広島市は検討していたアストラムラインの延伸先3駅(西広島駅・新井口駅・五日市駅)のうち、
将来黒字化できるのは西広島駅のみとし事業費を500億円~570億円と見込んでいることが分かりました。
今年度中にも事業化の可否が判断されます。
【若林新三WEBサイト】:アストラム西風新都線、500億~570億円を見込む
【広島ホームテレビ】:アストラムライン延伸「西広島駅ルート」黒字化の可能性
【RCC】:アストラム延伸 黒字は「西広島ルート」のみ
(数日間動画が見られます)
これらのサイトをご覧のとおり、
広域公園前から、広電が主体となって造成中で地区最大のイオンモールも建設される石内東団地を通り、
勾配8%の単線で西広島へ向かうルートで、設備更新費の2/3(およそ2億5000万円)を広島市が補助することによって黒字化が可能であるとの試算です。
事業費は車両や設備の急勾配対策なども含み最大で570億円になるということで、
確かに当初計画案の700億円から事業費は圧縮されました。
しかしながら広島市の”無理くり感”がどうしても否めない内容です。
アストラムラインは平成6年に総事業費約1744億円をかけて本通り~広域公園前間が開業しました。
開業以来初めて単年度の営業収支が黒字化したのは6年目の平成12年度で翌13年度も黒字を計上しました。
(平成14年度以降は高速4号線の開通により再び赤字。ここ3年間は黒字です)
当初計画で終点は広域公園前ではなく長楽寺と計画していましたが、
後に決まったアジア大会の開催によりさらに先の広域公園前までとなったことも想定を下回る要因となりました。
このように長楽寺~広域公園前区間という”想定外”がありながら、現在開業している区間では6年後に黒字化しています。
試算される西風新都線は広島市が30年間の設備更新費2億5000万円を毎年支払い続けないと黒字化できないことを示しています。
黒字化が30年後ということではないにしろ、あまりに長期的で見込みの甘い試算に思えます。
以前も書いた通り、西風新都線が仮に開業したところで沿線団地から駅までは距離があるため思うような利用者数は見込めないはずです。
現状でも広電バスが団地と横川駅・中心部を結んでいますし、最寄りの西風新都線の駅にバスで行って乗り換えをするくらいなら、そのままJR駅や中心部まで行ったほうが楽ですし料金も時間もかからないでしょうから。
石内東団地の中央をブチ抜いて利用客増を見込むのなら、かつてのダイアモンドシティソレイユ(現イオンモール広島府中)と天神川駅の関係のように、
利益を得る事業者=広電やイオンが建設費の一部を負担させるべきです。
そうでないなら建設するべきでないのではないでしょうか。
それか同じ額を使うなら本通以南の延伸に資金を使うべきです。
西風新都線に比べ公道の地下を通るので用地買収は最小限で済みますし、
トンネル掘削に関してもシールド工法の成熟によるコスト削減、新技術による軟弱地盤対策も期待できます。
高く見積もってキロ当たり200~300億円だとしても、
予算500億円なら駅施設も含めて本通から国道2号線付近(広大跡地周辺)までの約1.5kmの延伸が可能です。
採算面でも市有数のベッドタウンから中心部のビジネス街への需要、それから白島新駅開業によるJR線との相乗効果も期待できます。
正しく言えば延伸が可能”かもしれない”です。
素人のどんぶり勘定なので断言できるはずはありません。
問題なのは西風新都線のみ議題にあげられ勾配などどんな困難があろうとも建設の可否を検討する広島市の方針です。
石内東団地を経由する時点で当初の延伸計画(西風新都線→東西線で環状化→南北線で広島駅)はあってないようなもの。
ちなみに私が提唱する本通~広大跡地付近の延伸案は、広島市が言う東西線でも南北線でもありません。
建設費と照らしあわせ、どうすれば利用者が見込め採算を確保、さらには広島市の飛躍に繋げられるかを
様々な側面から検討するのが本来の委員会の姿ではないでしょうか。
西風新都線でなくても広島市の交通に関する課題はまだまだ多いです。
路面電車だけを見れば広島駅と中心部の所要時間短縮や、本線の西観音町~土橋の間のクランク解消など。
想定事業費を500億円まで削減させましたが、それでも現在の財政状況を鑑みると実現は難しいと思います。
それならば建設は一度凍結し、JR西広島駅の単独改良と都市計画道路「己斐中央線」の単独整備と、クランク解消(平和大通り線西側)を行い、整える方が高い効果を得ることができるのではないかと思います。
○参考
【広島高速交通株式会社】:経営状況
【都市と民鉄】:広島高速交通