広島駅北口の二葉の里では、まもなく完成を迎える大和ハウス工業のホテル・オフィスの複合ビル「GRANODE広島(グラノード広島)」や広島テレビの新本社ビルの開業など、
今後の賑わい創出やビジネスの拠点としての期待・機運が高まっています。
そんな中、皆様から
「この地区は建物の高さ制限があるから高層建築物は期待できない」というものや「高さ制限撤廃してほしい」といったコメントを多くいただいています。
これについては、かねてから「少し誤解を持たれているのでは?」という違和感を感じておりました。
対象地となる二葉の里地区「5街区」のJR西日本広島支社は、これから再開発に向けて移転先となる新たな社屋の建設に着手しました。
この機会なので、少し整理してみたいと思います。
JR西日本広島支社跡地に高層ビルは建てられないのか
結論から述べさせていただくと、全くそのようなことはないし、行政も高度・高密度な利用を推奨している
このような認識です。
「二葉の里5街区には景観・高さ条例がある」といった誤解が生まれたのは、
広島市が定めた「二葉の里地区まちづくり基本計画」や「二葉の里地区まちづくりガイドライン」で示されている、景観軸のことが元になっているかと思います。
【広島市】:二葉の里地区まちづくり基本計画
【UR都市機構】:二葉の里地区まちづくりガイドライン [PDF, 5462KB]
景観を形成する軸として、広島駅北口のペデストリアンデッキ中央付近から、二葉山にむけて「二葉山軸」というものが設定されています。
〔基本方針〕
1 二葉山軸は、JR広島駅新幹線口から広島デルタの青垣山である二葉山へとつながる景観形成軸である。
2 二葉山軸を通して緑豊かな二葉山が視認されることは、当地区の空間形成上極めて重要であるため、JR広島駅から二葉山への眺望と山麓への歩行者空間を確保
する。
そしてこの景観軸に沿っては、通りに面した部分を低層として、
開放感を確保しなければならないと定めています。
これが独り歩きして、二葉山軸上にある”JR西日本広島支社跡地には高層ビルが建てられない”という認識になっているのかなと思います。
しかしながら、ガイドライン他をよく読んでみると、そうではないことが分かります。
あくまでガイドラインなので、1、2街区ではそのとおりになっていない部分もありますが、
基本的な考え方としては、
広島駅に近接した地区ほど建築物の高さを高く、高密度・高空地率の市街地として賑わいを創る
というものです。
実際のところ、JR西日本広島支社の敷地は幅も奥行きもかなり広大なもので、
広島駅から完全に二葉山を隠すような巨大な建物を造る方がむしろ難しいです。建ぺい率の問題もあるでしょう。
二葉山軸をかわすことを考慮しても、
敷地の東側(東横イン側)であれば十分高層ビルは建てられます。
実際の建物について、広島市は区画整理完了後、容積率の見直しを含む都市計画の運用方針を定めました。
【広島市】:広島駅新幹線口周辺地区における用途地域及び容積率の見直し等の都市計画に関する運用方針
2.建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限
ア 各部分の高さ
建築物の各部分の高さは、当該部分から、道路等の中心線までの水平距離の5倍を超えないこと。
イ 壁面の位置の制限
建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から道路境界線までの距離は、次に掲げる数値以上としなければならない。ただし、次のものについては、この限りでない。
(ア) 「二葉の里土地区画整理事業」の区域内の小規模な宅地
(イ) 公益的施設(ペデストリアンデッキ、公衆便所、巡査派出所など)
建築物の高さについては上に示すとおり、”道路等の中心線までの水平距離の5倍を超えないこと”とあります。
ざっくりした例を示すと、「100mの建物を建てる場合は、道路中心から20m(20m×5=100m)以上は離してくださいね」ということになります。
敷地を所有するのはJR1社単独で、十分な広さを持っていることを考えると、
100m以上の超高層ビルを建てることは制度面では難しいことではないかと思います。
もちろん需要と供給の問題もありますが、
JRとしてもこれほどの一等地ですから、中途半端なものではなくしっかりとお金を稼げる開発は考えているはずです。
支社ビル跡地の開発は、まだ移転先のビル建設に着手したばかりです。
悲観しすぎることなく、じっくり待ちましょう。