタジアム単体の進捗はすでに折返しを過ぎています。
4月と5月で、大屋根を支える張弦梁構造のワイヤー緊張作業が行われたとのことです。
このワイヤーが屋根の荷重を支えることで、スタンド上には柱の無い広大な屋根を実現することができるようになっています。
実物が確認できました!
北側に円弧状に伸びるワイヤーに、3本の鉛直方向の柱を介して上部のトラスが繋がっています。
すでに荷重を支えている状態にあるかもしれません。
(広島市ホームページ『サッカースタジアム等整備事業 基本設計説明書【概要版】 [PDFファイル/29.23MB]』より)
南西側から。
サンフレッチェサポーター側となる南サイドスタンド。
高さのあるワンスロープ型スタンドで一体感を演出します。
構築が進んでいるようで、高さが増しました。
西側メインスタンドと北サイドスタンドの状況
基町環境護岸から。
こちらがわに傾斜した構造物は、スタジアムのスタンドであることがはっきりと分かる状態二までなってきました。
見上げると、スタンド最上部にフェンスが取り付けられています。
スタジアムの感覚が生まれてきましたね。
護岸から。
ここから眺めるスタジアムが好きです。
クレーンは上部のジブが畳まれてお辞儀をした状態となっています。
北西側から。
階段なども確認できます。
北側です。
驚いたことに、早くも外壁が広範囲であらわになっていました!
外観は「希望の翼」と称されるように白い大きな屋根が象徴的でしたが、こうして下部の外壁が見えるのも新鮮ですね。
階段状にコンクリートの梁が飛び出ていますが、これは外部に設けられるスロープのためのものと思われます。
(広島市ホームページ『サッカースタジアム等整備事業 基本設計説明書【概要版】 [PDFファイル/29.23MB]』より)
ちなみに色彩計画についてもこちらの資料でも記載されています。
北東側から。
東側バックスタンド裏の複雑な構造がわかるようになってきましたね。
まちなかに溶け込むスタジアム
最後に、横川エリアから中心部を背景にしたスタジアムの様子を。
撮影前日に日米首脳会談が行われていたリーガロイヤルホテル広島と。
三篠橋近くから望むスタジアムは、「希望の翼」の意味がよくわかりますね。
クレーンが全て折りたたまれている光景も貴重です。
広島市サッカースタジアムは2023年12月末の完成予定で、2024年シーズンから使用を開始します。
東側の広場エリアも並行して整備を進め、2024年8月の全面開業を見込みます。