広島の空の玄関口である広島空港で、開業以来初めてとなるターミナルビルの大規模な改修工事が始まりました。
地震等の自然災害に備え、軽量な天井に取り替えるのが主な内容で、
旅客ターミナル内の天井も膜素材を用いたものに順次改修される予定です。
広島空港は国土交通省の認可を経て民営化されており、2021年7月1日から地元企業らが出資する「広島国際空港株式会社」により 空港運営事業が行われています。
同社はターミナルビルの改修を皮切りに、
旅客・商業エリアの刷新、利便性の高い駐車場の整備やLCC・国際線の受入環境整備を行い、
今後30年で旅客数を2倍近くとなる約580万人まで増やすビジョンを描きます。
ターミナル天井の改修工事概要
【広島空港】:旅客、および貨物ターミナルビル天井等 リニューアル工事の実施について
全体工期
2021年9月13日~2023年3月31日(予定)旅客ターミナルビル2階出発ロビー天井 東工区工期
2021年9月13日~2022年5月31日(予定)旅客ターミナルビル 2 階出発ロビー天井 西工区工期
2022年4月1日~2023年3月31日(予定)
本リニューアルのポイント
① 特定天井を軽量かつ丈夫な膜天井に改修することにより、自然災害への耐性を強化
② 旅客ターミナルビル 2 階出発ロビー中央部分は「折り鶴」をモチーフに、「平和への願い」を表現
③ 膜天井部分に間接照明を使用し、折り天井を立体的に表現
旅客ターミナルイメージ(上記HPより)
【中国新聞】:広島空港ビルの天井改修着手 23年春完成予定、地震対策で軽量化
国内線側の東工区、国際線側の西工区の2期に分けて行われます。
現在は2022年5月の完了を目指し、東工区の施工が進んでいます。
天井は現在よりおよそ9割の軽量化が可能となる膜素材のものが用いられます。
「平和への願い」を「折り鶴」の形で表現した形状となることが計画されています。
ターミナルのリニューアルに本格着手!カウンター覆う足場
改修前の状況はこちらの記事を御覧ください。
12月中旬に現地の状況を見てまいりました。
ちょうどイメージパースと同じ構図です。
国内線側の頭上に足場が取り付けられ、改修が始まっていました。
まだ既存の天井が見えていますが、これはこれでシンブルで広さを演出していましたが、イメージ図を見ると、雰囲気はかなり変わりそうですね。
検査場付近。
東端の日本航空カウンター付近。
こうして広範囲に足場が設けられると、開港およそ30年で初めてとなるリニューアルの実感が伴ってきます。
関西空港などでも天井材に膜素材が採用されていますね。
国内線側を覆う東工区の天井リニューアルは、2022年5月の完了予定です。
一方こちらは国際線側の西工区。
一部足場が組まれていますが、本格的に着手するのは2022年4月の予定です。
新型コロナウイルスの影響により、広島空港の国際線は昨年の感染拡大以降ほぼ全て欠航。
国際線利用者数はゼロとなっており、チェックインカウンターも閑散としており痛々しい光景が広がっています。
2050年度までに567億円 民営化後の設備投資
7月から運営事業者となった広島国際空港株式会社は、この他にも利用者目線でのリニューアルを進め、旅客数の拡大を目指します。
【中国新聞】:広島空港設備に567億円、50年度までに ターミナルビル増改築
1日に民営化した広島空港(三原市)を運営する広島国際空港(同)は、2050年度までに567億円を設備投資に充てる。旅客ビル施設に294億円、駐機スポットの増設など空港運営事業に226億円を投じる。3割強の195億円を最初の5年間に投じ、拠点性や利便性の向上を急ぐ。
▽地震に備え、つり天井撤去へ
旅客ビル施設関連は、ターミナルビルを増改築する。出発ロビーに2カ所ある商業エリアを集約し、保安検査場、免税店を拡張。乗客の動線の改善につなげ、利便性を高める。空港運営事業では滑走路や誘導路の維持管理に加え、駐機スポットを9から13へ増やす。駐車場の整備などに23億円、空港に隣接する広島エアポートホテルの客室改装などにも15億円を使う。
(上記中国新聞HPより)
【国土交通省】:広島空港特定運営事業等の優先交渉権者選定に係る客観的評価結果等の公表について
- 資料2 提案概要(MTHSコンソーシアム)(PDF形式)
(上記資料より)
改修により、現在は吹き抜けになっているターミナルビル中央の吹き抜けが廃止され、増築されます。
増築された部分は国内線の保安検査場になるようです。
合わせて、制限エリア内外の商業スペースの拡大と充実が図られます。
1階では、搭乗機からの到着エリアの国内・国際一体化、1階バス待合スペースの屋内化を実施。
立体駐車場建設によるターミナルビル直近の駐車場容量拡大およびレンタカーの利便性向上
あとがき
30年後の旅客数をほぼ倍増させるというかなり強気な姿勢で挑む空港運営。
新型コロナという最悪の状態での船出となりましたが、ある意味今が底の状況なので
関係者の方もこれからの立て直しに燃えているのではないでしょうか。
国際線の再開に向け、到着ロビーの検疫施設の整備も進めていると報道されていました。
資料では国際線において主に東南アジア便を拡充することが書かれています。
広島は欧米系外国人が非常に多い特徴がありますが、
満足せず成長著しい東南アジアにも県として積極的にセールスしていくことが合わせて求められますね。
旅客数の倍増という大きな目標に対し様々な声もあると思いますが、
それに向けた設備投資はこれから確実に実施されていく見込みです。
銀行も一定の確信があるから融資をしているはずですので、我々は乗って応援するしかないですね。
そのためには、交通アクセスも空港を利用する上での大きな大きなカギになります。
2022年度の東広島・安芸バイパスの開通により山陽自動車道の代替路が確保され、事故等の通行止めによりリムジンバスの運休するリスクは低減します。
アクセス鉄道はもはや非現実的でも、新幹線東広島駅へのバス路線新設も計画しているようで、
こうした地道なサービス向上を積み重ねていくしかありません。
これは余談です。
天井のリニューアルにより、広島空港でも「折り鶴」の意匠が採用されます。
これはちょっと複雑だな…。考えるのをやめていませんか?
広島駅の自由通路や柱を始めとした各所で用いられ、同駅のアイデンティティ的なモチーフとなりました。
個人的にも純白に照らされる三角錐を折り鶴と捉えたこのモチーフは、「広島らしく」素晴らしいと思っています。
(広島駅自由通路)
その後は各界の関係者に評価されたのか、テレビ新広島の新本社ビルでも同様のコンセプトとモチーフが用いられました。
そして、今回広島空港でも採用されることに。
都市として統一したアイコンをもって来訪者を迎え入れるという言い方もできるでしょうが、
個人的には安易な流用に見えてしまいます。
折り鶴をモチーフにした造形に「広島らしさ」、「平和への思い」を込めるという評価すべきストーリーが、薄くなってしまうというか。
かと言って、奇をてらったものを採用して”なんじゃこれ…”となる事例も往々にしてあるので、難しいところではあると思いますけどね。
以上です。